カタチあるもの

宇宙、自然の写真をメインに撮っていますが、時々、読書、日常出来事について書きます。

【荻原 規子】 西の善き魔女

2018-05-21 06:55:34 | 読書_感想

 

【作品概要】
作 者:萩原 規子
発 表:2002年
出版社:中央公論社

【ストーリー】
 「第1巻 旅立ちの巻」「第2巻 戦いの巻」「第3巻 世界の扉の巻」「第4巻 星の詩の巻」の全4巻で構成される長編ファンタジー、第3巻に以降は外伝になるが、一連の物語として読むことができる。
 フィリエルは、グラール国の北の辺境のセラフィールドで生まれた。父親は天才的だが偏屈な天文学者、母親は女王家直系の王女だが駆け落ちをして王家から絶縁され、セラフィールドでフィリエルが幼い時に亡くなっていた。
 父親のディー博士は研究ばかりしていて子育てをほとんどしないため、フィリエルは近所のホーリー家で育てられた。フィリエルの家には、8歳の時に引き取られてきたルーンがいて、博士の助手として研究を手伝っていた。同じ歳であったため兄弟のように育ってきた。
 フィリエルが住んでいるルアルゴー伯爵領地では、15歳になると伯爵家主催の女王生誕祝祭日舞踏会に招待される。15歳のフィリエルは友人のマリエとともに舞踏会を楽しみにしていた。衣装はホーリーおばさんが水色の生地から作り、お母さんの形見という青い石のついた首飾りをしていった。舞踏会では、成り行きからルアルゴー伯爵の嫡男ユーシスと踊ることになった。ユーシスには血が繋がっていない妹アデイルがいた。アデイルは、女王の直系の孫で生まれてすぐに伯爵家に引き取られていた。アデイルはフィリエルの首飾りを見るとすぐに自室に呼び、フィリエルから採った少量の血を青い石の上に垂らした。青い石は徐々に赤く染まっていった。フィリエルは女王直系の孫だったのだ。

【感 想】
 4巻を重ねてみると13.3cm、厚い、厚い、長い、長い・・・・、しかし、読んでみると面白い。一気に読み進めて12時間、ゴールデンウィーク期間中だったため2日間で読破しました。物語のスピード感が一気に読ませてくれた感じです。
 辺境の荒野で育った少女が実はその国の女王の孫だったというファンタジックな出だし、女王直系の身でありながら母親が王籍を剥奪されているため女王候補としての身分はなし、そこから冒険、恋、友情などなど・・・、楽しく読ませていただきました。出だしが少女漫画チックだったため、最後まで読めるだろうかと不安を感じましたが、途中からは冒険要素が伸び出し、ゴール近くではSFっぽくなっていて飽きさせてなるものか、という作者の意気込みが感じられます。
 女王候補は3人、主人公のフィリエルは自分の気持ちにまっすぐで困難にも飛び込んでいき既存のシステムを破壊、変革する型破りな少女、アデイルは外見はお嬢様のような出で立ちだが、ストーリー構築に卓越した才能があり、有能な協力者を集めて適材適所で動かしていくタイプの少女、レアンドラは女性としての一級の魅力を持ち有能な男性を虜にして動かしていくこともできるが、強力な指導力を発揮して指導者として動かしていくこともできるリーダータイプ、タイプの異なる3人が競争、時に協力しながら女王を中心とした世界の秘密に迫っていくところに物語の面白さを感じます。
 舞台設定にも面白さがありました。物語は遙か未来、そして地球以外のある惑星(?)、科学技術を発展させて地球を滅亡させてしまった人類は、新天地を目指して大型宇宙船で飛び立ち、ある惑星にたどり着く。その惑星では恐竜が繁栄していた。地球を滅亡させてしまったという苦い記憶から、惑星の環境維持には最新の注意を払いながら、恐竜と人類が交わらないようにフォースフィールドを構築し、限られた範囲内で人類の生存を図っていくこととなった。と・・・・、物語の中で詳しく語られていないのですが、妄想を豊かにするとこんな感じかと。
 今の世界は、どちらかというと男性優位の社会、男性の基本的な性格として競争して勝つことに憧れを感じる、権力拡大した己の姿を想像して優越感に浸れるというのがあります。女性の基本的な性格はよくわかりません。一般的には、女性は家あるいは家族を維持繁栄させたいという願望を持っているといわれますが。
 日本の戦国時代を考えると、男性中心の社会では戦いと征服を繰り返しながら国が大きくなっていき、最終的には一つにまとまるという進歩が速い傾向がありますが、しかし、犠牲も大きい。科学が発展していない段階であれば、戦いによって地球が滅びることもないのでしょうが、科学が一定以上に発達した段階では地球を滅亡させる恐れすらあります。物語の中では地球を滅亡させた記憶もあるようです。
 物語の中では、こんな過去の苦い記憶から国造りの基本を女王支配とし、初代女王からの女性直系の子孫のみが女王となる仕組みが作られています。女王候補は生まれてすぐに他家に預けられ、周りすべてが他人という状況の中で知力、女性としての魅力、行動力、統率力を磨き、権謀術数を弄しながら裏から支配する術を小さい頃から学び、女王となってからは男性を立てながらも裏から支配する表と裏の顔を持つ、「西の善き魔女」とは、こんな女性のことを言っています。
 科学技術は異端として厳しく取り締まり、一方で女王は科学技術を駆使した監視システムによって、国の状況や隣国の情勢をつぶさに知ることができると、こんな感じの背景設定でした。私は科学好きなので、異端として取り締まられたら困りますが、女性中心の社会というのは、どんな社会になるのか、ちょっと興味も。

 

 



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