小梅日和

きのう今日あした

痴人の愛

2005-08-30 00:23:54 | 本のむし
夏休み読書シリーズ。
谷崎潤一郎ですね。耽美派とかって文学史で習ったけど、全然読む気にならなかった。古典文学はほとんど読んでいない私。読んだのは高校の現代文でやった「こころ」と「黒い雨」、なぜか読んだ「人間失格」くらい。でも古典を読みたくなるときというのは定期的にやってくるもので、なぜかいつも夏なんだなー。出版社がこぞってやる夏の読書フェアのせい?
うちはお父さんが文学少年だったらしく、だいたいの古典はおばあちゃんちにあるので、帰ると毎回適当に物色します。で、今回は「ディズニーランドという聖地」て本と、この「痴人の愛」、そして三島由紀夫「金閣寺」。

で、「痴人の愛」なんだけど、ストーリーは勤勉なサラリーマンが身寄りのない女の子を引き取って自分好みのレディに育てようとするんだけど、女は甘やかされたせいでとんでもない我儘な悪女になり、男はそれに振り回されつつも彼女の魅力に取りつかれ、堕落していってしまうというお話。
物語は大正時代の話らしいけど、全然古さを感じないのはいつの時代も男女のことに関しては変わらないってことなのかも。でも魔性の女、ナオミに読んでいてものすごくいらいらするのよー。この子ったらほんとにわがままで全然かわいくなくってねー!しかも男、譲治もこれまたほんとにだめな男で。どうしようもないんです。その行く末が気になって、最後はどうなるのかと思いきや、たいしたオチもなく終わってしまい、拍子抜け。
でも恋愛なんて結局2人の狭い世界だし、どんなに他人から理解されなくても本人がそれでよければ、あたしは基本的にはそれでいいと思う。だから、譲治さんの生き方もなんとも思わないけど、人が人に対してそれほどの強い影響力を持てるってことはすごい。人が恋愛に傾けるエネルギーというものも、とてつもない力なんだろうな。それを利用して政治を操る人というのも、歴史上に数多く存在するわけだし。
なかなか刺激的な読書でありました。

6月20日現在

2005-06-20 22:31:31 | 本のむし

読みたい本一覧。

 

「考えるノート」 山田ズーニー

理想の教室シリーズ

「伊勢丹な人々」 川島蓉子

「風味絶佳」 山田詠美

「疾走」 重松清

「一千一秒の日々」 島本理生

「初対面の教科書」 おちまさとプロデュース

「Girly 漫画再生2005」

「ホタルノヒカリ」 ひうらさとる

「東京感動料理店」 旺文社

 

以上。


ウエハースの椅子

2005-01-17 23:54:04 | 本のむし
連日更新、年末衝動買いシリーズ第3弾
実はこの「ウエハースの椅子」はQ&Aより前に読み終わってたもの。いろいろあって書きそびれていた。大好きな江國香織さんの恋愛小説。主人公の「私」は画家で不倫をしている。「私」の家を訪れるのは恋人と妹と野良猫、そして絶望だけ。淡々と語られる小学性の頃の思いでや家族のエピソードは、まさに江國節ゆっくりと流れる日々の中で、現れる愛することの絶望と、ほんの少しの狂気。(といっても私には狂気に感じられなかったけれど。)不倫をしている人も、そうでない人も共感できると思います。

人をほんとうに好きになることは、絶望と同意義なのです。
わたしは「愛」という言葉がきらいですが、それもまた絶望なのでしょう。それはその人を失うことを否応なく覚悟しなければいけないから。その幸せが壊れることを考えてしまうから。自分の世界に自分とその人しか存在しないなんて、この上なく恐ろしいことだ。そうなったら終わりな気がする。だって、ずっと絶望と向き合わなきゃいけない。閉じ込められている。
私たちはけものだ、って本文に出てくるんだけどそうだと思う。ほんとうは愛しあうことしかないのに、それしかできないのに、絶望と出会うのが怖くてきっと仕事とか社会のしくみを作って目をそらしているのだ。閉じ込められないように、逃げ場をつくって。

