夏休み?逃避行??いえいえ、「出張」です。
縁あって、8月6日は炎天下の広島市にいました。そうです!!人生初の広島上陸!人生初で平和祈念式典を見てきました。(参加・・・っていうよりは、端から見てただけです。すっごい人なので)
で、たまたま被爆者のお話を聞くことが出来ました。今まで、のうのうと暮らしてましたけどね、やっぱ、色々考えさせられます。ただ話を聞いただけ・・・ではもったいないので、せっかくだからこの2人にも考えていただきました。
いつもの日記の「倍」の長さがありますよぉ~~~!覚悟して読んでみてください。
ちなみに状況的に現代版カオルナの話になりました。
カオル=19歳。パイロット養成の航空学校・専門学校生。
ルナ=19歳。高校卒業後、花屋に就職。祖母が日本人でクォーター。生まれはアメリカ。
2人は中学からの同級生。・・・という勝手な設定。
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ルナの日記 「65回目の夏の日」
_______________________
今年の夏は、とても暑い。
私が毎日相手にする花達は、暑さに弱い。
でも彼らに太陽の光は不可欠だから、鉢植えの花は何度もお店の外と中を出し入れする。
その作業がとても辛い・・・・・・・・、
私が毎年思う、「夏」の感想は、ただ、「暑い」ということだけ。
夏バテせずに、いかに日々を元気に過ごすか、お客様の前で笑顔でいられるように。
それは当たり前のことだし、誰もがそうだって思い込んでいた。
目の前のおじさんも、日傘をさしたおばあさんも、サングラスの若者も。
そして、時々航空学校の寄宿舎から帰った時に、ブラリと顔を出してくれる、・・・・・・私の大切な恋人も。
夕べ遅くにカオルからメールが入った。
『週末、外泊届け出したから映画に行くか?』という誘いのメール。
いつものことだけど突然なんだから。
でも、バイトの葛城君が勤務を代わってくれたから、無事に今日、会えたって訳。
観たい映画が2本もあるっていうから、1本目はモーニングショーにした。すぐに出れる準備をしていたのに、彼は私をアパートに迎えにくるなり、こんなことを言ったの。
「・・・・・・・ちょっとTV付けていいか?」
珍しい、とっさにそう思った。
彼はTVより音楽やラジオを聴く方だし。
でも、見たかった番組の録画を忘れたとか、そんな切羽詰まったような顔じゃないし。(というか、焦った顔する人じゃないけど)
「ええ、もちろん。何見るの?」
「ああ・・・・・ちょっと・・・・・・・」
そう言って、TVの前に座ってから目を伏せて腕時計を見る。
私もつられて部屋の壁にある時計を見る。
午前8時13分・・・・・・・・・・・。
時間を確かめている間に、彼がTVをつけた。そして慌しくチャンネルを動かして止めた先は。
「○HK?」
「ああ。」
「これって・・・・・・・・」
「広島の原爆祈念式典。」
「あ・・・・・・・・・・・」
今日・・・・・・・・・・8月6日だ。
そう思った時TVから、こんなアナウンスが流れてきた。
『・・・・・・只今より、1分間の黙祷に入ります。皆さん、ご起立ください。・・・・・黙祷。』
再び壁の時計を見上げる。
午前8時15分。
画面の向こうでは老若男女、全ての人が頭を垂れて目を閉じていた。
そして、それを見ていたはずのカオルを振り返ると。
・・・・・・・・・・彼も目を閉じていた。
その姿に驚いて見入ってしまう。
部屋には、何故か静かで清らかな空気が流れて。
TVから響く、等間隔の鐘の音だけ。
物悲しく響く、鐘の音だけ・・・・・・・・・。
やがて、『黙祷終了』の声がしたと同時に、カオルも目を開いた。
そして私と目が合うと、照れたように小さく笑った。
「いったいどうしたの?・・・・・・・今までこんなことしたことなかったわよね?」
「まあね。8月6日は広島、9日は長崎の原爆の日っていうのは知ってたけど。」
「うん、私も。社会科で習うものね。祈念式典もたまに見たりはしたけど・・・・・・もしかして、親戚にでも原爆関係者がいたの?」
「いや。」
私と会話しながらも、カオルは画面から目を離さない。
画面の向こうでは、どこかのお偉いさんの挨拶が始まっていた。
「じゃ、どうして?」
「・・・・・・学校の同じ学科をとってる中に、宮野、ってヤツがいて。」
「うん。」
「そいつがミリタリーマニアで、あちこちの米軍基地や自衛隊基地を見て歩くのが趣味なんだ。で、先週ソイツの誘いで茨城の百里基地っていうところの航空祭に付き合った。」
「航空祭?あ、自衛隊のジェットが飛ぶのを見れるんでしょう?」
「そう。」
人付き合いは苦手だ、とか言いながら、最近は結構付き合いはいいみたいね。
良し良し!!
