らくがき帖

ノンジャンル心象風景

ヒメが思うには

2005年06月21日 | 子供


幼いころ、母方の祖母の家へ
預けられていた期間もあったせいで、
私は筋金入りのおばあちゃん子だった。
祖母の方も、今ではそれもどうかと思うが、
幼い私に面と向かって
「おばあちゃんには8人孫がいるけど、
aricaが一番かわいいよ。」
と言ってくれていたので尚更である。

そんな祖母だから、
見る度会う度私を褒めずにいられない。
大人の話がよくわかるとか、
私がいると花が咲いたように明るくなるとか、
いろいろと言葉を尽くしてくれていたが、
中でも私を気分よくさせてくれたのはこれだ。
「aricaは本当~に器量がいいねぇ。
博多人形でも見ているようだよ…」

もちろん我が孫かわいさに目がくらんでいるだけだが、
幼い私はこれを真に受けてかなり増長した。
正直博多人形がどんなふうかは知らないが、
おばあちゃんがこんなにも年柄年中言ってくれるのだ。
私のかわいさって、日本一…?
もしかして、世界一かも!?

こうして、
海よりも深く山よりも高い勘違いで
しばらくの間自惚れていた私だが、
冷静に社会を見つめられるようになった
小学校高学年くらいだろうか。
ようやくそんなことはないという
事実に気づいた私はかなり落胆した。(←をいをい…)
そして心に誓ったのだ。
「もしも自分に娘ができて、
例えものすごくかわいく感じたとしても、
いい加減に大げさなことは言わず、
きちんと事実を伝えることにしよう!
だって気づいたときショックだから!」と。

果たして、十数年後に娘を得た私だが。
実際にそう思ってしまうのだから仕方がない。
黙ってなどいられようか!
「ヒメちゃん!あなたはなんてかわいいの!
ママはヒメがかわいくてかわいくてたまらないよ。
世界一だよ。宇宙一だよ。
ヒメよりかわいい子なんてどこにもいないよー!」
言い通しである。
おばあちゃんの比ではない。
若かりしころの決意は一体何だったのか…。

だが、心配御無用。
ヒメは私と違って、愚かな勘違いなどしない娘だった。
いつもの調子で我が子を誉めそやしていた私に
ヒメは冷静な口調で言い放ったのだ。

「ねぇ、ママ。
ママはヒメのことをかわいいと思うかもしれないけどね、
それはママがヒメのママだからそう思うだけで、
本当はヒメは1番じゃないと思うな。
YちゃんのママはYちゃんが1番と思ってるし、
MちゃんのママはMちゃんが1番だと思ってるよ、きっと。」
「あ、でもNちゃんのママとAちゃんのママは
そんなこと思わないね。
だって、NちゃんとAちゃんは全然かわいくないもんね!?」
「ヒメが思うにはねー。
本当に世界一かわいいのはアメリカの子だと思うよ。
だってさ、アメリカの子って、
目の色や髪の色も全然違くて、
漫画みたいですごくかわいいじゃん!」

……。
5歳にして、金髪碧眼が世界一と言い切る我が娘。
ちょっと前まではヒメの価値観=私の価値観だったのに…。
子供の成長って、ちょっと怖い(-_-;)