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いわき市・子年生まれの”オヤジ”

草莽崛起
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中国の“不沈空母”は覇権奪取の野望

2015年06月07日 06時14分04秒 | 国際・政治
 5月末にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)から伝えられた中国の振る舞いは、中国問題の第一人者、マイケル・ピルズベリー氏(ハドソン研究所中国戦略センター長)の所論を裏書きするかのようだ。


中国「2049年まで目標」

 ピルズベリー氏は今年2月に出版した、『100年マラソン-超大国・米国に取って代わる中国の秘密戦略』で、中国が「中国の夢」などというスローガンの陰で、米国主導の世界秩序を覆そうとしていることを具体的に論証した。

 ピルズベリー氏は中国の極秘文書から、共産党指導部に影響力をもつ強硬派が、建国から100年目の2049年までに、米国に代わって世界の支配者になることを目指していると暴露する。その強硬派の一人が習近平主席に影響力をもっているという。
 習氏のいう「中華民族の復興」は、西洋や日本から受けた恥辱の一世紀が終わりを告げ、建国100年の夢の実現を目指す。彼らには「国境」という概念が薄い上、膨張する中華帝国は遠く「辺境」へと統治の範囲を拡大していく。陸の辺境はチベット、ウイグルであり、海の辺境は南シナ海なのであろう。中国は既に、南シナ海で7つの岩礁を埋め立て、3千メートル級の滑走路をもつ人工島などを出現させている。

 先のシャングリラ対話では、中国軍副参謀総長の孫建国海軍上将が人工島建設の目的を「軍事防衛の必要を満たすため」であると軍事目的を明確にした。2千メートルの滑走路があれば380人のB777-200型機が就航でき、軍用機なら楽に離着陸できるから“不沈空母”が南シナ海の真ん中に出現することになる。

 孫上将はこの埋め立ての「即刻中止」を求める米国に、「自らの主観に基づく無責任な発言をするのは控えよ」と突き放し、領有権を争うベトナムやフィリピンには「小国は挑発的な行為をとるべきではない」と批判した。“不沈空母”は覇権奪取の野望なのか。
 もはや習主席周辺の強硬派は「49年目標」を隠そうともせず、公然と「100年マラソン」と呼んでいるという。先の中国国防白書による「軍事抗争への準備」という威嚇は、300年前の帝国主義時代に引き戻されたようである。実際に彼らは中国を、世界の国内総生産(GDP)の3分の1を占めていた300年前の時代への回帰を目指している。


米有識者から警告

 だが、中国による「力による現状変更」の挑戦が、米国の戦略的思考を変えつつあると米紙が報じた。中国の一方的な海洋支配への試みから、米国の政策当局者、米国議会、安全保障専門家、ビジネスリーダー、そして有権者の意識までを硬化させている。

 『100年マラソン』が2月に刊行されたのを引き金に、3月には有力研究所の外交問題評議会が「中国に対する大戦略の転換」と題する緊急提言を行い、国防予算の上限を外し、核バランスを維持するよう求めた。同じ3月、海軍、海兵隊、沿岸警備隊が戦略報告書「海洋戦力のための連携戦略」を発表して、中国の接近阻止・領域拒否(A2AD)戦略に対抗する姿勢を鮮明にしている。

 それらの対中戦略見直しは、「中国が力を誤用する能力を抑止する賢明さが必要」と提言する。これら対中政策の転換を促す警告は、オバマ大統領が不退転の行動を起こすことを求めている。

習近平氏が招いた「米中冷戦」

2015年05月21日 13時56分31秒 | 国際・政治
 先月末から今月中旬までの、日米中露の4カ国による一連の外交上の動きは、アジア太平洋地域における「新しい冷戦時代」の幕開けを予感させるものとなった。

 まず注目すべきなのは、先月26日からの安倍晋三首相の米国訪問である。この訪問において、自衛隊と米軍との軍事連携の全面強化を意味する「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の歴史的再改定が実現し、日米主導のアジア太平洋経済圏構築を目指す、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の早期締結でも合意した。

 政治、経済、軍事の多方面における日米の一体化は、これで一段と進むこととなろう。オバマ大統領の安倍首相に対する手厚い歓待も日米の親密ぶりを強く印象づけた。両国関係はこれで、文字通りの「希望の同盟関係」が佳境に入った。

 日米関係強化の「裏の立役者」はやはり中国の習近平国家主席である。2012年11月の発足以来、習政権はアジアにおける中国の覇権樹立を目指して本格的に動き出した。13年11月の東シナ海上空での一方的な防空識別圏設定はその第一歩だったが、それ以来、南シナ海の島々での埋め立てや軍事基地の建設を着々と進めるなど、中国はアジアの平和と秩序を根底から脅かすような冒険的行動を次から次へと起こしている。
 習主席はまた、「アジアの安全はアジア人自身が守る」という「アジア新安全観」を唱え、アメリカの軍事的影響力をアジアから締め出す考えを明確にした。そして今春、経済面での「アメリカ追い出し作戦」に取りかかった。アメリカの同盟国、イギリスなどを含む57カ国が創設に参加したAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立構想を一気に展開し始めた。