「そうなんだ!面白かった?」
「・・・・・・面白かったが、あいつがマニアなところまで見学したがるから付き合いきれなくて。暑いし・・・・・・」
「あはは・・・・・・・・。」
友人を一人残して、木陰で休もうと歩いていった先に、白髪で眼鏡を掛けたおじいさんに会ったそうだ。
杖を立てたまま、一人、木の根元に小さく座っていた姿が気になって、思わず声を掛けてしまった、と。
『暑いですね。』というと、老人は、『ああ、暑いね。』と返してきた。
大粒の汗が額を流れているのに何も飲み物を持っていなかった老人に、手にしていた水のペットボトルを差し出した。
『どうぞ。まだ、口を付けてないから。』
『ああ、ありがとう。でも、いいんだよ、今、丁度、午後2時34分・・・・・・。』
「・・・・・・意味がわからなくてさ。」
話を聞きながら用意した、麦茶のグラスを私の手から受け取ったカオルは、一口飲んでからそう言った。
もう一口飲んでから、そのグラスを目の高さにまで持ってきて、冷たい雫を張り付かせたグラスの奥を覗き込むようにして。
「俺が黙ってたら、じいさんが勝手に喋りだしたんだ。どうせ暇だし相手になろうかと思って隣に座って・・・・・・・・」
「うん。」
「そこで聞いた。『65年目の夏』の話。」
「え?65年目?って・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・原爆投下の年から、今年で65年目・・・・・・・・」
『・・・・65年前、私はねぇ、広島にいたんですよ。 両親がね、広島出身でねぇ。上に姉2人、下に弟が1人おりました。
私は14歳で、「学徒動員」でとある工場へ毎日行っておりました。あの日も暑くてねぇ・・・・仕事はきつかったが、仲の良かった友人といつも励まし合いながら通ったものですよ。
朝8時の朝礼があったんです。私と友人は工場の前の広場であった朝礼に出席して、10分ほどで終わったので私が先に立って工場の建物内に戻ろうとしました。玄関に足を踏み入れた時、外で「落下傘じゃ~」と声がしまして。友人が振り返って「なんじゃろ?」と言いながら少し後ろに下がったんです。その時でした。空に雷が落ちたようにピカッ!!と光りましてね・・・・・ド~ン!と身体が揺れて私は気を失ったようでした。ようでした・・・・というのは、次に目を開けたら夜だったからなんですよ。暗いはずの空が真っ赤に染まっていました。そこらじゅうが真っ赤に燃えていました・・・・・・・・・。
私は建物の瓦礫の中にいたようでした。力を振り絞って這い出そうとしても体中が痛くて。
「助けて~!」と何度か叫んだら、誰かが私の手を握ってくれました。その手をしっかり掴んで何とか瓦礫の中を這い出ることが出来たんです。私は無我夢中でその手の主に礼を言おうと見上げて・・・・・・愕然としたんです。だってね、目の前には髪が焼け焦げて全身火傷で火脹れした、友人がいたんですから。
驚いて叫ぼうとしたのに声が出ませんでした。
握っていた手を離したら、ズルリと皮が剥けてしまいました。
私が泣き出すと、友人は、こう言いました。
「良かったな・・・・お前が先に行ってて良かったな・・・・・お前は家に帰れるけん。」
よくよく見たら、友人の両足は炭のように真っ黒な棒のようになっていました。
友人がそう言ったわけがわかりました。私が、「お前をおぶっていくけぇ!」と言いましたら友人は真っ黒な顔でこちらに向けて笑ったように見えました。「水・・・・・」と言ったので、慌てて水を探しに行きました。周りは友人以上にひどい有様の人とは思えない人形のようなものが転がっているばかりで、同じものが防火水槽にも河縁にも浮いているのです。
私は泣きながら友人の下へ戻りました。友人は虫の息でした。私が「飲める水はどこにもないんじゃあ。」と言うと、友人は私に手に握っていた懐中時計を手渡してきました。
「俺がこの時間に死んだいうことを家族に伝えておくれ」・・・・・・・』
「・・・・・・じいさんの話では、その友人はその時計を大事にしていていつもお守り袋に入れて服の下に入れてたそうなんだ。奇跡的に爆弾の衝撃からも逃れてまだ動いていた。じいさんが時計で時間を見たのが・・・・・・・」
「え?もしかして午後2時34分?夜じゃなかったの?」
「ああ。周囲の建物が倒壊してて陰になってたのと、その時丁度、『黒い雨』が降っていたから、夜と勘違いした。」
「黒い、雨・・・・・」
「原爆の影響で放射能をたっぷり含んだ雨、さ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・おじいさんの話では、その友人は、10分後に息をひきとったそうだ。その間もうわごとのように「水、水・・・・・」といい続けていたという。
「じいさんは、その友達に水を飲ませてやれなかったことを、とても悔やんでいるそうだ。だから毎年、友人のその時の気持ちを忘れない為に、自分も10分間水を我慢する。そして、黙祷をする。」
老人がカオルに全てを話し終えたときにはゆうに15分は経過してしまっていたという。老人は時計を見て、「おや、いけない。」と言い、脇にあった鞄からよく冷えた水とビールを取り出した。
『気を遣わせてすまなかったね、お若いの。ちゃ~んと、持ってはいたんだよ。ただ、あの10分間だけはダメなんだ。』
そう言って、老人はペットボトルの水を目の前の赤い土に勢い良く撒いた。
『さぁ、友よ!!今年も思い存分、飲んでおくれっ!!』
そして再び腰を下ろし、缶ビールの口を開けると天に掲げる。
『私は今年も生きているぞっ!!これも君のおかげだ!!ありがとうっ!!』
TVの向こうでは式典が終盤を迎えていた。
子供が平和への誓いを述べている。
「・・・・・・・『俺にも祈らせてください。』って言ったんだ。」
「うん・・・・・・・。」
