Study of Spenser

ロバート・B・パーカー著、ボストンの私立探偵スペンサーを読み解くガイドブックです

ゴッドウルフの行方 - Godwulf Manuscript - (1973) 11章

2009-07-12 | 海外ミステリ紹介
画像は、ニュベリー・ストリートとフェアフィールド・ストリートの角


第11章
自宅に戻ってバーボンを飲みながら(瓶から直接)、調査の過程で誰かの神経にさわり、その誰かがブロズを使って警告してきたのだとスペンサーは考えます。しかもその誰かがブロズに頼んだのは今日である可能性が強いと推測します。ブロズは自分の芝生が荒らされているのを待つようなタイプではないからです。ブロズと大学、あるいはゴッドウルフ・マニュスクリプトとの関連はあるのかとさらに考えていると電話が鳴ります。このときの応答がまたいい。
「スペンサー産業、警備部、24時間営業 Spenser Industries, security division. We never sleep. 」

はたして電話をかけてきたのはテリィの母親マリオンでした。この後のスペンサーのセリフはいけません。いかにストレートのバーボンでいい気分になっていようとも、” Howya doing, sweets, ” はいけません。マリオンの電話はテリィがいなくなったということでした。空きっ腹にもかかわらずバーボンを飲みすぎているスペンサーは、サブマリン・サンドウィッチとラージ・ブラックコーヒーを買い、運転しながら食べたり飲んだりします。もちろん酔っ払い運転で、さらに悪いことに雪道です。ウェスト・ニュートンでもダンキンドーナツでブラックコーヒーを追加しています。

オーチャード家に着き、マリオンはスコッチのソーダ割り、スペンサーはバーボンのソーダ割りにビターを少々というのを飲みながら二人は話しているのですが、次第に2インチの距離まで近づいてしまいます。確かにマリオンがスペンサー腕を握りしめ、前かがみになっているのですが、キスをしたのはスペンサーからです。もちろんコトに及ぶわけです。椅子の上でのメイクラブはヘヴィ・ワークだと書いてありますから。これは絶対に許されないことです。しかも行きがかり上です。メイクラブではなく、カピュレーションでしょう、単に。スペンサーともあろうものが、酔っ払っていたからですとぉ!!! とまぁ、ハードボイルド・ヒーローの風上にも措けないようなことをやってくれちゃったわけです。しかも第一作目で。もしかしたらパーカー(著者)は、この時点ではスペンサーのキャラクターをもっと軽く考えていたのかも、とさえ思えてしまいます。

ともかく、衣類を身につけ雇い主と雇われ人の関係に戻るのです。そしてやっとテリィの話です。マリオンは、テリィはケンブリッジにある<モレクの儀式>というグループと一緒にいるのだろうと思うと話します。

ここで面白いのは、スペンサーはそういうことがあったがゆえに、マリオンをどう呼んだらいいか躊躇する点です。カウチの上でのカピュレーションの後では、ミセス・オーチャードでは間が抜けているような気がするけど、マリオンとファーストネームで呼ぶような間柄ではないと思っているのです。しかしながらこの問題をマリオンはあっさり片付けます。カウチの上でのカピュレーションの前は、ミスタ・スペンサーと呼び、後はミスタを取って単にスペンサー。見事です。


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