家のすぐ近くで、カッコウが鳴いている。
カッコウと言えば高原の鳥のはずだが、
ここ仙台では毎年初夏のこの季節、
住宅地で声を聞くことができるのだ。
だがしかし。
テレビなどで託卵されたヒナの
えげつない行為を知らされているこちらとしては、
♪静かな湖畔の 森の陰から…
などという優雅な気持ちには到底なれない。
…カッコー カッコー…
と聞こえてくるたび、
(こいつもどこかの巣で
ウグイスなりヨシキリなりのヒナを
犠牲にして育ちやがったね、悪党め…!)
と憎々しい気持ちで眺めるのだ。
託卵された巣の親鳥は、
自分の倍以上もあろうかという大きさの
カッコウのヒナにせっせと餌をやる。
「なぜ気づかないっ!このうつけ者~!」
と叱ってやりたいところだが、
これはカッコウのヒナの口の中の色に原因があるそうだ。
大抵の親鳥は、ヒナ鳥の口の中の
鮮やかな黄色やオレンジ色を見ると、
本能的に餌を入れたくなってしまうらしい。
「大きくおなりー♪」とか
「お母さん、あなたたちのためにがんばるわ★」
とかではない。
「自分の巣に、きれいな色の口がたくさんある。
ああ、餌を入れたい、入れなくちゃ!」だ。
カッコウのヒナはでかい上に、
口の中が燃えるように鮮やかなオレンジ色。
親鳥たちの本能に訴えかける威力もすごい。
託卵された巣の親鳥どころか、
何の関係もない通り掛かりの鳥でさえ、
この口を見ると餌を入れずにいられないと言う。
恐るべし、カッコウ。
恐るべし、生存競争!
本能だ。本能には抗えない。
「私の子供たちはどこ?」
「この子、いやに大きいわ…」
なんて考えているヒマはないわけだ。
悲しいのぅ、小鳥たちよ……
カッコウは勝ち誇ったように鳴く。
「オーッホッホッホッホ……
だれも私のオレンジ色には
かなわなくってよ!
カーッコッコッコッコッコッコー……」
好きじゃなくても
毎年この声を聞かねばならぬ、
それが仙台市民に科せられた重き宿命!
ああ、憂鬱だ……。