「そしたら、『君はこの基地の人間かい?』って聞いてきて、『違います』って答えたら、じいさんは『良かった』って。」
「え・・・・どうして・・・・・・」
「『この航空ショーを見に来る人は、みんなこれをカッコイイと思っている。見せている自衛隊員もカッコイイと思っている。確かに素晴らしいが、この素晴らしい技術はもし戦争が始まったら人を殺すために使われる技術なのだろうか。友のような悲劇を再び繰り返すことになるのだろうか。それは、悲しい。』」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「『君のように私の話を聞いて一緒に祈らせて欲しいと言ってくれる若者が、戦争になったら上司の命令で結局人を殺してしまうのだろうか、あんな恐ろしい爆弾を再び落としてしまうのだろうか。そんな時、私がこの日、こうした語った話さえも忘れてしまうのだろうか・・・・・・』」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「俺は・・・・・・その時、『そんなことはない。』って言えなかったんだ。戦争は65年前に終わったけど、一般社会にはまだ一部に絶対的な上下関係というのは存在している。俺がこれから就く仕事だってそうだろ?パイロットは管制官の命令に従うんであって、もしも何も知らされずに爆撃機に搭乗命令が出て、何も知らされずに『搭載物資を目標に向かって投下しろ』とか言われたらきっとやってしまう。」
「そんな!だって・・・・・・・・・!」
「組織の縦の世界というものは、そういうもので、個々の考えは打ち消される。・・・・戦争はその代表的な例だな。人を殺すことを国の為だから良いことだ、と教える。殺した相手にも自分のように家族や友人がいるのだとは考えない。実際、自分が遭ってから気付くんだ。『なんて愚かなことをしてしまったんだろう』」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・じいさんが、言うんだ。『後で悲しむのは下っ端の人間ばかりでね。上の人間はとにかく頂点に立ちたい、ということばかり考えているから戦争をしたり、爆弾を作ったりするんだよ。・・・・・子供のような喧嘩に、周りが巻き込まれる。しかし、それに同調する者もいる。私はねぇ、時々わからなくなるんだよ。人は何故、争うのかねぇ。感情があるからかねぇ。そんな感情などある人間なんて、この緑豊かな地球には、いらないのかねぇ。』」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「『そう思い始めた頃、8月6日が来る。毎年、その日にいろんな人と出会う。そこでまた気付かされるのだよ。「ああ、まだ人は捨てたものじゃないな。」とね。例えば、こうして、君のような若者に会うとか、ね。』」
「あ・・・・・でも、あなたがおじいさんに会ったのは、先週なんでしょう?」
「毎年、この日は、この式典に出るから、友人の為の儀式は一週間前なんだそうだ。」
「どうして一週間前なのかしら?」
「その日は、友人の誕生日だそうだ。」
命日は、その日同じように命を失った、全ての人々の為に。
だから、君だけを偲ぶ日は、君が生まれた日にしよう。
そうすれば、双方、一生忘れないだろう。
君が生を受けた日も、生を終えた日も。
思えば君は、15歳になったばかりだったんだなぁ・・・・・・・・。
TV画面の向こうで、一斉に沢山の鳩が飛び立った。
カメラが青い空を飛んでいく鳩の群れを追っていく。
鳩は、平和の象徴・・・・・・・・・・・・・・・・・。
閉会のアナウンスが流れた頃、カオルが立ち上がった。
振り返って。
「じゃ、行くか。」
「・・・・・・・・え?どこに?」
「どこにって・・・・・・映画に行くんじゃなかったのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・忘れてた。
っていうか、こんな話されて、どうしてそんなに飄々としてるの!?
「・・・・・楽しいと思える今を壊さないようにする為には、自分の意思をしっかり持ってそれを表出することが大事だと思うんだ。」
「そうね・・・・・・。」
「でも俺はまだ学生で、知識も技術もないから出来ることと言えば!」
そう言って、彼はポン!と私の肩を叩いた。そして玄関まで誘導して、再び振り返る。
「駅前、さっき、見掛けたんだ。戦争反対の署名運動やってたから、一筆書いていこうかな、ってね。」
「そうね!!」
私は、アメリカ生まれ。このおばあちゃんの国をボロボロにした、元凶の国の生まれだ。
でも、カオルは言った。この日本だって、他国の人間を強制連行したり、侵略の為に沢山の人を殺した。アメリカも日本もどちらも悪くて、そして、世代が移った今に至っては、どちらのせいでもない。
どちらのせいでもないのに、いまだに「戦争」という言葉は消えない。
「次世代を担う若者」と言われる私達に、何が出来るんだろうと考える。
こんなちっぽけな自分には関係のないことなのだ、と割り切れなくなる。
だって、こうして好きな人と一緒にいられるのも、ここが戦場じゃなかったから。
ただ、それだけの話。
もし、今、アメリカと日本が戦争を始めたら、この日常はなくなる・・・・・・・。
「・・・・・ねぇ、カオル。この先、戦争はないと思う?国同士誤魔化しながらも平和でいられると思う?何十年後、何百年後・・・・・」
「無理だな。」
・・・・・・・・・・・・・・即答!?
「先進国が戦場になってないだけであって、数年前まで実際戦争やってたんだからな。アメリカも日本も他所の国を犠牲にして戦いたがる。将来的にまた繰り返さないとは言えない。俺たち一般人には見えない、政情の裏、っていうのは存在してるんだから。」
・・・・・・・・・・・・・・あなたって、FBIか、CIA!?
