Study of Spenser

ロバート・B・パーカー著、ボストンの私立探偵スペンサーを読み解くガイドブックです

ゴッドウルフの行方 - Godwulf Manuscript - (1973) 17章

2009-07-21 | 海外ミステリ紹介
画像は、ボストン北に位置するマーブルヘッドの上空から


第17章
スペンサーの考えは正しく、キャシーは月、水、金の朝八時からのチョーサーのクラスに出ていました。アイリスが電話をくれたのです。学生もそうですが、ローウェル・ヘイドン教授も週に三回も八時のクラスがあるのは大変ですねぇ。スペンサーは、ヘイドンの筆跡がわかるものがないかアイリスに尋ね、アイリスは何か探しておくと約束します。
スペンサーが「講義には出ないのか? Don’t you ever go to class? 」とアイリスに聞くと、
アイリスは「犯罪者を追っている間は出ないわ Nor while I’m tracking down a criminal, I don’t. 」と答えます。いいやつだなぁ。

アイリスが用意してくれたのは、彼女の論文へのヘイドン教授が書き込んだ評でした。果たして両者を比べると、そっくりなファンシーな筆跡でした。スペンサーは、アイリスに論文を借りてコピーを取ると、オリジナルはオフィスに保管し、コピーを持ってヘイドン教授に会いに出かけます。ボストンの電話帳に載ってなく、大学の英文学部にヘイドン教授の友人の大学教授を装って電話をしてまんまと自宅住所を聞き出します。

ヘイドンの自宅は、ボストンの北のマーブルヘッドで、港に面したアパートメントの一階でした。ベルを押すと出てきたミセス・ヘイドンは、三十代半ばで、スペンサーより背が高く(スペンサーは6フィート1インチ=185センチメートル)、金髪を後ろで束ね、化粧をしていなくて、大柄だがぜい肉は付いていないとしています。スペンサーは彼女評して、「カヌーの櫂のように痩せて硬そうで、カヌー櫂ほどにもセクシーではない She was as lean and hard as a canoe paddle, and nearly as sexy.」としています。およそ魅力がなさそうな女性ですねぇ。

男物のセーターにリーバイスといったいでたちのミセス・ヘイドンが身につけている物の中で、飾りといってもいいのは、ピンク色のレンズをはめたグロリア・スタイネム風のメガネだけです。

■■ グロリア・スタイネム風のメガネというのは、リムの上にブリッジが渡され、テンプルは細身で、ややナス型の大振りなサングラス風のフレームです。グロリア・スタイネム(Gloria Steinem)は、1934年生まれ(スペンサーより三つ年上)のフェミニズム運動の活動家であり著述家です。『プレイボーイ』誌に潜入取材(バニーガールに応募)したルポルタージュが有名です。

スペンサーはミセス・ヘイドンに教授との面会を頼みますが、教授は研究のために書斎に篭っているというので、自分の名詞の裏に<キャシー・コネリー?>と書いて玄関に置いてきます。

ほぼ三時間後にヘイドンが出てきて、スペンサーの車に乗ると、自分に付きまとわない方がいいと警告します。スペンサーが理由を尋ねると、身に危険が及ぶからだと答えます。さらに自分にはスペンサーのような人間の扱いを心得ている友人が何人もいる、とさえ言います。それに対してスペンサーは、近代語協会(Modern Language Association)から誰か呼ぶのかとしゃれたことを言います。ヘイドンが中世の文学が専門なので、このような言い方になったのです。ヘイドンは、スペンサーを殺す連中のことだと言い、スペンサーはこれに対しても、ああ、ミセス・ヘイドンのことだな、とはぐらかすような言い方をします。

スペンサーはピーボディのモーテルで書かれた手紙の件を話し、ヘイドンはお前を殺させてやると上ずった声で言い、スペンサーは、まさかジョウ・ブロズが言いなりに自分を殺すと思っているのではないだろうな、と言い返します。

スペンサーには、ヘイドンが犯人か、少なくとも部分的に関わっていることと、ギャングとも繋がりがあることを確信します。ギャングはブロズしかあり得ないし、何か妙なことが起きてない限り、英文学の教授とギャングとの接点はないと考えるのです。ブロズが欲しがるのは金だけだし、ヘイドンは金を持っているようには見えないことから、麻薬の存在をも確信します。

ヘイドンと殺されたキャシー・コネリーは恋人同士で、キャシーの前のルームメイトがテリィ・オーチャード、テリィのボーイフレンドだったデニス・パウエルも殺されてしまっているのです。
スペンサーは、SCACEの一員であるマーク・テイバーをもう一度訪ねることにします。


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