そ~いえば、世の中ゴールデン・ウィークとかいう傍迷惑な大型連休でしたね・・・・・・・ ええ、だってもう、カレンダー通りにいかない仕事なので「そんなの関係ねぇっ!(懐)」って感じですから。
それはそうと、デパートもスーパーもそこら中、『母の日』モードですな。
んで、久しぶりに書いてみました。アニメの中じゃ実際図れなかった「カオルの家族愛」です。だって、全然語ってなかったし。
でもさ~?超仲良さそうって感じでもなかったよね? 最終回の帰還時の絵を見たらガッチリハグ!とかじゃなくて父と握手、で終わってたし。
あ~ゆ~の見たら、想像逞しくなるよねぇ~ イイ学校通ってるんだから、カオルだってそれなりの家柄でそれなりの両親で、それなりにちょっと曲がって生きてきちゃったんじゃないのぉ~~??・・・・・とか。
でも、帰還後は少しくらい真っ直ぐになってて欲しいなぁ~ で、このサイトじゃ勝手にルナと結婚させちゃったから彼女と結婚後は更に真っ直ぐに更に丸くなってて欲しいよ。
そんな願いを込めて、無駄に長いカオルの日記をど~ぞ
太陽系標準歴5月3日:標準時間22:37 (カオル)
「カオル!おかえりなさいっ!!・・・・・・・・ふふふっ・・・・・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
艦長や副長との打ち合わせで遅くなった今夜。
ルナはきっと待っていてくれているだろうが、ソファでうたた寝しているか、ダイニングテーブルの上で伏せ寝してるか、どちらにしても目は開いていないだろうといつもの展開を想像していたのだが。
・・・・・・・プライベートルームの扉を開けた途端、かなりハイテンションな彼女の笑顔に飛びつかれた。
予想外な光景に、「ただいま」を返すのも忘れて一瞬身を引いて。
そのまま目に入ったソファにふんぞり返るペットロボットをつまみあげる。
「チャコッ!俺がいない間に飲ませるなっ!」
「はぁ~ん!?なんやてぇ~~?失礼なっ!」
「そうよっ!ホントに失礼っ!ルイの為にもお酒なんて飲みマセンッ!」
・・・・・・・・忘れてた。妊婦に酒は厳禁・・・・・・・・
「・・・・・ねぇ、私、そんなに変?」
寝室に入って着ていた白い規定ジャケットをルナに渡すと、彼女の拗ねたような表情。
思わず吹出してからとりあえず頭を撫でて謝った。
「悪かった。・・・・・・何かいいことでもあったのか?こんな夜中に随分嬉しそうだ。」
「そうっ!とっても素敵な話を聞いちゃったのっ!うっふふ・・・・・・私、こんな優しいあなたが旦那様で良かったわ~!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・?」
身に覚えがないのに褒められると、こんなにも居心地が悪くなるのか。
・・・・・・・・・・と、いうか、怖い。
こっちには覚えがないのだから、ルナが勝手に勘違いしているか、勝手に一人歩きしている噂を真に受けている可能性は十分だ。
「・・・・・・・・何の話だ?絶対に間違っていると思うから言ってみろ。お前が喜ぶようなことをした覚えは一切ないぞ?」
不審気にそう言い切ってみたが、彼女の笑顔は消えなかった。
自信たっぷりに攻め寄ってくる。
「そうね?私に対してじゃないもの。あなたは何気なくやったことかもしれないけど、沢山の人を幸せにしてるの。私もその一人ってことよ!」