「それは数年後、数十年後かもしれないし・・・・・・数百年後、人類が宇宙に出てからの話かもしれない。」
「え!?宇宙!??」
「そう。人間はまだ宇宙人には遭遇してないと言われてるがな。もし、将来、宇宙人に遭遇したら今度はそっちに敵意を向けるぞ。」
もうっ!!SF映画の見過ぎっ!!
「ないとは言えないだろう。多分俺たちが大往生した後の話だろうがな。・・・・・・・・だけど、そうなったとしても。・・・・・・・人間は生き残るだろうな。」
「・・・・・何を根拠に?映画みたいにハッピーエンドとは限らないんだから。」
「それが人間の本能だから。だから、戦争はなくならない・・・・・・・。」
・・・・・・・・・願いは、「理想」。
現実は、もっと難しくて複雑なのかもしれない。
でも、もし、叶わなかったとしても。
「・・・・・・・・でも、祈ってみてもいいかな。」
「何を?」
『戦うことのない、世の中でありますように。』
未来に私の血を継ぐ、子供たちも。
同じことを思ってくれるといいなぁ・・・・・・・・・・。
外は、今日も暑かった。
日傘をさしたら、カオルが肩を組んできた。
・・・・・・傘の中に入りたかったから・・・・・
「暑いじゃない!もうっ!!」
「俺だけ炎天下の中を歩けとは冷たい女だな。」
「じゃあ、この傘貸してあげるわ?」
「・・・・・・・・俺に、このフリルやレースの傘をさせ、と?」
・・・・・・・だって。まったくもう。
だから、提案してみた。
「ね、カオル。今日の映画、今日じゃなきゃダメ?」
「あ?」
「映画、今度にして、クーラーの利いてる私の部屋で、広島原爆の特番でも見る?だって、もうモーニングショー間に合わないし・・・・・・・」
話が終わらないうちに、いきなりキスで襲ってきた。
ちょっとぉ!通りすがりのおばさんに溜息つかれたじゃなぁ~い!「今時の若者は暑さにヤラれて恥ずかしげもなく・・・」とか言われちゃうでしょっ!!
そのクセ。
「前言撤回。」
「え?何だっけ?」
「『冷たい女』。」
「あ~~~~!!そうだっ!ヒドイ!!」
「だから撤回。」
「へぇ、つまり?」
「・・・・・・・熱い女?」
「あのね~!!」
数mの距離を引き返しながら、楽しいやりとりをした。
私たちは笑ってた。
今が楽しいって幸せだな・・・・・・・・・・・・。
「お前は、いい女!・・・・・・・・・俺が選んだんだからな。」・・・・・・・だって!
思いっきり照れてたから、聞こえないふりしてあげちゃった!
・・・・・・・・・今日は、8月6日。
カオルは、おじいさんと別れる時に、こんな約束をしたという。
『8月6日は、少しだけ広島を思い出すこと。』
少しじゃなかったね。丸一日、私たち、いろんな話をしたもの。
これからのこと・・・・・・・・・・・・。
そして、今、私は、「この人で良かったなぁ」って思いながら、これを書いている。
彼の広い背中を見ながら。
ずっと幸せだといいなぁ、って、思いながら・・・・・・・・・・・・・・・・。
駅前の署名には、夕食食べに出た帰りに行った。
そこにいた、元軍人だったという老人としっかり握手をしていたカオルの姿が、まだ目に焼きついている。
2010.8.8
______________________
eriy
カオルが聞いたおじいさんの話は、実際にお聞きした被爆者の方の話を少し軸にした管理人のオリジナルです。ただ、こんな話は沢山あるだろうな、と思います。
そして航空祭の基地は、茨城県つくば市のちょっと上にある「百里基地」がモデルです。多分その時期に航空祭を開催してるはず。単純にショーを楽しむ方と、昔を思い出して来る方といるだろうな~と勝手に舞台にさせていただきました。
こんな惨いことを招くのは、人間のせいではなく、戦争のせいだと思います。
2010.8.9
縁あって、8月6日は炎天下の広島市にいました。そうです!!人生初の広島上陸!人生初で平和祈念式典を見てきました。(参加・・・っていうよりは、端から見てただけです。すっごい人なので)
で、たまたま被爆者のお話を聞くことが出来ました。今まで、のうのうと暮らしてましたけどね、やっぱ、色々考えさせられます。ただ話を聞いただけ・・・ではもったいないので、せっかくだからこの2人にも考えていただきました。
いつもの日記の「倍」の長さがありますよぉ~~~!覚悟して読んでみてください。
ちなみに状況的に現代版カオルナの話になりました。
カオル=19歳。パイロット養成の航空学校・専門学校生。
ルナ=19歳。高校卒業後、花屋に就職。祖母が日本人でクォーター。生まれはアメリカ。
2人は中学からの同級生。・・・という勝手な設定。
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ルナの日記 「65回目の夏の日」
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今年の夏は、とても暑い。
私が毎日相手にする花達は、暑さに弱い。
でも彼らに太陽の光は不可欠だから、鉢植えの花は何度もお店の外と中を出し入れする。
その作業がとても辛い・・・・・・・・、
私が毎年思う、「夏」の感想は、ただ、「暑い」ということだけ。
夏バテせずに、いかに日々を元気に過ごすか、お客様の前で笑顔でいられるように。
それは当たり前のことだし、誰もがそうだって思い込んでいた。
目の前のおじさんも、日傘をさしたおばあさんも、サングラスの若者も。
そして、時々航空学校の寄宿舎から帰った時に、ブラリと顔を出してくれる、・・・・・・私の大切な恋人も。
