晴れときどき・・・

旧街道あるき、古戦場巡り、城攻め、図書館通いの4本立ての日々を綴ります。。

今年の66冊目「 王になろうとした男」

2013-09-03 19:43:47 | 読書日記
伊東潤の「王になろうとした男」を読みました。299ページ。

 伊東潤さんの「戦国オトコシリーズ」の第三弾です。
前作同様、戦国時代の脇役達の生き様が活き活きと描かれていて
とても面白い作品だと思いました。

 毛利新助、塙直政、荒木村重、津田信澄、そして弥助・・。
今回は織田信長の家臣に焦点が当てられています。
といってもこの通り有名な豊臣秀吉や前田利家ではなくて、
大河ドラマなどでは殆ど登場することもない人々です。

 けれども当然のことながら彼らには彼らなりの夢があり、
理想がありました。
しかし織田信長という稀代の天才の存在によって翻弄され、
激しい時代の波に呑まれて消えてゆきます。
299ページの全編にわたって読者も
逃れようの無いカリスマ信長の気配を感じ続けます。

 一人の武辺者として一途に仕える毛利新助の心のうちを理解する信長
出世の為に無理を重ね続けて自滅する塙直政を見透かしたかのような信長
自己の出自と才覚に溺れる甥を「小才子」と断ずる信長
肌の色も言葉の壁さえも自分の直感で乗り越える信長
その信長の威圧に脅え見失った自分を取り戻す為に武士を捨てる村重・・・

 失敗即破滅を意味する厳しい織田家中の出世競争の中で右往左往する
人々の姿に同情とやりきれなさを感じる反面、
それらを超越した存在である織田信長というオトコの魅力が
作品中に溢れていると思います。

 残酷で、冷たくて、気まぐれで、無口で、
こんな人が上司だったら絶対大変なことは解かっているのですが、
どうしても惹きつけられる、小気味よさと爽快感を
織田信長は持っていると思います。
そのあたりが日本人が好きな歴史上の人物で必ず上位に来る
一因ではないでしょうか・・・。

 個人的には「桶狭間の合戦」に関する描写は私も実際に東海道を歩いたり、
周辺の砦を歩いたりした経験があるので、その距離感や地形が思い出され、
大変楽しく読めました。