宇宙へのツイッター

踏まれた足を退けることが出来るまで
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最後の日

2022-12-09 06:06:29 | マイファミリー

昨夜 夕食の後片付けをしながら カレーを作った

 

朝ご飯に カレーを食べるのが好きな夫は 

現役時代から 他の社員よりも1時間は早い時刻に 出社していたと思われる

再就職してからも同じで コロナ禍となっては ラッシュを避けて さらに早くなり 

5時前に家を出るハタラキバチさんと ワンの散歩がてら 私も一緒に家を出た

昨夜

[50年・・・半世紀だよ] と つぶやいていたハタラキバチさんは 

明日から 働かないアリになる

職場は何度も変わったけれど 職種は変わらなかった50年

 

定年退職のときに比べたら だいぶ控えめな花束 

そして 皆様による寄せ書きの色紙 記念品の酒器 個人的に菓子折り

数年前 定年退職のときも これと同じことがあった

しかし まだ体力も能力にも自信のある夫の胸の内を思うと 抱えきれないほどの花束をカメラに収めたものの

書くことが出来なかった

でも 

今日は思い切り思いのままを書く気になれるのは コロナ感染の恐れから逃れられる喜びのせいだけではない

 

おつかれさま

 

冬は 星が出ている夜道を駅に向かった それも今日で お仕舞い

いつもの角を曲がる後ろ姿を ワンの動き具合で ときには見失うこともあったけれど

今日は しっかり見送った

夫も 曲がる寸前に こっちを振り返って そして見えなくなった

ワンは そんな空気を知るはずもなく いつものように電柱から電柱へと渡り回っている

 

帰り道 今年になって ここに立つのを見つけた 甘い香りを放つカツラの木の枝を手折った

色付いた葉は ほぼ散り終えて あなたも今日が最後ね と 語りかける私がいた

 

あなたには 来年があるけどね

 

夫はカレーが好きである

4人家族のころ 夕食がカレーという日は 普通にあった

ふたり暮らしになって いつしか 夫は 夕食に炭水化物を摂らなくなっていた

ある時

 [イチロー選手は 朝ごはんに奥さんの手作りカレーを食べる]

こんな情報を何かで知った夫は 朝ご飯にカレーを食べることを思いついたのかどうか

我が家で 朝ごはんにカレーというのが 普通のことになった

 

朝ご飯のカレーは お弁当と朝食作りのプレッシャーを軽くしてくれる 

翌日のお弁当に 手間がかかりそうな日は 前夜にカレーを作った

 

最後の日

お弁当作りは無かったけれど 昨夜は 念入りにカレーを作った

 

 おつかれさまでした

ありがとう

ありきたりの言葉しか浮かんでこないけど

 

仕事を家に持ち込むことはなく 私は 会社での夫のことを 何も知らなかった

あるとき

私の姉と 夫が雑談をしている その傍らにいた私は

[山手線で会社と家を切り替える] という夫の話を聞くことがあった

私とケンカした時

家を出てから メトロで怒っている私のことを考え 山手線に乗り換えたら仕事の事を考える

退社時に 仕事のことを考えながら乗った私鉄から 山手線に乗り換えると

 [ウチの奥さん まだ怒ってるかな] と

 

ケンカは いつも 夫が悪い

[ビールが冷えてないぞ!] と怒ったら [ごめん 急いで冷えたのを買ってくるから]と 私が言えば

[いいよ いいよ 今日は水割りにするから] と なるけど

夫は 廃棄するには惜しくて 大切にしてある私のものを いつのまにかゴミにして

私が怒っても 絶対に謝らない

こないだも 遊歩道に植えようと思って置いといたチューベローズの球根を 捨てたでしょう!!!

いつもゴミ箱代わりにしている発泡スチロールの箱に 球根を入れて置いた私も悪いから 怒れないでいるけど

 

 寄せ書きには 皆様の目に映った仕事に向き合う夫の姿に 賞賛と そして皆様の惜別が溢れている

 

会社では偉大であり そして家族を守っての 半世紀

おつかれさま

ありがとう

 

ありきたりの言葉しか浮かばない中に

口には出さないけど

あなたさえ よければ

 

生まれ変わっても 出会いたい