夕べ遅くにカオルからメールが入った。
『週末、外泊届け出したから映画に行くか?』という誘いのメール。
いつものことだけど突然なんだから。
でも、バイトの葛城君が勤務を代わってくれたから、無事に今日、会えたって訳。
観たい映画が2本もあるっていうから、1本目はモーニングショーにした。すぐに出れる準備をしていたのに、彼は私をアパートに迎えにくるなり、こんなことを言ったの。
「・・・・・・・ちょっとTV付けていいか?」
珍しい、とっさにそう思った。
彼はTVより音楽やラジオを聴く方だし。
でも、見たかった番組の録画を忘れたとか、そんな切羽詰まったような顔じゃないし。(というか、焦った顔する人じゃないけど)
「ええ、もちろん。何見るの?」
「ああ・・・・・ちょっと・・・・・・・」
そう言って、TVの前に座ってから目を伏せて腕時計を見る。
私もつられて部屋の壁にある時計を見る。
午前8時13分・・・・・・・・・・・。
時間を確かめている間に、彼がTVをつけた。そして慌しくチャンネルを動かして止めた先は。
「○HK?」
「ああ。」
「これって・・・・・・・・」
「広島の原爆祈念式典。」
「あ・・・・・・・・・・・」
今日・・・・・・・・・・8月6日だ。
そう思った時TVから、こんなアナウンスが流れてきた。
『・・・・・・只今より、1分間の黙祷に入ります。皆さん、ご起立ください。・・・・・黙祷。』
再び壁の時計を見上げる。
午前8時15分。
画面の向こうでは老若男女、全ての人が頭を垂れて目を閉じていた。
そして、それを見ていたはずのカオルを振り返ると。
・・・・・・・・・・彼も目を閉じていた。
その姿に驚いて見入ってしまう。
部屋には、何故か静かで清らかな空気が流れて。
TVから響く、等間隔の鐘の音だけ。
物悲しく響く、鐘の音だけ・・・・・・・・・。
やがて、『黙祷終了』の声がしたと同時に、カオルも目を開いた。
そして私と目が合うと、照れたように小さく笑った。
「いったいどうしたの?・・・・・・・今までこんなことしたことなかったわよね?」
「まあね。8月6日は広島、9日は長崎の原爆の日っていうのは知ってたけど。」
「うん、私も。社会科で習うものね。祈念式典もたまに見たりはしたけど・・・・・・もしかして、親戚にでも原爆関係者がいたの?」
「いや。」
私と会話しながらも、カオルは画面から目を離さない。
画面の向こうでは、どこかのお偉いさんの挨拶が始まっていた。
「じゃ、どうして?」
「・・・・・・学校の同じ学科をとってる中に、宮野、ってヤツがいて。」
「うん。」
「そいつがミリタリーマニアで、あちこちの米軍基地や自衛隊基地を見て歩くのが趣味なんだ。で、先週ソイツの誘いで茨城の百里基地っていうところの航空祭に付き合った。」
「航空祭?あ、自衛隊のジェットが飛ぶのを見れるんでしょう?」
「そう。」
人付き合いは苦手だ、とか言いながら、最近は結構付き合いはいいみたいね。
良し良し!!
「そうなんだ!面白かった?」
「・・・・・・面白かったが、あいつがマニアなところまで見学したがるから付き合いきれなくて。暑いし・・・・・・」
「あはは・・・・・・・・。」
友人を一人残して、木陰で休もうと歩いていった先に、白髪で眼鏡を掛けたおじいさんに会ったそうだ。
杖を立てたまま、一人、木の根元に小さく座っていた姿が気になって、思わず声を掛けてしまった、と。
『暑いですね。』というと、老人は、『ああ、暑いね。』と返してきた。
大粒の汗が額を流れているのに何も飲み物を持っていなかった老人に、手にしていた水のペットボトルを差し出した。
『どうぞ。まだ、口を付けてないから。』
『ああ、ありがとう。でも、いいんだよ、今、丁度、午後2時34分・・・・・・。』
「・・・・・・意味がわからなくてさ。」
話を聞きながら用意した、麦茶のグラスを私の手から受け取ったカオルは、一口飲んでからそう言った。
もう一口飲んでから、そのグラスを目の高さにまで持ってきて、冷たい雫を張り付かせたグラスの奥を覗き込むようにして。
「俺が黙ってたら、じいさんが勝手に喋りだしたんだ。どうせ暇だし相手になろうかと思って隣に座って・・・・・・・・」
「うん。」
「そこで聞いた。『65年目の夏』の話。」
「え?65年目?って・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・原爆投下の年から、今年で65年目・・・・・・・・」
『・・・・65年前、私はねぇ、広島にいたんですよ。 両親がね、広島出身でねぇ。上に姉2人、下に弟が1人おりました。
私は14歳で、「学徒動員」でとある工場へ毎日行っておりました。あの日も暑くてねぇ・・・・仕事はきつかったが、仲の良かった友人といつも励まし合いながら通ったものですよ。
朝8時の朝礼があったんです。私と友人は工場の前の広場であった朝礼に出席して、10分ほどで終わったので私が先に立って工場の建物内に戻ろうとしました。玄関に足を踏み入れた時、外で「落下傘じゃ~」と声がしまして。友人が振り返って「なんじゃろ?」と言いながら少し後ろに下がったんです。その時でした。空に雷が落ちたようにピカッ!!と光りましてね・・・・・ド~ン!と身体が揺れて私は気を失ったようでした。ようでした・・・・というのは、次に目を開けたら夜だったからなんですよ。暗いはずの空が真っ赤に染まっていました。そこらじゅうが真っ赤に燃えていました・・・・・・・・・。
