逆向き

2015年03月21日 23時50分27秒 | マーロックの日記

                                          ヒュゥゥゥ   ・・・・

                   サク  ・・・

      サク  ・・・

積もった雪を踏む・・・

針葉樹の林の中を歩いてる。

足跡がそっちに続いているから。

向きが逆方向の足跡が重なって残っている。

おばあさんの話の途中で、外が気になって様子を見に出た。

それでこの怪しい足跡を見つけた。

道路に向かっていなくて、家の側の林に続いてる。

家のそばまで来て、その足跡を踏んで戻ったらしい。

歩きやすいからだろう。

一応タクシーの運転手にも聞いてみたけど、何も知らなかった。

怪しい足跡は林から出てはいなくて、こっそり伺っていた様である。

ポールさんはおばあさんに話を聞いている途中だったから、伝えずに来た。

この雪の中でウロウロされたら困るので、黒猫は婦人の家の中に置いて来た。

斧さんのヘッドライトが明るい。

ケースに入れて、ポケットに入れていた様。

新しく買っていたもので、センサーで自動的に明るさが変わる。

斧さんが足元を見れば、少し抑えられる。

遠くを向くと、かなり明るくなる。

足跡はひとり分。

まだ雪は降っているけど、薄くなっていない。

新しい足跡みたいである。

私が窓の外を見ていた時、外で何か動いたように感じた。

あれが気のせいでなければ、ついさっきだろう。

ヘテロ達3人の誰かかもしれない。

あるいは、バレッタさんを誘拐した連中の誰かかもしれない。

彼女が住んでいた家の事は、大使館内で取り調べを受けている職員から聞きだしたもの。

その職員が、人身売買ブローカとまだ関わっているなら、あの家にバレッタさんがもういないことは知っていただろう。

バレッタさんと夫婦があの家を去ったのは、だいぶ前である。

職員がブローカともう関わっていないなら、昔の事を話しただけだという事になる。

人身売買ブローカも、夫婦とバレッタさんの行方を捜しているはずである。

林の中なので、周囲を照らして慎重に進んでいる。

この国には銃の所有者が多い。

徴兵制なので、予備役が多く持っている様。

こっそり隠し持つことが難しい、ライフルが多いみたいである。

       サク

                      サク  ・・・

後ろには、私と斧さんの足跡もある。

積もったばかりの雪を踏むのは、たのしい。

                         バササ  ・・・・

「・・・」

上から雪が落ちてきた。

木は白い。

雪は数日前から、ずっと降っているらしい。

                サク  ・・

                                  ヒュゥゥゥ    ―――

林から出た。

風がつめたい。

道路だ。

「ここまでか・・・」

「ァゥ」

道には、クローラの跡。

雪上車かな。

もう何もいない。

足跡も、他にはない。

斧さんのライトが照らすと、白い木々と落ちてくる雪がずっと続いてる。

「戻ろう」

「ァゥ」

自分の足跡を踏んで帰ろう・・・

             サク

                         バサササ  ――

                                        ヒュルルル   ・・・・