Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

べルばら新作エピソード8 後編 (1)

2016-11-05 16:27:07 | つぶやき

 本日「ベルばら新作エピソード8 後編」が掲載されたマーガレットの発売日。いったいロザリーはどうやって高価なブレゲの時計を探したか?(以下ネタばれを含みますので、ご自身で読んで確かめたい方はこの先は読まないことをお勧めします。)

↓ 「(牢獄暮らしの)差し入れに何が欲しいか?」とアントワネットに尋ねたところ、ブレゲの時計を求められ驚くロザリー。刑の執行が近い死刑囚が、平民では簡単に入手する事が難しい時計を希望する。時計なら何でもよければ、ロザリーは迷わず自分のものを提供しただろう。しかしブレゲでなくてはいけない。誠実なロザリーのこと、アントワネットの願いを叶えようと最善を尽くす。

 前編を読んだ時、「ロザリーはおそらくこのあと、ジャルジェ将軍のもとに向かうのでは?」と予想した。ロザリーにとって一番信頼のおける貴族といえば、この時点ではジャルジェ将軍しかいないから。(後編ではジャルジェ将軍自らコンシェルジュリーに足を運んだ折、ロザリーが将軍に相談しブレゲの時計を入手する運びとなる。)

 コンシェルジュリーにアントワネットが収監されているころ、既にジャルジェ夫人はこの世の人ではなかった。将軍にしてみれば、結婚45周年のお祝いに妻に贈ったブレゲは、形見として一生大事に手元に置いておきたかったはず。しかし死を前にしてアントワネットがブレゲの時計を望んでいると聞けば、心を動かさずにはいられない。場合によってはもう自分の手元に戻ってこない可能性もある。しかし…アントワネットのためにブレゲを提供する。ロザリーから時計を受け取ったアントワネットは敢えて時計の持ち主を深く追究せず、ロザリーもまた将軍の名を明かさない。アントワネットはその日からずっと牢獄内で、肌身離さず握りしめ、時を刻む音に束の間心を落ち着かせる。

 ↓  アントワネットがブレゲの時計に寄せる想いが、数か所に描かれている。これを読んだ時、アントワネットの言葉を借りつつ、池田先生ご自身のお気持ちもシンクロさせているのでは?と感じた。(これは前回のエピソード7「オスカル編」を読んだ時も思った。)45年前の原作にはなかった「私の名は 歴史に残るのです!」という言葉が2回出てくる。

 一方原作ではギロチン台に首を入れる直前、フェルゼンへの想いを語っている。「さようならフェルゼン。いつまでも私を忘れないで。最後のこの瞬間まで、のめりこむように私はあなたを愛します。」と。しかし今回のエピソードでは前編にも後編にもフェルゼンはまったく登場しない。(前編の最初に、フェルゼン宛ての形見を納めた小箱が出てくるだけ)

 自分の名が後世に残ることを悟ったアントワネットは、私人として恋する気持ちよりも王妃として立派に死を迎えることを最優先する。今回池田先生は恋する女性としてのアントワネットよりも、王妃としての自覚に目覚めた人間アントワネットを描きたいと狙ったように思える。私はどちらもありだと思う。池田先生の最新刊「ベルサイユのばらで読み解くフランス革命」で先生は、「アントワネット最期の手紙は、フェルゼン宛てに書いたものと見ることもできなくはない。」と述べている。

 ここに書かれているアントワネットの想いには、池田先生の「どんな人間にも寿命があり、いずれ終わりを迎えるけれど、『ベルサイユのばら』は、永遠の時を刻み続ける。いつまでも読み継がれていってほしい。」との願いも被っていると解釈したら考え過ぎだろうか?

↓  最終ページに「ブレゲは1815年に、レジヨン・ドヌール勲章を受勲」したとある。

 レジヨン・ドヌール勲章…ナポレオンによって制定された栄典制度で、現在もフランスの最高勲章である。最近北野武監督が受賞したニュースを覚えている方も多いはず。そして池田先生ご自身も2009年に受勲されている。

↓  2009年、レジヨン・ドヌール勲章を受勲された先生。

 この賞を受けた日本人は他に野口英世、伊藤博文、小池百合子、黒澤明、滝川クリステル、向井千秋、森英恵、林真理子(敬称略)などがいる。(なぜか前東京都知事Mさんも受賞されていました。)