私は建物の瓦礫の中にいたようでした。力を振り絞って這い出そうとしても体中が痛くて。
「助けて~!」と何度か叫んだら、誰かが私の手を握ってくれました。その手をしっかり掴んで何とか瓦礫の中を這い出ることが出来たんです。私は無我夢中でその手の主に礼を言おうと見上げて・・・・・・愕然としたんです。だってね、目の前には髪が焼け焦げて全身火傷で火脹れした、友人がいたんですから。
驚いて叫ぼうとしたのに声が出ませんでした。
握っていた手を離したら、ズルリと皮が剥けてしまいました。
私が泣き出すと、友人は、こう言いました。
「良かったな・・・・お前が先に行ってて良かったな・・・・・お前は家に帰れるけん。」
よくよく見たら、友人の両足は炭のように真っ黒な棒のようになっていました。
友人がそう言ったわけがわかりました。私が、「お前をおぶっていくけぇ!」と言いましたら友人は真っ黒な顔でこちらに向けて笑ったように見えました。「水・・・・・」と言ったので、慌てて水を探しに行きました。周りは友人以上にひどい有様の人とは思えない人形のようなものが転がっているばかりで、同じものが防火水槽にも河縁にも浮いているのです。
私は泣きながら友人の下へ戻りました。友人は虫の息でした。私が「飲める水はどこにもないんじゃあ。」と言うと、友人は私に手に握っていた懐中時計を手渡してきました。
「俺がこの時間に死んだいうことを家族に伝えておくれ」・・・・・・・』
「・・・・・・じいさんの話では、その友人はその時計を大事にしていていつもお守り袋に入れて服の下に入れてたそうなんだ。奇跡的に爆弾の衝撃からも逃れてまだ動いていた。じいさんが時計で時間を見たのが・・・・・・・」
「え?もしかして午後2時34分?夜じゃなかったの?」
「ああ。周囲の建物が倒壊してて陰になってたのと、その時丁度、『黒い雨』が降っていたから、夜と勘違いした。」
「黒い、雨・・・・・」
「原爆の影響で放射能をたっぷり含んだ雨、さ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・おじいさんの話では、その友人は、10分後に息をひきとったそうだ。その間もうわごとのように「水、水・・・・・」といい続けていたという。
「じいさんは、その友達に水を飲ませてやれなかったことを、とても悔やんでいるそうだ。だから毎年、友人のその時の気持ちを忘れない為に、自分も10分間水を我慢する。そして、黙祷をする。」
老人がカオルに全てを話し終えたときにはゆうに15分は経過してしまっていたという。老人は時計を見て、「おや、いけない。」と言い、脇にあった鞄からよく冷えた水とビールを取り出した。
『気を遣わせてすまなかったね、お若いの。ちゃ~んと、持ってはいたんだよ。ただ、あの10分間だけはダメなんだ。』
そう言って、老人はペットボトルの水を目の前の赤い土に勢い良く撒いた。
『さぁ、友よ!!今年も思い存分、飲んでおくれっ!!』
そして再び腰を下ろし、缶ビールの口を開けると天に掲げる。
『私は今年も生きているぞっ!!これも君のおかげだ!!ありがとうっ!!』
TVの向こうでは式典が終盤を迎えていた。
子供が平和への誓いを述べている。
「・・・・・・・『俺にも祈らせてください。』って言ったんだ。」
「うん・・・・・・・。」
「そしたら、『君はこの基地の人間かい?』って聞いてきて、『違います』って答えたら、じいさんは『良かった』って。」
「え・・・・どうして・・・・・・」
「『この航空ショーを見に来る人は、みんなこれをカッコイイと思っている。見せている自衛隊員もカッコイイと思っている。確かに素晴らしいが、この素晴らしい技術はもし戦争が始まったら人を殺すために使われる技術なのだろうか。友のような悲劇を再び繰り返すことになるのだろうか。それは、悲しい。』」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「『君のように私の話を聞いて一緒に祈らせて欲しいと言ってくれる若者が、戦争になったら上司の命令で結局人を殺してしまうのだろうか、あんな恐ろしい爆弾を再び落としてしまうのだろうか。そんな時、私がこの日、こうした語った話さえも忘れてしまうのだろうか・・・・・・』」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「俺は・・・・・・その時、『そんなことはない。』って言えなかったんだ。戦争は65年前に終わったけど、一般社会にはまだ一部に絶対的な上下関係というのは存在している。俺がこれから就く仕事だってそうだろ?パイロットは管制官の命令に従うんであって、もしも何も知らされずに爆撃機に搭乗命令が出て、何も知らされずに『搭載物資を目標に向かって投下しろ』とか言われたらきっとやってしまう。」
「そんな!だって・・・・・・・・・!」
「組織の縦の世界というものは、そういうもので、個々の考えは打ち消される。・・・・戦争はその代表的な例だな。人を殺すことを国の為だから良いことだ、と教える。殺した相手にも自分のように家族や友人がいるのだとは考えない。実際、自分が遭ってから気付くんだ。『なんて愚かなことをしてしまったんだろう』」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・じいさんが、言うんだ。『後で悲しむのは下っ端の人間ばかりでね。上の人間はとにかく頂点に立ちたい、ということばかり考えているから戦争をしたり、爆弾を作ったりするんだよ。・・・・・子供のような喧嘩に、周りが巻き込まれる。しかし、それに同調する者もいる。私はねぇ、時々わからなくなるんだよ。人は何故、争うのかねぇ。感情があるからかねぇ。そんな感情などある人間なんて、この緑豊かな地球には、いらないのかねぇ。』」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「『そう思い始めた頃、8月6日が来る。毎年、その日にいろんな人と出会う。そこでまた気付かされるのだよ。「ああ、まだ人は捨てたものじゃないな。」とね。例えば、こうして、君のような若者に会うとか、ね。』」
