それはいつもの朝のこと
駅に向かって、線路沿いの道を歩く
駅まであと数分
通い慣れたこの道
大体、この場所から何分で駅に着くかが分かるようになってきた。
駅のホームまでここからは、約5分
そういう時に、自分が乗りたい方向(上り・下り)の電車がやってきちゃうと。
とても
とても嬉しい気持ちになる。
なぜなら、駅で数分待てば電車がやってくるからだ。
その時によって違うけど
大体平均で10分に1本は電車が来るから
数分待つだけでOK♪
穏やかな気持ちでホームに迎える。
ダッシュすればギリギリ間に合うくらいのタイミングだと
たとえ間に合ったとしても
なんか朝から、体力と魂が削られた気持ちになるので
一日が残念なスタートのように感じてしまう。
都会のように3分に1本来ることもないし。
田舎のように1時間に1本ということもない。
これくらいの地方都市が程良くて住みやすい。
そんな世界で穏やかな朝の出発ができると、心地よい。
それはある日の昼のこと
遠路沿いから1本外側の道を歩く
今日は電車に乗らないので、後何分で電車が来るのか気にしないでいられる。
遠くから「●番線、ドアが閉まりま~す」と聞こえてくる。
いつもだったら、あれに乗れなくて落ち込むところだけど
今日は平気だ。
ふと線路の方を見ると
電車がゆっくりとしたスピードで走っているのが見えた。
その直後、ありえないことが起こった。
『ぷっぷー!!』
警笛だ。
踏切が近くにある訳でもないのに、警笛が鳴った。
そして、1秒後
『ぷっぷー!!ぷっぷぷっぷー!!!』
また警笛がなったのだ。
しかも、大量に。
事故か!?
飛び降り自殺か!?
何事だ!?
野次馬根性で、線路沿いの道へ向かった。
すると、そこには・・・
線路沿いのフェンスに群がる
大量の子どもたち・・・
近くの保育園か、幼稚園のこどもたちがお外を散歩中に電車を見ていたようだ。
そして、口々にこんなことを言っていた。
「電車、挨拶してくれたねー」
「ねー」
挨拶・・・?・・・!!!
ようやく警笛の意味が理解できた。
電車の運転手が、出発する際に、フェンスの向こうにたくさんの園児がいて手を振っているのを見て、警笛で挨拶をしていたのだ。
そう考えると
『ぷっぷー!!ぷっぷー!!ぷっぷぷっぷー!!!』
の音が
『やっほー!!みんなー!!こんにっちはー!!!』
に聞こえてきた。
やるな、運転手よ。
そう思った。
冷静に考えれば
おそらく、あの場面で警笛を鳴らしたことは「業務上の不適切行為」だ。
本来、電車の警笛は、踏切や工事現場近くで電車が通るから気を付けるように警告をする笛だ。
それ以外の用途に使ってはいけない。
厳密にいうと、あの運転手は、不適切な行為をしたため、電車会社から注意を受けなくてはいけない。
もしかすると、訓告処分・戒告処分・懲戒処分になるかもしれない。
ルールを破ることを良しとしたら
そもそも組織として機能しなくなる。
ルールを守ることをやめたら
「3時間くらい到着が遅れたって いいじゃな~い」とか運転手が言う世の中になってしまう。
だから、ルールは徹底的に守られなくてはいけない。
それが基本的なことだ。
でもさ。
あの園児たちの笑顔を見ると
「まぁ、これくらい、いいよね~」
と思わずにはいられなくなる。
本来、ルールは我々が「生きやすく」なるためのものだ。
ルールを守ることを徹底しすぎて、「生きづらく」なったら、元も子もない。
最低限のルールは守りつつ
「柔軟性をもって」生きられる世の中でありたいね。
きっと
「こども達の笑顔を守るため」のルール作りをすれば
世の中はもっと、生きやすくなるのかもしれない。