「全く意味不明だが・・・・・・・・・」
彼女はこっちの反応を楽しんでいる様子で、更に嬉しそうに微笑むと腕を取り、コンピューターの前に誘導してきた。
既にメール画面が起動してある。
「誰かからメールか?」
「そうっ!・・・・・・ゴメンね?いつものように私宛だったから見ちゃった!でも、これは是非本人にも見せないと、って思って。」
『いつものように私宛』。・・・・・・・ということは・・・・・・・・。
「母か?」
遠くアストロノーツ・スペースコロニーに住む両親は、父からは滅多に来ないが母はよくルナとメールを交わしている。
内容は、今日は久しぶりに夫と喧嘩をしたとか、ランチにたまたま入った店が意外に美味しかったとか、どうでもいい内容から、真剣な料理レクチャーまで様々なのだが。
・・・・・・基本的に自分には関係ないから(ルナ曰く、「本当は息子に話したいに違いないのにっ!」だ、そうだが)、ほとんど見たことはない。
だが、今回は返信のタイミング的に一応思い当たることはあったにはあった。
「ああ、花が届いた報告だろう?わかった、と伝えておいてくれ。」
数日前に縁があって入った花屋で見掛けたブーケを母へのプレゼントで注文したのだった。
店先に『母の日』と3D表示があったのと、その店が副長の親戚の店らしく、彼に店の売上向上を迫られた、・・・・・・あまり感心出来ない理由の背景もあったので、そっけなくコンピューターの前から離れようとしたら。
「もうっ!カオルったら!」
一転、憤慨したルナに再び腕を引っ張られ引き戻された。
「ちゃんと見てったら!・・・・・・・ねぇ、あなた、母の日にお花を贈ったのって初めてだ、って言ってたわよね?」
「ああ。ご存知の通り、お前と母親が双子母娘になる前までは両親とはそりが合わなかったものでね。」
成り行きで『お花プレゼント』するハメになってしまった話はルナも知っていた。
彼女は彼女で毎年、ウチの両親には母の日はもちろん父の日や彼らの誕生日にまで、きっちりと贈り物をする徹底ぶりだったが、自分は連名はさせてもらっても改めて選んでまではしなかったのだ。
元々、そういうことは苦手でもあったし、今更・・・・・・という思いもある。
しかし、誕生日カードに一言を添える気はあっても、何故か母の日に花を贈ろうという思いは全く湧かなかったのも事実だった。
ルナに「どうして興味ないの?」と聞かれても返答に困るくらいに・・・・・・・・。
「ねぇ、本当に初めてだったの?昔のことは?」
「昔?」
「子供の頃に贈ったこととか・・・・・・・・」
「8歳から訓練学校に入れられてたんだぞ。そんなほのぼの経験なんてあるものか。」
「じゃあ、どうしてピンクのカーネーションにしたの?」
「え?」
ルナに言われて初めて気付く。
そういえば・・・・・・・店頭には赤のカーネーションが多く並んでいた。
店員が勧めてきたのも赤いカーネーションのブーケだった。
他に黄色や紫、白・・・・・・・。
『白がいいんじゃないか?清楚で・・・・』と言った副長に、『白は確か故人に贈るものですよ。』と自分は答えた。『そうか、それは失礼した、さすがは博学だ、よく知ってるな。』と副長に嫌味を言われ。
考えてみれば、「白いカーネーションは故人用」と知っていたのは何故だろう。
訓練学校の雑学か・・・・・・・?
