ザァァァァァ ・・・・
――― ァァァァァァ
バチャ ――
ガラスに雨がたくさんあたる・・・
昨日の夜から、ずっと降ってる。
空が光ると、すごい量の雨粒がみえる。
黒い雲も薄らみえる。
太陽が出てくるのが遅いから、もう目は覚めてる。
レトロな車に、黒猫とニャッティラとやって来た。
黒猫達が出入りできるように、後ろのドアが少し開いている。
だけど、閉めた。
気温は昨日よりもずっと高くて、雨も降って積もっていた雪はほとんどいない。
背もたれを少し倒して、ガラスの向こうをみている。
雨粒は次々落ちてくる。
ゴォォォォォ ン
――― ・・・・・
雷もよく鳴る。
地球では、1秒に平均100回の雷が発生している。
雷雲が帯電する仕組みは、まだよくわかっていない――仮説はいくつかある。
一般的には、雲の上の方が正電荷を帯び、下の方が負電荷を帯びる。
強い電荷があると、近くにある中性の物体の電荷を移動させる。
雲の下の方が負に帯電しているので、地面の負電荷が反発して、雲から遠ざかる方に移動させられる。
そして、地面の雲に近い方には正電荷が多くなる。
ほかのものでも同じで、帯電した物体が中性の物体の電荷を、近くと遠くに分極させる――この過程を、誘導と呼ぶ。
雷雲の下の方が負に帯電していると、地面が誘導されて、地表が正電荷を帯びる。
電場の強さが3000000V/mを超えると、雲の電子が雪崩を起こして雷が発生する。
V/mは、電場の強さの単位。
Vはボルトで、電圧や電位差を表す単位――位置エネルギーの単位で、ジュール/クーロン。
1クーロンの電荷を動かすのに1Jのエネルギーを必要とする場合、その間の電位差は1Vになる――地面は基準のために、0Vとされている。
陽子は+、電子は-の電荷をもっていて、大きさは同じ。
陽子約6.25×1018個分の電荷が、1クーロンになる。
また、W=V×Aなので、V=W/A。
Wはワットで仕事率、Aはアンペアで電流。
Wは1秒間に1Jで、電力は一般的にWを使う。
1Wの電力で1Aの電流が流れたら、その間の電位差は1Vである。
そして1秒間に1クーロンの電荷が流れた場合、1アンペアになる。
ボルトは、電池を発明したアレッサンドロ・ボルタに因んでいる。
アンペアは、アンドレ=マリ・アンペールにちなんでいる。
個人的にはあまり経験はないのだけど、冬の乾燥した日には、金属のドアノブなどでバチッと不快な思いをする人が増える。
床と靴がこすれると、電子が移動する――ガラス棒と布などでも。
湿度が高ければ、それらは空気中に放出される。
だけど乾燥していると、帯電したままになる。
電荷を帯びやすいものは、帯電列で画像検索すると出てくる――帯電列で離れているもの同士がこすれると、帯電しやすい。
荷電粒子の間に働く力は、電荷の強さに比例し、距離の2乗に逆比例する――クーロンの法則という。
+と+、-と-の電荷は反発し、+と-は引き合う。
電場の強さは距離の2乗に逆比例するので、距離が近づくとその力が強くなる。
十分に近づけば、遠くにある電荷の反発力を、近くにある電荷の引力が上回る。
このため、帯電したぶったいが中性のものに近づくと、すこし分極させることになる。
そして電場の強さの単位が、V/m。
―― ァァァァァァァァ
ゴロロロ
乾燥した日に、絨毯の上を歩き回って、30000Vくらい帯電したとする。
金属のドアノブまで2mあれば、15000V/mになる。
これだけ離れていれば、まだバチッとはならない。
1mまで近づけば、30000V/m。
そしてドアを開けるために手を伸ばして1cmまで近づくと、3000000V/mもの強さになる。
ここまで電場が強まると、絶縁破壊が起きる。
電子がその隙間に跳びこんで、空気の分子をイオン化してなだれを起こす。
そして、ドアノブに触れるよりも先に電流が流れる。
このとき電流が空気を高温にするため圧力差が生じ、音波が発生してバチッと聞こえる。
私たちは電気信号で動くので、その電流が神経を刺激して痛みを感じる。
相当大きな電圧だけど、流れる電荷の量…電流がわずかであるから、危険はない。
ちなみに電流は+から-に流れると表現するけど、実際に流れているのは電子で、-から+に流れている。
陽子は+…正の電荷を持ち、電子は-…負の電荷を持つという言い方にはとくに根拠はなく、ベンジャミン・フランクリンがそう呼んだのでそうなった。
フランクリンが+と-の呼び方を考えたのだけど、その時、電子を失った方を+と呼んだため、ちぐはぐな感じのまま現在に至っている――まだ、電気がなんであるか知られていない時代のはなしである。
バチ バチ
ニャ~
雷雲と地面は、手とドアノブよりもずっと離れているから、絶縁破壊を起こすには相当な電位差が必要になる。
距離によって違う訳だけど、だいたい数千万ボルトの電位差に達すると、雷が発生する。
この時、雲から地面に向かうのと同時に、地面から雲へも発生する。
平均的な雷で、50000Aもの電流が流れる。
だけどほんの一瞬の出来事なので、総エネルギーが莫大だという訳ではない――少なくもないけど。
雷は空気を20000℃位にまで熱するので、光るし音波も発生する。
木に落ちれば、樹液が爆発して樹皮が吹き飛ばされる。
生き物にとって危険なのは、電流である。
高圧でも、電流が少しなら危険はない。
私たちは、すこしの電気信号で動くため、たくさん電流が流れると、筋肉や神経が強く反応し、痙攣したり痛みを感じる。
心臓に流れると、動くのをやめる場合もある。
電流の致死量は、調べるのが困難なため、専門家でも意見が違う。
ただ心臓の場合、1秒以下であっても、0.1A以上の電流が通過すると死ぬ可能性が高いというのは、多くが認めている。
なので金属の棒をコンセントに入れるのは、非常に危険である――お風呂から出てすぐとかは、死んでしまう可能性が高い。
分厚い教科書でピンセットをはさみ、それをコンセントに差し込むと言う実験をした理科の教師がいた――授業ではなく、個人的にやった様。
生徒である私たちは、黒焦げになった教科書を見せられて「マネはしないように」と忠告された。
今から30年近くまえ、雲のずっと上でも発光現象が起きることが発見された。
50km~90kmの上空で発生する赤からオレンジの発光は、レッドスプライトと呼ばれる。
ブルージェットという、青い発光現象もある。
こうした現象が起きている事は、長い間人は知らなかった。
その仕組みの解明は、まだこれからである。
―― ァァァァァァァァ ・・・・・
・・・・・ ―――
日の出頃には、雨は止むらしい。
虹がみえるかな。
黒猫は、隣のイスに座ってる。
ニャッティラは、後ろの毛布の中に潜っている様。
黒猫は頭をガラスに近づけて、みてる。
私も、横のガラスに目を近づける・・・
パチ ――
・・・・ ァァァァァ ―――――
―――――