 読んでくださり、どうもありがとうございます。



6 コメント

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Unknown (アラレ)
2016-11-05 20:19:14
りら様こんばんは
後編私も仕事中に、いえ仕事で本屋も寄るんでその時に買いました
前編の終わり方からして、後編はオスカル出てこないと思ってましたが、その通りでした、
今回のブレゲの時計にアントワネットは、コンシェルジュリーに移ってからも、「私は今でも待っている」と、時計の完成を、ブレゲは成し遂げるはずと思いを寄せてますね、
周りの人がアントワネットから離れて行っても、ずっと信じていた、
そしてアントワネットの死後、ついに完成されて、アントワネットの望み通り、アントワネットの名前が付けられた

そのブレゲの時計、見てきました、ケースに入っているとはいえ、間近で見ることが出来ました、本当にケースの中の実物から20cmないくらいしか離れてない距離で見れました
細かいことはブログの方で徐々に書いてくので、また遊びに来て下さい
アントワネットが義妹に宛てた手紙も、フェルゼンに宛てた暗号いりの手紙もありました

もうね~兎に角眠くて、一気に書けないんで、ちょこちょこアップしていきます
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アラレさま (りら)
2016-11-05 21:43:06
 コメントをありがとうございます。

 先程ブログを読ませていただきました。ブレゲの時計を見た後、今回のエピソードを読むと、一層感慨深いのではないでしょうか?ブレゲの時計は、今も正確に時を刻んでいましたか?たった2日間しか展示されないのがとても残念です。

 アラレさま、お体を大切にしてくださいね。休めるときはしっかり休んでください。アラレさまの書き込みを読み、アントワネット展がますます楽しみになってきました。
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りら様 (marine)
2016-11-06 09:40:47
おはようございます。

今回結局マーガレットは買ってなくて…。
ふと、りら様のブログを読んでて思ったのですが、時計を差し入れたのはコンシェルジュリーに移ってからでしょうか。
本編で、ここに移る時、看守?のような人が所持品をチェックして、懐中時計を一個、と言ってて、もしかしてそれのこと?と最初思ったのですが…。
ロザリーが、ということは、それは、ブレゲのものではなかったのでしょうか。

話は変わって、私もアラレ様のブログ拝読しました。いつ行こうか、とても楽しみになりました。
アラレ様、かなりの睡眠不足とのことですが、お仕事の都合上難しいかもしれませんが、どうぞご自愛してください。

先月母が急に入院し、もう無事に元気に退院したのですが、この時期周りでも体調崩す人が多いです。

りら様もお体気をつけてくださいませ。
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marineさま (りら)
2016-11-06 15:12:14
 コメントをありがとうございます。

 marineさまの疑問、もっともです。さっそく記事に書かせていただきました。本編と新作エピソードは別物と捉えたほうがいいのかもしれません。(前回の「オスカル編」もそうですが)でも違いを発見するのもまた面白いです。

 「アントワネット展」、楽しみですね。この機会を逃すと、もう二度と見られない展示品もありそうです。

 marineさま、お母さまの看病、大変でしたね。自分の健康だけでなく、身内に具合の悪い人がいるとなんとなく落ち着きません。これから寒くなるにつれ、高齢者の健康は特に心配です。何をするにも、健康であればこそと思います。marineさまもお体を大切にしてくださいね。
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りら様 (marine)
2016-11-10 21:38:40
こんばんは。
先日のお返事から時間が経ってしまいましたが、こちらへの再びのコメント、失礼します。

私と、母への暖かいお言葉、ありがとうございます。いつも元気でスポーツクラブに毎日のように行ってたのですが、思いも寄らぬ病気で入院になるとは、やはり高齢者なんだなぁと思います。

それと、なんだか重箱の隅をつつくようなコトを言ってしまいすみません💦
やはりもう本編とは別物、なんですよね。
多分、その辺は周りの編集者の方達がきちんとお話してるでしょうし。ただ、マーガレット未購入なので、聞いてみたかっただけなのです。

それと、処刑に向かう時のドレスの色に、そういう意味があったとは知りませんでした。
なるほどと思います。

こちらも、一度池田先生の想いなど、聞いてみたいですね。
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marineさま (りら)
2016-11-11 00:33:58
 コメントをありがとうございます。

>思いも寄らぬ病気で入院になるとは、やはり高齢者なんだなぁと思います

 これからの時期、高齢者にとって風邪は肺炎などを併発し、命取りに繋がります。marineさまのお母さまが、何事もなく今年の冬を越せますように。

>やはりもう本編とは別物、なんですよね

 それでも今回のエピソードは比較的、本編から大きく外れることはなかったです。前編にはオスカルとアンドレが登場しますが、違和感なくブレゲに絡んでいます。連載開始から約45年の時を経て、池田先生の歴史の捉え方に、変わった部分と変わらぬ部分が生じているのでしょうか?今回のエピソードで、先生がなぜ喪服姿でアントワネットをギロチン台に向かわせたのか聞いてみたいです。
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