Study of Spenser

ロバート・B・パーカー著、ボストンの私立探偵スペンサーを読み解くガイドブックです

失投 - Mortal Stakes - (1975) 20章

2009-12-04 | 海外ミステリ紹介
画像は、ドゥア葬儀社があるとされている、チャールズタウン、メイン・ストリート228番地


20章
翌朝、5マイルのジョギングとウェイト・トレーニングをし、ダイナーで朝食を摂っています。何を食べたかの記載はないのですが、この韻を踏んでいる文章、"I had breakfast in a diner, nothing could be finer."は、<チャタヌーガ・チュー・チュー>の歌詞、"Dinner in the diner, nothing could be finer"から取られているようです。

■■ <チャタヌーガ・チュー・チュー Chattanooga Choo Choo>
グレン・ミラー楽団の演奏で、一世を風靡したスウィングの名曲。1941年の映画<Sun Valley Serenade 邦題:銀嶺セレナーデ>の主題曲で、作詞はマック・ゴードン(Mack Gordon)、作曲はハリー・ウォーレン(Harry Warren)。1942年のオスカーにノミネートされています。1928年のサンモリッツ・オリンピックから3連ちゃんでフィギュアスケート女子シングルスを征し、銀盤の女王と言われたスケーターのソニヤ・ヘニー(何故か歌手役)主演のラブ・コメディで、グレン・ミラーも出演しています。

イエローページで葬儀屋のフランク・ドゥアの住所、チャールズタウン、メイン・ストリート228番地を見つけます。独り言で、「Elementary, my dear Holmes. 初歩的なことだよ、ホームズ君」と言っています。これは、シャーロック・ホームズが、ワトソン博士に向かっていつも「Elementary,  初歩的なことだよ、ワトソン君」と言うのをもじっているのです。

で、シボレーでチャールズタウンに向かいます。橋を渡ってシティ・スクエアから入っているようですから、この橋はチャールズタウン・ブリッジでしょう。
シティ・スクエアからメイン・ストリートに入り、ドゥアの住所の近くに駐車します。このあたりの都市開発はまだ進んでいなくて、経済的復興を果していないように見え、スペンサーは自分の8年落ちのシボレーは、ここに似合っているとしています。

ドゥア葬儀社は、スレイト葺きの2階建てのレンガ造りで、空き家になっているグローサリー・ストアと安売り靴の店に挟まれている場所です。空き地にチコリとクイーン・アンズ・レース(Queen anne's Lace)と呼ばれる野良ニンジンが茂っていました。夏にレースのような花を咲かせるニンジンの原種ですが、食用にはなりません。
そこで、スペンサーは、ワーズワース(William Wordsworth)の詩を引用しています。
「Nature never betrayed the heart that loved her. 自然は、それを愛した者の心を裏切ることはない」
詩のタイトルは、「Lines Composed a Few Miles Above Tintern Abbey ティンターン修道院から数マイル上流で」というものです。ちなみにティンターン修道院があるのは、イギリスのウェールズ地方。

画像をご覧いただけますと、ドゥア葬儀社は住所的にはぴったんこなのですが、都市開発がなされたのか、2階建てのタウンハウスになっていました。

スペンサーは、ドゥア持っているバッキー・メイナードの借用書、そしてメイナードが握っているドゥアが知らないマーティ・ラブへの脅迫材料ともども、すべてから手を引いてほしいと言います。(ま、悪党側の論理から見れば、実に勝手な言い分です)
そして、脅迫材料を知らないドゥアはメイナードを殺せないし、自分がここに来たことはボストン市警のクワークが知っているから殺しても無駄だというわけです。

このようなことで、ドゥアが手を引くことはないのですが、スペンサーは自分が真相を知っていることをあからさまにドゥアに告げることで、事件を動かそうとしているのです。


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