教会史における「新しい歌」 ー賛美と礼拝の歴史神学的考察ー

「新しい歌」がどのように生み出され、受け継がれ、また新たな歌を必要とする状況を生み出したかを歴史的に検証します。

本論⑮ ゴスペルを生み出したアフロ・アメリカンの人々の歴史と信仰 <2>

2005-06-09 11:19:38 | 講義
2. 信仰の歌としての黒人霊歌

◆黒人霊歌の中には、旧約聖書・出エジプト記から作られた歌が多くみられる。エジプトで奴隷苦役を強いられていたイスラエル民族。しかし、その嘆き叫ぶ声を神が聞かれ、モーセという指導者を送って救い出された物語、その「出エジプト記」と自分たちの境遇を重ねながら、いつの日か神が与えてくださる「救いの日」を信じて、彼らは歌い続けた。

Kum Ba Yah

Kum Ba Yah, My Lord, Kum Ba Yah
Oh, Lord Kum Ba Yah
来てください わが主よ いまここに
おお主よ、来てください

Go Down, Moses
(Traditional Spiritual)

(1) When Israel was in Egypt's land, Let my people go,
Oppressed so hard they could not stand, Let my people go,
イスラエルの民がエジプトの地で奴隷とされている。私の民に自由を!
抑圧は激しくもう彼らは耐えられない。私の民に自由を!

(2) Thus, saith the Lord, bold Moses said, Let my people go,
If not I'll smite your first-born dead, Let my people go,
Go Down, Moses, 'Way down in Egypt's land,
Tell old Pharoah, Let my people go.
大胆なモーゼは神はこう言われたと言う!「私の民に自由を!」
さもなければ、私はお前達を滅ぼす。私の民に自由を!
行け、モーゼよ。エジプトの地まで。
そしてパロに伝えよ「私の民に自由を!」と。

(中略)
(17)Oh, let us all from bondage flee, Let my people go,
And let us all in Christ be free, Let my people go,
ああ、我々みんなを囚われの身から解放させよ。私の民に自由を!
そしてキリストを信じる信仰において我々みんなに自由を。私の民に自由を!

(中略)
(25)I do believe without a doubt, Let my people go,
That a Christian has a right to shout, Let my people go,
Go Down, Moses, 'Way down in Egypt's land,
Tell old Pharoah, Let my people go.
私は確信をもって信じている。私の民に自由を!
キリストを信じるものには叫ぶ権利があることを。私の民に自由を!
行け、モーゼよ。エジプトの地まで。
そしてパロに伝えよ「私の民に自由を!」と。

◆旧約聖書のストーリーのイメージと黒人奴隷達の希望との相関性がはっきりと見える代表的なSpirituals(黒人霊歌)である”Go Down, Moses”。歌詞は何と25番まである。”Go Down, Moses”の作者は、日常生活において現実的な切望である白人奴隷主からの解放と、信仰による魂の救いという精神的な解放の双方を強く希求し、この歌を作ったことがはっきりとわかる。



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