arata-tokyo-jp's blog(Henry Nagata)

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胡蝶の夢

2005年01月31日 01時29分00秒 | エッセイ
今日は「夢の働き」についての話から始めてみたいと思います。

このところ、気に入った作品が創れないので困り果てていたのですが、昨日の気分転換の影響のせいか、今朝目が覚めた時には、夢の中で一生懸命に作曲している自分自身を発見しました。
その時のメロディーが未だに頭に残っています。

夢というものは、音楽を実際に耳で聴かなくても「音楽が聴こえて来る」のですから、考えてみると不思議なものです。
目を閉じていても、映像を鮮やかな色彩で見る事も出来ます。

新しいものに関しては、目や耳がなければ感じ取る事が出来なくても、過去に一度記憶されたものや記憶が組み合わされたものに関しては、目や耳が無くても見たり聴いたり感じ取る事が出来る、という事なのでしょうか・・・?
詳しい事は分かりませんが、この働きによって人間は、小説や詩や歌などを創作したり楽しんだりする事が出来るようです。
優れた文学を読みますと、登場人物が実際に生きて存在しているかのように生々しく感じられます。


さて、「夢」で思い出す事といえば、荘子の「胡蝶の夢」の話です。
大分以前に知った話ですので、詳しい事は忘れてしまいましたが・・・

ある時、夢の中で自分が蝶になって花の上を楽しそうに飛んでいた。
そして目が覚めてみると、人間である自分が蝶になって空を飛んでいる夢を見ていたのか・・・それとも逆に自分は本当は蝶で、今人間になった夢を見ているのか・・・それが分からなかった。
というような話だったと思います。

この話で非常に面白いと思った事があります。

どんな人間でも、人生に一度や二度は「自分とは何か?」という難問にぶつかる事があると思います。
自分というものの重要な要素・・・例えば、男か女か、大人か子供か、才能があるか無いか、美しいか醜いか、健康か病気か、金持ちか貧乏か・・・これらの事を全て捨ててしまった後でも、夢の中の蝶は「自分」という「意識」を持っていたという事です。

例え自分が人間ではなく、蝶になって飛んでいても、「自分が飛んでいる」という「意識」がある訳です。
この時、「自分が・・・飛んでいる」という時の「自分の意識」とは、一体何なのでしょうか?

それは・・・男でも女でもない、大人でも子供でもない、才能の有る無しでもない、美しくも醜くもない、健康でも病気でもない、金持ちでも貧乏でもない・・・
その一切の囚われを捨てても、それでもまだ残っている「究極の自分自身」。
一切の差別感、上下関係のない本来の自分自身。
それは一体何なのか・・・?
禅宗で言うところの「父母未生以前の本来の面目」というものなのでしょうか?

これは宗教家や哲学者が追求する問題ではあります。
しかし、一般の人には難しい事は分からなくても、この「胡蝶の夢」によってそれが「意識」として宇宙に「存在している」という事だけは分かります。
これを仮に「魂」と呼んでも良いかも知れません。

現実の人間社会では、男女の違いや貧富、美醜、その他の個人的要素が全て「上下関係」となって「差別の世界」を作ってしまいます。
ところが夢の中では、一つの「魂」が差別のない世界を自由に楽しんでいるという訳です。

どんな人間であっても夢を見る以上は、このような本来の自分自身である「魂」を持っている事に気が付かされる訳です。
人と人とが触れ合う時には、このような「魂と魂の触れ合い」にしたいものだと思います。
理想論になってしまうかも知れませんが、物を創る立場の人間のハシクレとしましては、沢山の人の「魂」に触れ、「共鳴」を起こすような作品を創りたいものだと思います。

一般に「個性的」と言われているものの重要な要素を全て捨てても、それでもまだ残っている究極の存在・・・
「個性的」でありながら、差別感の無い万人共通の「普遍的」な存在・・・
それが「心」なのか、「魂」と呼ぶべきものなのか・・・

「自分とは何か?」・・・この宗教家や哲学者が追求するような問題を、一般の人が理解するという事は非常に難しい訳ですが、この荘子の「胡蝶の夢」の話は、夢の働きによってどんな人にでも差別感の無い本来の自分自身がある事を発見させてくれる最良の話のような気がするのです。

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2 コメント

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夢・・・・ (reigon)
2005-01-31 13:41:46
そういうこと・・あります。

すごく、神秘的ですね。夢って・・大事にしたいですね

そういう時間・・
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神秘的・・・ (arata)
2005-01-31 13:55:08
reigon さん、書き込みありがとうございます。

小説家でも画家でも、夢の神秘性に興味を持って、作品に取り上げている人は多いですね。

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