Study of Spenser

ロバート・B・パーカー著、ボストンの私立探偵スペンサーを読み解くガイドブックです

失投 - Mortal Stakes - (1975) 23章

2009-12-10 | 海外ミステリ紹介
画像は、マーティ・ラブのアパートメントから、さほど遠くないハンティントン・アベニュー


23章
スペンサーがマーティに野球が出来なくなったらどうするつもりかと聞くと、マーティはコーチになりたいと答えます。コーチになれなかったら? と重ねて問うスペンサーに、スカウトかな、と答えます。それではコーチにもスカウトにもなれなかったらと三たび問うと、マーティはわからないと言うのです。彼の人生においては、野球以外の職業は存在しないのです。

しかしながら、今度の一件が表沙汰になったら、出場停止は間違いないし、実際にマーティがいくつかの試合を捨てていることをコミッショナーが知れば、球界からの追放も確実なのです。

自分が告白したらどうなるのかと、リンダが問います。自分が過去を公表して、野球賭博に関する部分に誰もい触れなかったらどうなるのかと。それでも悪党どもは自分が試合を投げたことをネタに脅迫できるとマーティは言いますが、スペンサーはそうとも限らない、と答えます。
スペンサーがドゥアを抑えることが出来れば、メイナードは、しゃべれば自分も職を失うことになり、マーティと立場は同じになる、と。

マーティはリンダには何も公表させないと言い、リンダはスペンサーに、ドゥアを抑えることが出来るのかと訊ねます。スペンサーは、わからないがやるしかないと答えます。そして、スペンサーがドゥアを抑えてくれれば、自分は告白すると、リンダは言うのでした。
この部分、リンダとスペンサーはマーティを無視しています。二人とも、現実的にならなければ解決しないとわかっているのです。

スペンサーが段どってくれたら、自分は告白する、とリンダは言います。マーティが愛しているのは自分達と野球の二つで、片方を活かすためにはもう片方を傷つけるしかないし、それが自分のせいだとわかっていて、そして、そのことでマーティが悩むのを見ているのは耐えられない、と。

そんなことは許さないと言うマーティに、スペンサーは、世の中はきれいごとだけでは済まされない。自分が巻き込まれているのは、命を奪われるかどうかという事態なのだ。球場でヤジを飛ばされたり、妻が多少恥ずかしい思いをするようなことで、そこから抜け出せるのだったら上出来ではないか。完璧とはいえないが、前より良くなったと考えるべきだ、とマーティに意見します。

自宅に戻り、ビールを飲みながらスペンサーは考えます。ドゥアをどうにかできれば、メイナードは何とかできると思うのですが、考えがまとまりません。スペンサーのルールとして、考えがまとまらないときは料理をして、それを食べるに限る(Spenser’s Rules: When in doubt, cook something and eat it.)のです。

そんなわけで、もう1本ビールを開け、冷蔵庫からスペアリブを取り出します。リキッド・スモークをたっぷりかけて、弱火でオーブンに入れます。ミネアポリスのチャーリー何とか(Charlie’s something-or-other)というレストランで食べたBBQスペアリブのソースの再現にトライしていて、かなり似てきている段階のようです。

今回は、ケチャップの代わりにチリソースから始めて、ブラウンシュガーを少なめに投入。そしてニンニクを二かけ。その前にビールをもう1缶開けます。ニンニクの匂いを消すために役立つかも、などど言い訳しています。赤ワインを半カップ、タバスコを一振り。そしてまたもやビールを開けます。スペンサーの「開けます」は、「空けます」ですね。料理の前半戦で、すでに4本終了です。いつもながら良い飲みっぷりです。

付け合せはスライスしたズッキーニ小麦粉をまぶしておいて、ボウルに小麦粉とビールを混ぜたコロモにつけてオリーブオイルで揚げています。冷凍庫の中には、前の日曜に』スーザン・シルヴァマンと作ったパンがあります。
時刻は3時半。フランク・ドゥアをどうするか、どうすればチャーリーのBBQソースの味にできるか、あるいは自分はこのところ飲みすぎているのか、このようなことをスーザンに聞けば、何か答えを得られるかもしれないと思い、スーザンに電話をするのですが彼女は出ません。もっとも、フランク・ドゥアはスーザンに聞いてもどうにもならないし、料理は間違いなくスペンサーの方がスーザンより上ですから、要するに話したいのですよね。

一瞬、ブレンダ・ローリングに電話をしようかと思うのですが、ブレンダは遊びやおふざけの相手(Brenda was for fun and wisecracks.)で、今自分が話したいことはトラブルに関する難しい事なのだ、とスペンサーは思うのでした。
あぁ、ブレンダさん、あなたもスペンサーのことをそう思っているのでしょうか?


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