Study of Spenser

ロバート・B・パーカー著、ボストンの私立探偵スペンサーを読み解くガイドブックです

失投 - Mortal Stakes - (1975) 25章

2009-12-14 | 海外ミステリ紹介
画像は、ボローニャではないのですが、ヒーブルー・ナショナル社のビーフ・フランクスのパッケージ
この量で、4分の1パウンドですから、スペンサーが買ったのはこれ4つ分


25章
スペンサーは、マーケットで、1パウンドのヒーブルー・ナショナル・ボローニャ、パンパニクルを1ルーフ、ブラウン・マスタード1瓶、ミルク半ガロンを買って車に戻り、ダッフルバッグに食料とショットガン、弾を入れると、肩に背負って、ブレイクハート保護区まで歩いて引き返すのです。ううむ、足が割れないようにするのですね。

■■ <ヒーブルー・ナショナル・ボローニャ Hebrew National bologna>は、ヒーブルー・ナショナルというメーカーのボローニャハム。コーシャ・フードですが、グルメスーパーではなく、ごく普通のスーパーで手に入ります。

■■ <パンパニクル pumpernickel>は、シリア・ブレッドと並んで、スペンサーが好むドイツ系黒パンです。ほぼ100%ライ麦で出来ていて、粗めでずっしりと重い、発酵系のパンですから、やや酸味があります。サンドウィッチはもちろんですが、チーズとのコンビネーションも良いものがあります。個人的には、柔らかめのブルーチーズ(ブルー・ド・ロカイユとか)やマスカルポーンがイケると思います。

ブレイクハート保護区まで、歩いて15分で、スペンサーはダッフルバッグからショットガンを取り出し、弾を6発こめ、予備の弾6発をポケットに入れます。ハムとパンとマスタードでサンドウィッチを作り、ミルクを飲みます。時刻は2時45分。決戦前の腹ごしらえというところ。

4つ目のサンドウィッチを食べ、ミルクを飲み干し、やぶの陰にいると、4時15分に銀色のリンカン・コンティネンタルが窪地の近くの道路わきに停まって、長い時間が経って、ウォリー・ホッグが出てきました。
リンカン・コンティネンタルは去り、スペンサーが、木陰に入ったウォリーを観察すると、持っている銃は、M-16ライフル、口径は7.62ミリ、弾は20発入るものでした。

ウォリーは、向かい側の斜面を登り始めましたが、途中で滑り、スペンサーの高さまでは到達していません。そして、タバコを吸い始めたのです。スペンサーは不注意だと思います。100ヤードほどははなれているのですが、森の中は街中よりずっと匂いが届きやすいのですから。

5時半、スペンサーはお腹がすいて、お腹が鳴ってしまいます。サンドウィッチを4つも食べたにも関わらず、です。わたしなら2個で十分ですが、考えてみればスペンサーとわたしの体重はダブル・スコアですから、5つ目もアリでしょう。
で、ゲイリー・クーパーの腹が一度も鳴ったことがないのはなぜだろう How come Gary Cooper’s stomach never rolled?、と思うわけです。確かにモロッコの砂漠や、ハドリーヴィルの酒場の前で、ゲイリー・クーパーのお腹がグゥと鳴ってはいかんわけです。コメディになってしまいますからね。

6時10分前、ウォリーは同じ場所にいます。
6時7分前、スペンサーは撃鉄を起こしたショットガンを持って立ち上がり、丘を、ウォリーがいる場所とは反対の方に慎重に下ります。
6時5分、道路わきに車が停まって、ドアが開く音と閉じる音がし、スペンサーはそっと近づきます。車はマロン色のクーペ・ド・ヴィル。何という偶然、12章(2009年10月10日掲載)で、ニューヨークのイースト・ヴィレッジを根城にするポン引き、ヴァイオレットが乗っていたのも、マロン色のクーペ・ド・ヴィルです。フランク・ドゥアとヴァイオレットは、やや印象が違うので、同じ車にする(しかも色まで)のはいささか安直のように思います。

ドゥアは窪地のシャークフィンの形をした岩の近くに立っていました。車に合わせたかのようなマロン色のスラックス、白い靴、白いベルト、黒いシャツに白いネクタイ、白のサファリ・ジャケット、白いゴルフキャップに黒縁のサングラス。A really neat dresser. 凝った身なりだ(菊池光氏訳)、ダンスも上手なのだろうと、スペンサーは思います。

ウォリーの場所を把握しているスペンサーは、自分とウォリーの間に岩が入るようにして、ドゥアに近づきます。
「俺をバラすと言っているそうだな」と、ドゥアに話しかけます。隠れているウォリーに全神経を手中させ、ウォリーが音を立てないように靴を脱がないように祈りながら、ドゥアに口喧嘩を吹っかけ続けます。挑発しているのです。
怒りで顔を真っ赤にしたドゥアが、銃を抜こうとした瞬間、スペンサーは、ショットガンを水平に持ち、ドゥアを打ち抜きます。

ドゥアはひっくり返り、ウォリーの弾が、スペンサーの後方の地面に当たるやいなや、スペンサーは右肩から回転し、岩陰からウォリーがいる場所に5発撃ちこみました。予備の弾をこめていると、ウォリーが落ちてくる音が聞こえ、すでに体の前面が血だらけになっていました。ドゥアも10フィートの場所から撃ったので、腹の辺りがほとんど抉られています。これがショットガンの利点なのです。至近距離で撃てば、いちいち脈を診て回らなくてもすむところが。

すぐにその場を立ち去りたかったスペンサーですが、想定外にも岩に寄りかかって座り込みます。膝がガクガクして寒気がし、さっきは押さえ込んだ吐き気を我慢できないのでした。


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