いや。違う・・・・・・・・・・・・・・。
「ルナ、お前だ。」
「え?」
「お前と前に火星に行った時だ。」
「火星・・・・・・?あ、結婚前に行った旅行の?」
「お前の両親の墓に、挨拶に行った。その時、お前は花束を持っていったろう?」
「あ~・・・・・、そうだったわね。白いカーネーション。」
「ああ、その時だ・・・・・・・・」
あの時、墓前に手向けるにしては珍しい花の選択を不思議に思い、ルナに尋ねた。
彼女は両親の墓標から目を離さずに、深く微笑んで。
『だって、母の日が近いでしょ?』
お父さんには悪いけど、今回ばかりはお母さんへ、と彼女は白いカーネーションの花束を墓前にそっと供える。
『この花は、旧・地球時代の神様の涙なの。』
『涙・・・・・・・?』
『拷問されてはりつけにされた息子を悲しんで流した、赤い涙の跡に咲いた花。』
『赤い涙の跡に白い花?』
何も考えず素直に浮かんだ疑問を口にしたら、ルナはこちらを振り返って物憂げな表情を浮かべた。
『そうね、普通は赤いカーネーションなのかも。』
『なら・・・・・・・・・。』
『・・・・・・もう亡くなってる人には白いカーネーションを手向けるのよ。』
『・・・・・・・・・・っ・・』
・・・・・・彼女の母親は、彼女が6歳の時に亡くなった。
彼女がまだ母の日の意味さえも知らなかった頃。
ようやく本当に感謝する心を知った頃には。
もう・・・・・・・・・両親ともいなかったのかもしれない。
思わず目を逸したところで、彼女が優しく頬に触れてきた。
『あなたがそんな顔しないでよ。・・・・・・ほら、亡くなった人には偲ぶ色として白い花が多いでしょ?』
『ああ・・・・・・・・・。』
『私、赤いカーネーションも好きだけど、白いカーネーションも素敵だと思うの。』
『そうだな・・・・・・。』
『だって、知ってる?白いカーネーションの花言葉は、「尊敬」「純潔の愛」・・・・・・。』
亡くなってもなお、彼女は両親を尊敬し続けている。
愛し続けている。
長年、親不孝そのものだった自分にとって、彼女は眩しいくらいの存在だ。
そんな彼女が、言葉にはしなくてもいつも教えてくれる。
今からだって、まだ間に合う。
「尊敬」と「感謝」の心を・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・副長が白を勧めてきたんだが、お前がそう教えてくれたから白は断って・・・・・・・」
「ええ、確かにそう言ったけど。・・・・・・『普通は赤』って言ったのもその時じゃなかった?」
「・・・・・・・・・?そうだったか?」
「ピンクにした理由があるんでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・・そういえば。
注文した花束はピンクだった。
店員さえ赤を勧めてきたのに。何故・・・・・・・・・?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キレイだったから?」
自分でもよくわからずに、たっぷり考え込んだ後ポツリとそう答えると、ルナは堪えきれない様子で笑い出した。
「も~うっ、本気!?・・・・・・でも、私はあなたの『愛の直感』を信じるわ!」
「・・・・・・・・どういう意味だ?」
本当に意味不明で首を傾げたところへ、ルナがポンッと肩を叩いて。
またもや、ニッコリと微笑んで、言った。
「お母様からのメール、見てあげて?そうしたらきっと、あなたも思い出すわよ?」
【母からのメール】
『こんにちは、ルナさん。あなたもカオルも、変わらずお元気?
この前、カオルから私宛にピンクのカーネーションの花束が届いたのよ?もう・・・・ビックリでね?だって、人一倍照れ屋なのに、しかもあの子が花だなんて!珍しいでしょう?
てっきりあなたがカオルの名前で送ってくれたのかと思ったの。でも、あなたはいつも赤いカーネーションを選んでくれるから。
今回は、ピンク。それでね?これはやっぱり息子からかしら、って確信を持ったの。
私ね、昔あの子がとっても小さい頃・・・・・そうね、5歳くらいの時かしら。母の日にあの子が一輪の白いカーネーションを持って帰ってきたのよ。夫がそれを見て、「どこから盗んできたんだ!」って怒鳴ったわ。「盗んでない!」って言って泣き出したあの子に、私はどうしていいのかわからなくなって、思わずこう言ってしまったの。
「カオル、とっても嬉しいわ、ありがとう。でもね?白いカーネーションはもう亡くなったお母さんにあげるものなのよ。」
息子はとても驚いていた。そして、小さな声で謝ってきたの。私はね、その時わかっていなかった。その一言がどれだけ息子の心を傷付けたか。
だって、そうでしょう?小さな子どもに花の意味なんてわかるはずもない。花を贈ってくれたことに意味があるというのに。そして、その花は屋敷に出入りしていた花屋を手伝って手に入れた一輪だった、ということも後で知ったわ。
今回ね?このピンクのカーネーションを見て、思い出したの。確か、あの子はあの日の夜、ベッドに入る前にこう聞いてきた。
「本当はどんな色が良かったの?」
私は何気なく答えたのよ。
「そうねぇ、ピンクがいいわ。可愛らしい色だし、とても素敵な花言葉があるのよ?」
ルナさん、私ね・・・・・その後がどうしても思い出せないの。
私はカオルにピンクのカーネーションの花言葉を教えたのかしら?教えたとしても、きっとあの子は忘れてるわね。だって、私はあの時も、その後もずっと、いい母親なんかじゃなかったのよ?いつも家柄や仕事のことばかり考えてきた。あの子が私達から離れていくのは当たり前だという事にも気付けなかった・・・・・・。
今だって。・・・・・・・怖くてあの子には聞けない。
あなたはあの日のことを覚えているの?