「あ・・・・・でも、あなたがおじいさんに会ったのは、先週なんでしょう?」
「毎年、この日は、この式典に出るから、友人の為の儀式は一週間前なんだそうだ。」
「どうして一週間前なのかしら?」
「その日は、友人の誕生日だそうだ。」
命日は、その日同じように命を失った、全ての人々の為に。
だから、君だけを偲ぶ日は、君が生まれた日にしよう。
そうすれば、双方、一生忘れないだろう。
君が生を受けた日も、生を終えた日も。
思えば君は、15歳になったばかりだったんだなぁ・・・・・・・・。
TV画面の向こうで、一斉に沢山の鳩が飛び立った。
カメラが青い空を飛んでいく鳩の群れを追っていく。
鳩は、平和の象徴・・・・・・・・・・・・・・・・・。
閉会のアナウンスが流れた頃、カオルが立ち上がった。
振り返って。
「じゃ、行くか。」
「・・・・・・・・え?どこに?」
「どこにって・・・・・・映画に行くんじゃなかったのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・忘れてた。
っていうか、こんな話されて、どうしてそんなに飄々としてるの!?
「・・・・・楽しいと思える今を壊さないようにする為には、自分の意思をしっかり持ってそれを表出することが大事だと思うんだ。」
「そうね・・・・・・。」
「でも俺はまだ学生で、知識も技術もないから出来ることと言えば!」
そう言って、彼はポン!と私の肩を叩いた。そして玄関まで誘導して、再び振り返る。
「駅前、さっき、見掛けたんだ。戦争反対の署名運動やってたから、一筆書いていこうかな、ってね。」
「そうね!!」
私は、アメリカ生まれ。このおばあちゃんの国をボロボロにした、元凶の国の生まれだ。
でも、カオルは言った。この日本だって、他国の人間を強制連行したり、侵略の為に沢山の人を殺した。アメリカも日本もどちらも悪くて、そして、世代が移った今に至っては、どちらのせいでもない。
どちらのせいでもないのに、いまだに「戦争」という言葉は消えない。
「次世代を担う若者」と言われる私達に、何が出来るんだろうと考える。
こんなちっぽけな自分には関係のないことなのだ、と割り切れなくなる。
だって、こうして好きな人と一緒にいられるのも、ここが戦場じゃなかったから。
ただ、それだけの話。
もし、今、アメリカと日本が戦争を始めたら、この日常はなくなる・・・・・・・。
「・・・・・ねぇ、カオル。この先、戦争はないと思う?国同士誤魔化しながらも平和でいられると思う?何十年後、何百年後・・・・・」
「無理だな。」
・・・・・・・・・・・・・・即答!?
「先進国が戦場になってないだけであって、数年前まで実際戦争やってたんだからな。アメリカも日本も他所の国を犠牲にして戦いたがる。将来的にまた繰り返さないとは言えない。俺たち一般人には見えない、政情の裏、っていうのは存在してるんだから。」
・・・・・・・・・・・・・・あなたって、FBIか、CIA!?
「それは数年後、数十年後かもしれないし・・・・・・数百年後、人類が宇宙に出てからの話かもしれない。」
「え!?宇宙!??」
「そう。人間はまだ宇宙人には遭遇してないと言われてるがな。もし、将来、宇宙人に遭遇したら今度はそっちに敵意を向けるぞ。」
もうっ!!SF映画の見過ぎっ!!
「ないとは言えないだろう。多分俺たちが大往生した後の話だろうがな。・・・・・・・・だけど、そうなったとしても。・・・・・・・人間は生き残るだろうな。」
「・・・・・何を根拠に?映画みたいにハッピーエンドとは限らないんだから。」
「それが人間の本能だから。だから、戦争はなくならない・・・・・・・。」
・・・・・・・・・願いは、「理想」。
現実は、もっと難しくて複雑なのかもしれない。
でも、もし、叶わなかったとしても。
「・・・・・・・・でも、祈ってみてもいいかな。」
「何を?」
『戦うことのない、世の中でありますように。』
未来に私の血を継ぐ、子供たちも。
同じことを思ってくれるといいなぁ・・・・・・・・・・。
外は、今日も暑かった。
日傘をさしたら、カオルが肩を組んできた。
・・・・・・傘の中に入りたかったから・・・・・
「暑いじゃない!もうっ!!」
「俺だけ炎天下の中を歩けとは冷たい女だな。」
「じゃあ、この傘貸してあげるわ?」
「・・・・・・・・俺に、このフリルやレースの傘をさせ、と?」
・・・・・・・だって。まったくもう。
だから、提案してみた。
「ね、カオル。今日の映画、今日じゃなきゃダメ?」
「あ?」
「映画、今度にして、クーラーの利いてる私の部屋で、広島原爆の特番でも見る?だって、もうモーニングショー間に合わないし・・・・・・・」
話が終わらないうちに、いきなりキスで襲ってきた。
ちょっとぉ!通りすがりのおばさんに溜息つかれたじゃなぁ~い!「今時の若者は暑さにヤラれて恥ずかしげもなく・・・」とか言われちゃうでしょっ!!
