5月末にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)から伝えられた中国の振る舞いは、中国問題の第一人者、マイケル・ピルズベリー氏(ハドソン研究所中国戦略センター長)の所論を裏書きするかのようだ。
中国「2049年まで目標」
ピルズベリー氏は今年2月に出版した、『100年マラソン-超大国・米国に取って代わる中国の秘密戦略』で、中国が「中国の夢」などというスローガンの陰で、米国主導の世界秩序を覆そうとしていることを具体的に論証した。
ピルズベリー氏は中国の極秘文書から、共産党指導部に影響力をもつ強硬派が、建国から100年目の2049年までに、米国に代わって世界の支配者になることを目指していると暴露する。その強硬派の一人が習近平主席に影響力をもっているという。
習氏のいう「中華民族の復興」は、西洋や日本から受けた恥辱の一世紀が終わりを告げ、建国100年の夢の実現を目指す。彼らには「国境」という概念が薄い上、膨張する中華帝国は遠く「辺境」へと統治の範囲を拡大していく。陸の辺境はチベット、ウイグルであり、海の辺境は南シナ海なのであろう。中国は既に、南シナ海で7つの岩礁を埋め立て、3千メートル級の滑走路をもつ人工島などを出現させている。
先のシャングリラ対話では、中国軍副参謀総長の孫建国海軍上将が人工島建設の目的を「軍事防衛の必要を満たすため」であると軍事目的を明確にした。2千メートルの滑走路があれば380人のB777-200型機が就航でき、軍用機なら楽に離着陸できるから“不沈空母”が南シナ海の真ん中に出現することになる。
孫上将はこの埋め立ての「即刻中止」を求める米国に、「自らの主観に基づく無責任な発言をするのは控えよ」と突き放し、領有権を争うベトナムやフィリピンには「小国は挑発的な行為をとるべきではない」と批判した。“不沈空母”は覇権奪取の野望なのか。
もはや習主席周辺の強硬派は「49年目標」を隠そうともせず、公然と「100年マラソン」と呼んでいるという。先の中国国防白書による「軍事抗争への準備」という威嚇は、300年前の帝国主義時代に引き戻されたようである。実際に彼らは中国を、世界の国内総生産(GDP)の3分の1を占めていた300年前の時代への回帰を目指している。
米有識者から警告
だが、中国による「力による現状変更」の挑戦が、米国の戦略的思考を変えつつあると米紙が報じた。中国の一方的な海洋支配への試みから、米国の政策当局者、米国議会、安全保障専門家、ビジネスリーダー、そして有権者の意識までを硬化させている。
『100年マラソン』が2月に刊行されたのを引き金に、3月には有力研究所の外交問題評議会が「中国に対する大戦略の転換」と題する緊急提言を行い、国防予算の上限を外し、核バランスを維持するよう求めた。同じ3月、海軍、海兵隊、沿岸警備隊が戦略報告書「海洋戦力のための連携戦略」を発表して、中国の接近阻止・領域拒否(A2AD)戦略に対抗する姿勢を鮮明にしている。
それらの対中戦略見直しは、「中国が力を誤用する能力を抑止する賢明さが必要」と提言する。これら対中政策の転換を促す警告は、オバマ大統領が不退転の行動を起こすことを求めている。
中国「2049年まで目標」
ピルズベリー氏は今年2月に出版した、『100年マラソン-超大国・米国に取って代わる中国の秘密戦略』で、中国が「中国の夢」などというスローガンの陰で、米国主導の世界秩序を覆そうとしていることを具体的に論証した。
ピルズベリー氏は中国の極秘文書から、共産党指導部に影響力をもつ強硬派が、建国から100年目の2049年までに、米国に代わって世界の支配者になることを目指していると暴露する。その強硬派の一人が習近平主席に影響力をもっているという。
習氏のいう「中華民族の復興」は、西洋や日本から受けた恥辱の一世紀が終わりを告げ、建国100年の夢の実現を目指す。彼らには「国境」という概念が薄い上、膨張する中華帝国は遠く「辺境」へと統治の範囲を拡大していく。陸の辺境はチベット、ウイグルであり、海の辺境は南シナ海なのであろう。中国は既に、南シナ海で7つの岩礁を埋め立て、3千メートル級の滑走路をもつ人工島などを出現させている。
先のシャングリラ対話では、中国軍副参謀総長の孫建国海軍上将が人工島建設の目的を「軍事防衛の必要を満たすため」であると軍事目的を明確にした。2千メートルの滑走路があれば380人のB777-200型機が就航でき、軍用機なら楽に離着陸できるから“不沈空母”が南シナ海の真ん中に出現することになる。
孫上将はこの埋め立ての「即刻中止」を求める米国に、「自らの主観に基づく無責任な発言をするのは控えよ」と突き放し、領有権を争うベトナムやフィリピンには「小国は挑発的な行為をとるべきではない」と批判した。“不沈空母”は覇権奪取の野望なのか。
もはや習主席周辺の強硬派は「49年目標」を隠そうともせず、公然と「100年マラソン」と呼んでいるという。先の中国国防白書による「軍事抗争への準備」という威嚇は、300年前の帝国主義時代に引き戻されたようである。実際に彼らは中国を、世界の国内総生産(GDP)の3分の1を占めていた300年前の時代への回帰を目指している。
米有識者から警告
だが、中国による「力による現状変更」の挑戦が、米国の戦略的思考を変えつつあると米紙が報じた。中国の一方的な海洋支配への試みから、米国の政策当局者、米国議会、安全保障専門家、ビジネスリーダー、そして有権者の意識までを硬化させている。
『100年マラソン』が2月に刊行されたのを引き金に、3月には有力研究所の外交問題評議会が「中国に対する大戦略の転換」と題する緊急提言を行い、国防予算の上限を外し、核バランスを維持するよう求めた。同じ3月、海軍、海兵隊、沿岸警備隊が戦略報告書「海洋戦力のための連携戦略」を発表して、中国の接近阻止・領域拒否(A2AD)戦略に対抗する姿勢を鮮明にしている。
それらの対中戦略見直しは、「中国が力を誤用する能力を抑止する賢明さが必要」と提言する。これら対中政策の転換を促す警告は、オバマ大統領が不退転の行動を起こすことを求めている。