Study of Spenser

ロバート・B・パーカー著、ボストンの私立探偵スペンサーを読み解くガイドブックです

失投 - Mortal Stakes - (1975) 27章

2009-12-18 | 海外ミステリ紹介
画像は、バッキー・メイナードとレスターが住んでいる、アトランティック・アベニューのハーバー・タワーズ(左のタワーですが、どちらの建物かは不明)


27章
火曜日の朝、スミスフィールドからボストンに戻ってくると、《ヘラルド・アメリカン》紙に、『GANGLAND FIGURE GUNNED DOWN ギャング、射殺される』の記事が掲載してありました。見つけたのはネッキングのために保護区に入ったカップルで、州警も市警もまだ意見を発表していませんでした。

スペンサーは、ハーパータワーズにバッキー・メイナードを訪れます。「これでお前のトラブルも終わっただろう」と言うスペンサーに、メイナードは、何のことかわからないとばっくれます。
フランク・ドゥアに脅される心配がなくなった以上、マーティ・ラブを食い物にするのはやめるんだな、と言っても、メイナードは何の話をしているのかわからないし、帰ってくれと言うのです。そして、テーブルの上には《ヘラルド・アメリカン》紙がありました。メイナードはすでに記事を読んでいるのです。
スペンサーは、「帰るよ、でも映画でお馴染みのI’ll be back(また来るよ) だ.」と言います。

■■ <I’ll be back また来るよ>
これは、《ターミネーター》での、アーノルド・シュワルツェネッガーのフレーズです。ですが、《ターミネーター》は1984年、この小説は1975年ですから、《ターミネーター》であるはずはありません。では何か? このフレーズは、昔からアメリカのテレビのニュースキャスターや、番組のMCがよく使う常套句ですので、こ「映画で言っている」だけでは、いかんせん特定するのは不可能です。

帰りがけに、メイナードの運転手兼パシリのレスターが、銃を見せます。ベレッタのようです。先日(21章)、スペンサーに銃で脅されたので、自分も調達したのです。

嫌な気分で自宅に戻ると、ボストン市警の車が停まっていて、ベルソンが、警部補(クワーク)が呼んでいると伝えます。ベルソンに、『COMMANDER, HOMICIDE 殺人課長』とドアに書かれた、クワークのオフィスに連れて行かれ、クワークはベルソンを下がらせます。クワークは、「ソーガスの二人は、お前が殺ったのだと思う」とスペンサーに言います。スペンサーは、「Ur-huh. アーハ」と答えます。

クワークは市警の、ある男に頼まれて非公式に現場検証をしたと言います。お前があそこにいることを知らせて、二人をおびき寄せ、二人の裏をかいたのだと思う、と話します。
「Quirk, you got some swell imagination. クワーク、想像力の膨らませすぎだよ」とシラを切るスペンサーに、クワークは、「お前は俺に一杯おごり、ドゥアについて訊いた。翌日、ドゥアがお前をバラすという情報を得た。そして、今朝ドゥアとやつの手下の死体を見た。昨日のアリバイはあるのか?」と、こうです。

アリバイが必要なのかと聞き返すスペンサーに、クワークは必要ないと答えます。つまり、クワークはこの話をソーガスの警察にしなかったのです。ソーガスは自分の管轄ではないから、というのが理由です。
スペンサーが二人を殺った理由は知らないが、金のためとか、自分の身を守るためでもなかったと思う、恐らくは誰か他の人間、多分、被害者を窮地から救うためだったのだろう、とクワークは言います。
素晴らしい! クワークさん、その推測は当たっていますよ。

そっちがそう言っても、自分は言わないというスペンサーに、俺の管轄ではやるな、今度のことが無事に済んだとしても、二度とやるな、とクワークは釘をさします。

スペンサーは立ち上がり、ドアの方に行き掛けて、クワークの方に向き直ります。
「マーティ、」
「何だ」
「シェイク」
二人は握手をするのでした。


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