そのクセ。
「前言撤回。」
「え?何だっけ?」
「『冷たい女』。」
「あ~~~~!!そうだっ!ヒドイ!!」
「だから撤回。」
「へぇ、つまり?」
「・・・・・・・熱い女?」
「あのね~!!」
数mの距離を引き返しながら、楽しいやりとりをした。
私たちは笑ってた。
今が楽しいって幸せだな・・・・・・・・・・・・。
「お前は、いい女!・・・・・・・・・俺が選んだんだからな。」・・・・・・・だって!
思いっきり照れてたから、聞こえないふりしてあげちゃった!
・・・・・・・・・今日は、8月6日。
カオルは、おじいさんと別れる時に、こんな約束をしたという。
『8月6日は、少しだけ広島を思い出すこと。』
少しじゃなかったね。丸一日、私たち、いろんな話をしたもの。
これからのこと・・・・・・・・・・・・。
そして、今、私は、「この人で良かったなぁ」って思いながら、これを書いている。
彼の広い背中を見ながら。
ずっと幸せだといいなぁ、って、思いながら・・・・・・・・・・・・・・・・。
駅前の署名には、夕食食べに出た帰りに行った。
そこにいた、元軍人だったという老人としっかり握手をしていたカオルの姿が、まだ目に焼きついている。
2010.8.8
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eriy
カオルが聞いたおじいさんの話は、実際にお聞きした被爆者の方の話を少し軸にした管理人のオリジナルです。ただ、こんな話は沢山あるだろうな、と思います。
そして航空祭の基地は、茨城県つくば市のちょっと上にある「百里基地」がモデルです。多分その時期に航空祭を開催してるはず。単純にショーを楽しむ方と、昔を思い出して来る方といるだろうな~と勝手に舞台にさせていただきました。
こんな惨いことを招くのは、人間のせいではなく、戦争のせいだと思います。
2010.8.9
私は今、自分で小説を作っています。主にカオルナ小説で、3個くらい書きました。
今書いているのは、「カオルナ小説(チャコも居ます・・)ディズニー編」です。ちゃっかりホテルにまで泊まっていて、1泊2日のランド&シーを満喫する話です。結構長くて、なかなか終わりません・・・。
私も、このディズニーカオルナ小説が書き終わったら、戦争の話を書こうとしていました。でも、あまりイメージが浮かばなくて、8月15日にやる終戦ドラマを見てからにしようと思っていたところです。もしよかったら、参考にさせてください。戦争について、深く考えることができました。
なにかサヴァイヴ小説を書くときのアドバイスなんかがあれば(前回の更新が、すごく助かったので・・。)教えてください。
NHKの平和式典、私もリアルタイムで見て勿論、黙祷も捧げました。
カオルと同じことを同じ時間に\(^^)/
今回の平和式典は泣きました。
おじいさんの話。やはり被爆者の方、みんな原爆投下の日にはいろんなドラマがあったんでしょうね。その友人とおじいさんの悲劇に涙腺が緩みました。とてもためになる文章読めて良かったです!
私は車でラジオ聞きました。
子供のスピーチだけだけど超泣ける!
私も行きたかった・・・・
>chihiro様
いつもありがとうございます。
あら~(オバサン風)ご褒美、甘えちゃっていいんですか??調子のいいこと言ってゴメンなさい。もっと時間が出来たらまたご提案致します♪
鯖小説書いてるんですか!素晴らしい!!
こんな駄文で参考になるならどうぞ、どうぞ!
アドバイスですか、う~ん・・・私も行き当たりばったりで書いてますからね~二次小説なんですから超自由でいいと思いますよ?よくキャラのイメージがどうこう・・・とかありますがね。イメージ持つのは個々の自由ですから縛られることもないし、気にすることもないと思います。二次小説万歳ですよ~
え~と、それから最後のコメについてですが・・・他コメ主さんへの質問のようですが、私からはノーコメントで。どうしても気になるならサイト主様へメールなどしてはいかがでしょうか?
>留奈様
お久しぶりです~コメありがとうございます~
ま~平和式典見ながら黙祷・・・感動でござんス。私?私は、実は半分熱中症でしたので(笑)
いつもTVのニュースでチラとしか見てなかったので例年との違いはわからなかったのですが、確かに感動しました。もしかしてそこら中にカメラがあったし映ってたかも?(笑)
被爆者の方の話にはかなりウルウルきました。軸になったこのお話は、話してくれたのは実はおばあさんだったのですが(笑)友人のことを話したところで言葉に詰まってらしたことが印象的です。65年経っても傷は癒えないものだなぁ~と思いました。
またのコメントお待ちしております!
>黎華様
おぉ~!お久しぶりです!
ええっ!広島地元っ!!そりゃあ、なんて殺人的な暑さのところに御住まいなんでしょう!(失礼な)
平和記念公園はかなりの人でしたが黙祷の時間だけシ~ンと静まり返って不思議な感覚でした。今、広島中が黙祷してるんだな~と実感した瞬間です。
またのコメントお待ちしております!