画像は、サンフランシスコのフェリーターミナルにある、マハトマ・ガンジー像
26章
7時15分、ショットガンを車のドランクのダッフルバッグに戻し、フェルズウェイ(リン・フェルズ・パークウェイのことだと思われます)と1号線が交差する辺りを走っています。フェルズウェイを東に行って、1号線をつかまえたわけですね。そこから北のスミスフィールド(実際はリンフィールド)に向かっています。
スーザンに会いに行くのです。その途中で酒屋に寄って、ワイルドターキーのクォート瓶を買っています。クォート瓶というと、可愛いサイズに聞こえますが、日本でいうところのリッター瓶です。
1号線から降りると、バーボンで口をゆすぎ、その後4オンスほどラッパ飲みしています。約120ccです。車を停めて、という記述はありませんから、飲酒運転です。しかも最中。まぁ、許してやってください。車から降りて飲むようなタイプなら、そこから代行を呼ばなくてはならなくなります。“スペンサーは公衆電話で代行を呼んだ”では、てんで話が締まらなくなりますから。
スペンサー、1年ほど前の事件(2作目<誘拐>のことです)で、この辺りの地理には詳しくなっています。スーザンの家は、コモン(リンフィールド・コモンのことらしい)から北に100ヤードほどなので、メイン・ストリートとカーター・ストリートが『逆ト』になっているあたりでしょう。古いケイプ・コッド・スタイルの家です。
スーザンの車があって、彼女が家にいることがわかるのですが、スペンサーはスーザンが留守だということは考えてもいなかったのでした。玄関のドアが開いていて、中からスタン・ケントン(Stan Kenton)に良く似た音楽が聞こえてきます。アーティストリー・イン・リズム(Artistry in Rhythm)です。
■■ <スタン・ケントン Stan Kenton>、<アーティストリー・イン・リズム Artistry in Rhythm>
スタン・ケントンは、1941年から自身のビッグバンドを率いながらも、スウィングのテイストにモダン・ジャズのエッセンスを取り入れ、当時としてはかなり革新的な実験音楽をも試みたバンドリーダー。
アーティストリー・イン・リズムという曲は、1943年から彼のバンドのテーマ曲。YouTubeで検索可能です。
ベルを鳴らすとスーザンが本を片手に出てきます。スペンサーは、スーザンに会うといつでも、Every time I saw her I felt the same click in my solar plexus I’d felt the first time. 最初に感じたのと同じように、鳩尾をクリックされるように感じるのです。そんな気持ちはわからなくもありませんけど。
ちなみに最初に出会ったのは、前の年の9月上旬、現在は7月上旬のはずですから、お付き合いの期間は10ヶ月です。
読んでいる本は何かとの問いに、スーザンは「エリクソンのガンジー伝 Erikson’s biography of Gandhi」と答えますが、スペンサーは、リーフ版(Leif)の方が好きだと言います。
■■ <エリクソンのガンジー伝>
エリク・H・エリクソン(Erik Homburger Erikson)は、フロイト、ユング派を継承するドイツの心理学者です。
ガンディーが父の死に目に会えなかったことが、彼の禁欲主義的傾向や、結婚したにも関わらず、一切の性行為を断って禁欲を開始する誓い立てたことに起因するという指摘をしています。
スペンサーが言う、「I’ve always liked Leif’s work.」については不明。
「顔色が良くないわね、キスをしてあげたら良くなる?」と訊ねるスーザンに、「まだだ、吐いていたし、シャワーを浴びたい」とスペンサーは言い、バスルームに行きます。
スーザンの家に置いてあるテニスショーツに着替えて、裏のポーチにワイルドターキー、アイス、レモンのスライスにビターの瓶を用意して、スーザンが待っています。
「何か食べる?」と聞くスーザンの申し出を断り、またしてもバーボンをラッパ飲みです。
「ビールの代わりにバーボンを飲み、スナックを断るというのは、ひどい状況なのね」と問うスーザンに、スペンサーはうなずきます。そして、そのことについて話したいが、どう言えばいいかわからないのです。
スペンサーは、今回のことではなく、どのくらい前に離婚したのかと、スーザンに聞きます。5年前です。つまり1970年頃ですね。
そして、ついに、今日の夕方に男を二人殺した、と言います。
これまでにやったことがあるのかと聞くスーザンに、あるけれど、今回のは計画的だった、と告白します。
それは、殺人という意味なのかと聞かれると、そうではないが、そうとも言えると答えるのです。
スーザンはスペンサーに言います。1年ほどの付き合いだけれど、あなたという人を見てきて、立派な人だと思う。そのあなたがやらなければならなかったということは、そうせざるを得なかったからよ。
そして、スペンサーの手に自分の手を重ねて長いことそのままでいます。二人で長椅子に座ると、スーザンは、スペンサーの頭に胸を押し付けて、「Would you like to make love? 愛を交わしたい?」と訊ねるのですが、スペンサーは、まだ駄目だ、このままこうしていたいと言い、そのうち眠りに落ちるのでした。