幸せはウエハースで作った椅子のようなものだ。
目の前にあるのに、椅子であるのに脆くて決して腰をおろせない。

江國さんの小説は、わたしが飲み込めずにいることをとても心地よい言葉で紡いでくれる。

Q&A

2005-01-16 23:41:29 | 本のむし
やーやー、やっと読めましたQ&A。
年末衝動買いシリーズ第2弾もはや年末はとっくに過ぎてますが。
「六番目の小夜子」で有名になった恩田陸のミステリーです。あたしがミステリーを読むようになったのは恩田さんの作品から。恩田さんのは学生がででくるのが多くて、怖い中にも思春期のあやうい感じや、もうとりもどせない時間、瑞々しさが描かれているところがすき少し現実から離れたノスタルジックな感じ。Q&Aはめずらしく若者が主人公じゃない作品です。


これからあなたに幾つかの質問をします。
ここで話したことが外に出ることはありませんーー。

2002年、2月11日午後2時過ぎ、都内近郊の大型商業施設において重大死傷事故発生。死者69名、負傷者116名。未だ事故原因を特定できずーーー。

ね?怖いでしょ?怖いでしょ!これだけで怖いんだもんなあ。この小説は全編質問と答えで構成されてて、それが題名のQ&Aになってるんだけど、その質問というのはもちろん大型商業施設Mで起きた事件についてのもの。この形式も新鮮。被害者やその遺族、救助にあたった消防士など、いろんな形で事件にかかわった人物からのいろんな証言や会話で物語は進んでいく。でも、恐ろしいのは原因が解明されないこと。現場からは火災の跡や凶器、有害な物質は見つからず、被害者はみんなが逃げたから逃げたと口々にいうだけ。これはただの集団パニックか、政府の陰謀か、それともーー。

読んでるうちになんともいえない恐怖と不安感に襲われる。原因が謎ということの生理的嫌悪感といったら。それでも謎のまま物語進んでいくのです。あと、こんな事件が実際に起こりそうで、なんていうか身近にある恐怖?あたりまえの毎日が、あたりまえの場所である日突然壊れること、それは十分にありえることで、それに対して人はどんなにもろく壊れやすいか、ということを考えました。そういう意味で、9.11のことが影響を与えてるのかなあと思ったり。夜一人で読んでると、もう怖いんだよねー

でー、ラストなんですが。いろんなとこでいろいろ意見がでてて、賛否両論なんですが…。あたしはちょっと違うかなーって、思った。あれ?これで終わるの?!みたいな。でも、どっかで誰かも書いてたけど、あたしはいろんな人の証言から最終的に事件の全体像がみえてくる、みたいな感じを想像してて、というか期待してて。だからなんか肩透かしくらった感じなんだけど。でもこれで、原因わかっちゃったらなあ。むしろあのラストは謎がほんとに謎のまま終わっていく、事件の被害者の感覚を追体験させるためだったのかなーなんて。これで家族とか亡くしてたりしたら本当になんの救いもなく、苦しい。そうすると宗教に行き着くのもわかる気が、します。
うーん。

でもこの感じ、読んでみないとわかりません。

からだのひみつ

2005-01-07 03:24:59 | 本のむし
年末にブックオフにて衝動買いした10冊の第一弾。
作家・エッセイストである田口ランディと整体師の寺門琢己さんの対談をまとめたもので、テーマはセックスから妊娠・出産、生と死までさっぱりからりと率直な意見が交わされる。この前この本のことを「お勉強のため」などといいましたが全然間違いです!いやー勉強になったのは間違いない、けどとかじゃなくてむしろもっと若い子、中学生とかにもっともっと読んでほしい!ぜひ!
わたしたちは余りにも頭でっかちになり過ぎてる。もっと自分の身体に正直になって、その感覚を信じていいんだと思う。思考がどんどん身体を離れて一人歩きしちゃってるから実感も何も伴わなくて、変な殺人とか命を軽く扱っちゃうような人が増えるんだよー。自分のも他人のも。
私は月に一回、一週間くらいもう眠くて眠くてどうしようもないときがあって、それが生理前、身体の血が下がるからだと知ったとときにはものすごく感激した。というか納得した。今までわけもわからず「眠いー。ねむいよー。なんだこれー」と思ってたのが、この眠気が来ると「あ、もうそろそろだな」とわかるようになって大変便利しかもほんとにその数日後にちゃんと生理がくるんだよ!すごいよねー。だってだれも教えてくれなかったよー、学校の保健体育の授業でもさ。生理前に眠くなるなんて。身体はこんなに正直なのにね。

田口ランディの本はエッセイしかまだ読んだことがないけど、小説も買ったのでたのしみ