どうして今年は、花をくれたの?
あの日の私を。・・・・・・・許してくれるの?今までの、私も・・・・・・・・・。
ごめんなさいね、ルナさん。あなたにはいつも泣き言ばかり。
でも、あの子を一番に理解してくれているあなたになら、こうして泣き言も言える。
これからも、あの子をお願いね・・・・・・・・・・・・・。 』
・・・・・・・・・メールを終えて。
しばらくの間、唖然としていた。
何気なく贈ったピンクのカーネーション。・・・・・・それがここまで母を悩ませていたとは。
あの日の出来事・・・・・・5歳の自分。言われてみれば、そんなこともあったような、程度の記憶だ。
だが。
店頭に多く並ぶ、メジャーな赤いカーネーション。
なのに、俺が手を伸ばしたのは・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・思い出した?」
振り返ると、ルナが心配そうな顔で扉越しに立っていた。
メールを見ている間、気を使って寝室の外に出ていたらしい。
「いや・・・・5歳の記憶、じゃな。」
「そうかぁ・・・・・そうねぇ・・・・・素敵な話だったのに・・・・・・・」
「しかし、母の気持ちもわかっていなかったわけだな。俺もいい加減、親不孝だ。」
「私から言わせれば。・・・・・・・・二人ともとっても優しい。優し過ぎて・・・・・悩み過ぎ、ね。」
許す、許さない、だなんて。
親子なんだもの。
絆は一生、絶対でしょう・・・・・・・・?
彼女の言葉こそ、神の言葉のように。
もうここにはいない相手に無償の愛を送り続ける、魔法の言葉。
俺も、この先。
彼女のように、なれるのだろうか・・・・・・・・・。
「そうそう、ピンクのカーネーションの花言葉はね・・・・・・・」
「・・・・・・・・・『感謝』?」
驚いたようなルナの表情に、今は遠い母の面影を重ねる。
口を付いて出てきた言葉は、偶然かもしれないが。
「偶然なんかじゃないわよ、きっと!」と飛び付いてきたルナを抱き締め返しながら、再び思う。
この先。彼女のようになれるか・・・・・・いや、なれるか、ではなく。
彼女と共に、一つ一つ叶えていくんだ。
今からだって、十分間に合う。
『親子の絆は、一生、絶対!!』
END
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eriy
どうしてカーネーションの話!?・・・・・そう。単純に母の日が近いからw
eriyも毎年、母にカーネーション贈ってます。花好きな母なので、物よりも花に喜びます。
赤がメジャーですけど、ピンクが好きな人なのでピンク主体が多いかな?でもオレンジも紫もキレイ。
『赤いカーネーションは神様の涙』云々は本当の話。由来はアメリカの母娘愛らしいですけどね。キリスト教の中では、はりつけにされたイエスを悲しんだマリアの涙という逸話があるそうです。
どっちにしても、母と子の愛を表してるんですね。
ちなみにウチのカオル母は、元華族血筋のお嬢なので旦那様(カオル父)には逆らえません。でもバリバリ仕事するキャリアウーマン・・・・って設定。ちょっと無理あったかな?でも息子ラヴなんですよ、ホント。ルナが娘になったのはもっと嬉しいらしいですけど。
これまたちなみにカオルナが火星に婚前旅行に行った話は、遭難帰還後の「二人で歩む未来図模様」という話にあります。
赤いカーネーションの花言葉は「真実の愛」「情熱」です。