Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

最後まで語らせてほしかった

2018-06-25 15:03:52 | つぶやき

 オスカルが父から成敗を受けようとするちょうどその時、自らの命を差し出して助命を嘆願したアンドレ。

 

 ジャルジェ将軍が「おまえが 貴族でさえあったら…」と呟いた後、「旦那さま わたくしは…」と返答するアンドレ。多くの読者はおそらくこのあと彼が、何を語りたかったのか予想がつくはず。でも敢えてここでアンドレに最後まで語らせてあげたかった。幼くして両親を亡くしたアンドレを屋敷に引き取り、オスカルの従卒として独り立ちするまで面倒を見てくれた将軍に、彼は恩を忘れていない。しかしたとえ相手が貴族であっても、自分の信念を曲げない点ではアンドレもオスカルと同一歩調を取っている。高校時代、恩師が吉野弘さんの「祝婚歌」の一節を紹介してくれた。ご存知の方もいらっしゃると思うが、以下抜粋を紹介。

正しいことを言うときは
少し控えめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい

 賢いアンドレのこと、きっと将軍に控えめに、しかし真実を突いた自らの熱い想いを語ったのではないだろうか?「言ってみても始まらん。」などと言わず、最後まで聞きたかったなあ。オスカルとアンドレが結婚したら、この「祝婚歌」のような夫婦になっていたかもしれない。披露宴などで聞いたことがある方もいるでしょう。「祝婚歌」とはこのような詩です。

 二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい

長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい

正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい

健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そしてなぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい

 読んでくださり、本当にありがとうございます。



4 コメント

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6月も終わり近く… (おれんぢぺこ)
2018-06-26 01:32:26
りら様、こんばんは。お元気でいらっしゃいますか?

このシーン、1789年の6月23日以降のいずれかの日なのでしょうが、印象深い場面ですよね。
原作者様は、この当時まだ20歳代。どのような感性があれば“親の気持ち”(しかも、父親)がお分かりだったのだろう、と感動を覚えるシーンのひとつです。

確かにA君に最後まで語ってもらいたかった感は否めませんが、実は私はジャルパパの「おまえが貴族でさえあったら…」の続きも語ってもらいたかった、と思っています。
アニメでは、A君がO様の愛を勝ち得ていないにもかかわらずジャルパパから「おまえが貴族だったら、二人の結婚を間違いなく祝福していた」と言われ、頭の中≪???≫でしたが( ̄▽ ̄;)

原作のこの頃は、ついついOAのやっと実った恋に目を奪われがちですよね。でも、この場面。道を空ける“使用人”に知らんぶりで通り過ぎる事できたはずなのに、あえて声かけるジャルパパの存在の大きさを認識させられたひとつでした。

あ~~。それにしてもA君、持ってた荷物、ドコニ ヤッタ(゜Д゜≡゜Д゜)?

あれ?
りら様の記事内容から外れたコメントになってしまいました、すみませんΣ(ノд<)

夏バテとかしませんよう、十分ご自愛下さいませ❤
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Unknown (オスカー)
2018-06-27 17:07:22
吉野弘さんの詩は好きです。『祝婚歌』の最後がまたいいですよね。
『ベルばら』は結構この後どうなった?と気になるところが多いので、皆さまの二次創作を読んでは「ああ、そうだったのかもしれない」といろいろ考えるのが楽しいです。
毎日暑いですね。ご自愛下さいませ。
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おれんぢぺこさま (りら)
2018-06-27 20:12:23
 コメントをありがとうございます。
 
 暑くなってまいりましたが、おれんぢぺこさま、お変わりはありませんか?今日は6月27日。1789年だったら、もうオスカルとアンドレは互いに想いが通じ合っていた時期です。

>原作者様は、この当時まだ20歳代。どのような感性があれば“親の気持ち”(しかも、父親)がお分かりだったのだろう、と感動を覚えるシーンのひとつです

 以下少々意地の悪い捉え方になりますが、「ベルばら」は100%原作者単独によるオリジナル作品というより、担当編集者と打ち合わせするなかでアイディアが浮かんだり、助言を得たりして、二人三脚あるいはそれ以上の人の力を借りながら完成したと言えるようにも思えます。もちろん幹となる部分は理代子先生によるものですが。

>実は私はジャルパパの「おまえが貴族でさえあったら…」の続きも語ってもらいたかった、と思っています。

 そうですね。両者に最後まで語らせたいですね。

 草むしりしながら「どんなに低くてもいい。貴族の身分さえあれば…」と嘆いていた頃のアンドレと、オスカルと想いが通じてからのアンドレは違いますね。後者は何かこう、悟りを開いた感を覚えます。彼にとってもはや身分の違いなんてどうでもいいこと。結婚という形式も大事ではない。オスカルと気持ちが通じ合ったことこそすべて。

>でも、この場面。道を空ける“使用人”に知らんぶりで通り過ぎる事できたはずなのに、あえて声かけるジャルパパの存在の大きさを認識させられたひとつでした

 あぁ、それには気づきませんでした。確かにそうですよね。「命の危険を回避するため、娘を安全な巣に逃がしたい。」という父の願いを、ものの見事に断ち切ってしまったのがアンドレでもあるわけで…。でも自らの命を差し出して、オスカルの命乞いをする姿に、将軍は絶対心打たれたはず。やはり将軍も、素晴らしい人です。

 おれんぢぺこさまも、お体を大切になさってくださいね。コメント、本当に嬉しかったです。
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オスカーさま (りら)
2018-06-27 20:15:57
 コメントをありがとうございます。

>『ベルばら』は結構この後どうなった?と気になるところが多いので

 まさにそのとおりです。それゆえ多くのファンは、あれこれ想像をふくらますのでしょう。特に今の時期は、二人の短い蜜月期。原作には描かれない、恋人同士の時間を想像するのは楽しいですね。

 そして…今年もまた3が日が近づいています。
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