arata-tokyo-jp's blog(Henry Nagata)

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映画音楽について

2006年02月09日 10時28分04秒 | エッセイ
ゴジラの映画音楽で有名な作曲家の伊福部昭氏が亡くなられました。
享年91歳でした。
伊福部氏は日本の民族楽派の立場の人だったと思いますが、その民族楽派に対して批判的な作曲家の人たちからも、その音楽性を高く評価されていた方だったと思います。
と言うのは、戦時中は日独伊三国同盟によりドイツのクラシック音楽などは日本に入って来て、日本の作曲家も民族楽派が奨励されたのだと思います。
それに対して批判的な音楽家たちがいたのだと思います。

Yahoo ニュースを見ますと・・・
北海道・釧路生まれ。北海道帝大専門部卒。
林務官を務めながらアイヌ音楽や樺太のギリヤーク民族の音楽を研究、
「民族の特異性を経て普遍的な人間性に至る」ことを作曲理念に据え、ほぼ独学で民族色豊かな作品を作り出した。
1935(昭和10)年、「日本狂詩曲」でパリのチェレプニン賞に入選。
同曲は翌年米国でも演奏され、国際的な脚光を浴びた。
東京音楽学校講師、東京音楽大学学長などを務め、故・芥川也寸志、故・黛敏郎、松村禎三、故・石井真木、三木稔など多くの作曲家を育てた。(毎日新聞)
・・・との事です。

以前、伊福部氏の芸術作品をCDで聴いた事がありましたが、その時に感じた事は、映画音楽の「ゴジラ」は伊福部氏にとって音楽的に非常に重要な作品なのではないかと思った事です。
特に「音響」に関してそう感じました。
単なる効果音の仕事ではなく「魂が入っている」と感じました。

日本の映画監督でも音楽を非常に大切に考えている監督と、そうでない監督がいるようです。
黒沢明監督などは音楽を非常に大事にする人で、ほとんどクラシック畑の作曲家に音楽を依頼しています。
早坂文雄氏、武満徹氏、池辺晋一郎氏・・・
その黒沢監督の助監督だった人がゴジラ映画の本多猪四郎監督だったのです。
本多監督はその他にも「妖星ゴラス」では石井歓氏、「マタンゴ」では別宮貞雄氏に音楽を依頼しているようです。
黒沢監督と同じようにいずれもクラシック畑の作曲家です。



日本のかなり有名なプロデューサーの方だったと思いますが・・・
「映画音楽なんて聴こえない方が良い」
「映画が終わった時に、今まで音楽が鳴っていた事を忘れている方が良い」
などと堂々と言う人がいるのです。
映画音楽の役割は「映画の効果を高める働き」ですから、基本的には確かにそうだとは思いますが、私はTVでその言葉を聴いた時には相当ガッカリしたものです。
つまり映画音楽は単なる「効果音」であって、それ以上の事をしてはならないという事です。
音楽は常に「主従関係」の従であって、出しゃばってはいけない訳です。
映像と音楽が対等になってはならない・・・という考え方のようです。

しかし、世の中の映画がそんな映画ばかりだったら全く面白くありません。
特に私の場合は若い頃にフランシス・レイの音楽が好きでしたから、クロード・ルルーシュ監督の作品「男と女」の中で、映像と音楽が対等になって「独特の美的感覚」を与える事の楽しさを経験してしまったからです。
つまり映像と音楽は「1+1、イコール2」ではなかったのです。
それ以上のものになっていたのです。

詩と音楽で「歌」が生まれるのも、これと同じ事です。
「1+1=2」ではないのです。
砂糖と水を混ぜて砂糖水が出来るのではなく・・・
水素と酸素で化学変化が起こり、「水」という別の物が生じるようなものだと考えています。
歌において「1+1=2」のような作品では、愚作になってしまうと思います。
水と油のように分離したままの状態のような気もします。

映画においても、映像と音楽は「1+1=2」ではなく、「予想外の美的感覚」、「別の世界」が生じるものだと思っています。
簡単に言えば、先ほどのプロデューサーの言うように「映画を見ている時に、効果音が音楽として聴こえない方が良い」というのではなく、その逆に「映画を見ている時にメロディーがはっきり聴こえて良い」という事です。
勿論「常に・・・」という訳ではありませんが。
私としましては、「朗読と音楽」にしても「ダンスと音楽」にしても、同じように考えているのです。



フランシス・レイで思い出した事があります。
フランシス・レイの音楽は、映画音楽としても素晴らしいのですが、映像を離れて音楽だけを聴いても素晴らしいのです。
これは単なる効果音ではない証拠だと思います。
その上、レコードを出せば大ヒットです。
もう全てが揃っているという感じで、フランシス・レイは私の若い頃からの憧れの作曲家だったのです。

伊福部氏のニュースから映画音楽についてあれこれ思い出し、結局フランシス・レイの話になってしまいました。
お退屈さま・・・

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