仕事の結び目

コンサルタント&ファシリテーターの朝尾直太が仕事に関係するテーマについて記すコラム。

参加者に深い理解をもたらす会話手法

2006年02月14日 | Weblog

ToP(R) というグループ・ファシリテーション手法の講座を受講しました。中でも特徴的なのは「焦点会話手法」。事実にもとづき、感情や経験を踏まえたうえで、分析的にトピックを捉え、結論へと導く、というような段階を経て会話を進めるというものです。こうすることで、すべての参加者の意見や感情を引き出して、グループに深い理解をもたらすことができます。
 

合意形成系のファシリテーションのスキルを磨くことは今年のテーマの1つなので、グループ・ファシリテーション手法の講座に参加してきました。ToP(R) という手法にもとづくものです。

ToP(R) は Technology of Participation (参加の技術)で、「焦点会話手法」「合意形成ワークショップ手法」「行動計画プロセス手法」の3つがあります。他の講座などの手法と比べて特徴的なのは「焦点会話手法」の部分です。これは、すべての参加者の意見や考え、感情などを引き出すために“ORID”と呼ぶ4つの段階を経て会話を進めるものです。

“ORID”は、客観的段階(O)、内省的段階(R)、解釈的段階(I)、決断的段階(D)を表します。具体的には、事実にもとづき、感情や経験を踏まえたうえで、分析的にトピックを捉え、結論へと導く、というような段階を経て会話を進めていきます。その際、ファシリテーターにはそれぞれの段階の会話を引き出すような質問をすることが求められます。

この手法の狙いは、いきなりトピックの分析や議論をするのでなく、まずトピックについての客観的な情報を共有し、個人の内面的なもの表に出すことで、参加者の衝突や混乱を避け、会話をするグループの理解を深めるところにあるようです。そもそも会話の目的として、「理論的目的」(通常の議論の目的)とともに「体験的目的」(内面的、経験的な側面)を設定するところも、こうした考え方を示していると言えます。

考えてみれば、議論がかみ合わない原因は、客観的な事実の認識が異なっていたり、個人的な経験や感情に左右されたりということが意外と多いのかもしれません。大げさな手法としてではなく、日常の会話の中にもぜひ取り入れたい手順です。

※ToP(R) は、ICA(The Institute of Cultural Affairs)の登録商標。
※本講座は、淑徳大学エクステンションセンターが主催し、NPO法人 ICA文化事業協会によって実施された。(2006年2月11, 12日の2日間)