26章
7時15分、ショットガンを車のドランクのダッフルバッグに戻し、フェルズウェイ(リン・フェルズ・パークウェイのことだと思われます)と1号線が交差する辺りを走っています。フェルズウェイを東に行って、1号線をつかまえたわけですね。そこから北のスミスフィールド(実際はリンフィールド)に向かっています。
スーザンに会いに行くのです。その途中で酒屋に寄って、ワイルドターキーのクォート瓶を買っています。クォート瓶というと、可愛いサイズに聞こえますが、日本でいうところのリッター瓶です。
1号線から降りると、バーボンで口をゆすぎ、その後4オンスほどラッパ飲みしています。約120ccです。車を停めて、という記述はありませんから、飲酒運転です。しかも最中。まぁ、許してやってください。車から降りて飲むようなタイプなら、そこから代行を呼ばなくてはならなくなります。“スペンサーは公衆電話で代行を呼んだ”では、てんで話が締まらなくなりますから。
スペンサー、1年ほど前の事件(2作目<誘拐>のことです)で、この辺りの地理には詳しくなっています。スーザンの家は、コモン(リンフィールド・コモンのことらしい)から北に100ヤードほどなので、メイン・ストリートとカーター・ストリートが『逆ト』になっているあたりでしょう。古いケイプ・コッド・スタイルの家です。
スーザンの車があって、彼女が家にいることがわかるのですが、スペンサーはスーザンが留守だということは考えてもいなかったのでした。玄関のドアが開いていて、中からスタン・ケントン(Stan Kenton)に良く似た音楽が聞こえてきます。アーティストリー・イン・リズム(Artistry in Rhythm)です。
■■ <スタン・ケントン Stan Kenton>、<アーティストリー・イン・リズム Artistry in Rhythm>
スタン・ケントンは、1941年から自身のビッグバンドを率いながらも、スウィングのテイストにモダン・ジャズのエッセンスを取り入れ、当時としてはかなり革新的な実験音楽をも試みたバンドリーダー。
アーティストリー・イン・リズムという曲は、1943年から彼のバンドのテーマ曲。YouTubeで検索可能です。
ベルを鳴らすとスーザンが本を片手に出てきます。スペンサーは、スーザンに会うといつでも、Every time I saw her I felt the same click in my solar plexus I’d felt the first time. 最初に感じたのと同じように、鳩尾をクリックされるように感じるのです。そんな気持ちはわからなくもありませんけど。
ちなみに最初に出会ったのは、前の年の9月上旬、現在は7月上旬のはずですから、お付き合いの期間は10ヶ月です。
読んでいる本は何かとの問いに、スーザンは「エリクソンのガンジー伝 Erikson’s biography of Gandhi」と答えますが、スペンサーは、リーフ版(Leif)の方が好きだと言います。
■■ <エリクソンのガンジー伝>
エリク・H・エリクソン(Erik Homburger Erikson)は、フロイト、ユング派を継承するドイツの心理学者です。
ガンディーが父の死に目に会えなかったことが、彼の禁欲主義的傾向や、結婚したにも関わらず、一切の性行為を断って禁欲を開始する誓い立てたことに起因するという指摘をしています。
スペンサーが言う、「I’ve always liked Leif’s work.」については不明。
「顔色が良くないわね、キスをしてあげたら良くなる?」と訊ねるスーザンに、「まだだ、吐いていたし、シャワーを浴びたい」とスペンサーは言い、バスルームに行きます。
スーザンの家に置いてあるテニスショーツに着替えて、裏のポーチにワイルドターキー、アイス、レモンのスライスにビターの瓶を用意して、スーザンが待っています。
「何か食べる?」と聞くスーザンの申し出を断り、またしてもバーボンをラッパ飲みです。
「ビールの代わりにバーボンを飲み、スナックを断るというのは、ひどい状況なのね」と問うスーザンに、スペンサーはうなずきます。そして、そのことについて話したいが、どう言えばいいかわからないのです。
スペンサーは、今回のことではなく、どのくらい前に離婚したのかと、スーザンに聞きます。5年前です。つまり1970年頃ですね。
そして、ついに、今日の夕方に男を二人殺した、と言います。
これまでにやったことがあるのかと聞くスーザンに、あるけれど、今回のは計画的だった、と告白します。
それは、殺人という意味なのかと聞かれると、そうではないが、そうとも言えると答えるのです。
スーザンはスペンサーに言います。1年ほどの付き合いだけれど、あなたという人を見てきて、立派な人だと思う。そのあなたがやらなければならなかったということは、そうせざるを得なかったからよ。
そして、スペンサーの手に自分の手を重ねて長いことそのままでいます。二人で長椅子に座ると、スーザンは、スペンサーの頭に胸を押し付けて、「Would you like to make love? 愛を交わしたい?」と訊ねるのですが、スペンサーは、まだ駄目だ、このままこうしていたいと言い、そのうち眠りに落ちるのでした。