 日米主導のアジア経済秩序を打ち壊し、中国によるアジアの経済支配を確立する戦略であるが、アメリカの経済的ヘゲモニーにまで触手を伸ばすことによって習政権は米国との対立をいっそう深めたことになる。

 ここまで追い詰められると、さすがのオバマ政権も反転攻勢に出た。そうしなければ、アジア太平洋地域におけるアメリカのヘゲモニーが完全に崩壊してしまうからだ。日米同盟の強化はまさにその反転戦略の一環であろう。日米両国による軍事協力体制の強化とTPP経済圏の推進はすべて、「習近平戦略」に対する対抗手段の意味合いを持っている。

 これを受け、習主席は5月初旬に主賓格としてロシアの対独戦勝70周年記念の軍事パレードに参加し、プーチン大統領との親密ぶりを演じてみせる一方、地中海におけるロシア軍との合同軍事演習にも踏み切った。習主席からすれば、日米同盟に対抗するためにはロシアとの「共闘体制」をつくるしかないのだろうが、これによって、かつての冷戦構造を「複製」させてしまった観がある。
 その数日後、米軍は南シナ海での中国の軍事的拡張に対し、戦艦や偵察機を使っての具体的な対抗措置を検討し始めた。ようやくアメリカは本気になってきたようである。ケリー米国務長官は先の訪中で、南シナ海での「妄動」を中止するよう中国指導部に強く求めた。

 それに対し、中国の王毅外相は「中国の決意は揺るぎないものだ」と拒否した一方、習主席は「広い太平洋は米中両国を収容できる空間がある」と応じた。要するに習政権は自らの拡張政策の継続を高らかに宣言しながら、アメリカに対しては太平洋の西側の覇権を中国に明け渡すよう迫ったのである。

 これでアジア太平洋地域における米中の覇権争いはもはや決定的なものとなった。対立構造の鮮明化によって、新たな「米中冷戦」の時代が幕を開けようとしている。

中国が仕掛ける「歴史戦」に決着をつけた安倍首相の米議会演説

2015年05月16日 15時56分16秒 | 国際・政治
先月29日午前(日本時間30日未明)、安倍晋三首相が米国議会の上下両院合同会議で行った歴史的な演説はある意味、この2年間中国が中心となって挑んできた「対日歴史戦」に見事な決着をつけることとなった。

▼アメリカを「歴史戦」の主戦場とする中国

しばしば取り上げてきたように、第2次安倍政権の樹立以来、特に2013年末の安倍首相の靖国神社への公式参拝以来、中国の習近平政権は全力を挙げて「対日歴史戦」を展開してきた。

国内において習政権は、2014年の1年間で、日中戦争勃発のきっかけとなった盧溝橋事件が起きた7月7日、戦前の日本陸軍「支那派遣軍」が当時の中国政府に「降伏」した9月3日、いわゆる「南京大虐殺」が始まったとされる12月13日という3つの日を選び出して、「国家的記念日」を一気に制定した。そしてこの3つ「国家的記念日」に習近平国家主席の出席の下で大規模な「国家レベル」の記念行事を行い、全国的な反日ムードを盛り上げた。

国外においては、安倍首相の靖国神社参拝後、中国政府は世界主要国の中国大使や親中派の知識人・メディアを総動員して、いわば「歴史認識問題」を材料にした日本攻撃の宣伝戦を地球規模で全面展開してきた。
「日本は歴史を反省していない」、「日本は戦後秩序を破壊したい」といったレッテルの貼付けを行うことによって、「日本こそがアジアの問題児・悪人」というマイナスイメージを世界的に広げようとしてきた。

その中で、習政権が最も力を入れているのはやはり、アメリカにおける反日宣伝戦の展開である。
理由は後述するが、アメリカこそが中国にとって「歴史戦」の主戦場だからである。そのために、中国政府は駐米大使の崔天凱氏を中心に凄まじい対日攻勢を仕掛けた。

その一方、習政権は対日外交においても、いわば「歴史認識問題」を「最重要問題」として全面的に持ち出している。

たとえば2014年11月と2015年4月、習近平主席が2回ほど安倍晋三首相との首脳会談に臨んだが、このわずか2回ほどの短い首脳会談のいずれにおいても、習主席の話の半分以上が「歴史問題」であったことが確認されている。

特に中国側の発表を見ている限りでは、習主席が終始「歴史問題」にこだわり、あたかも「歴史問題」を持ち出して日本を叩くという唯一の目的のために安倍首相と会ったかのようにさえ感じられる。

胡錦濤政権よりもことさらに「歴史問題」にこだわり、「歴史問題」を持ち出して安倍政権を叩こうとする習政権は一体何を狙っているのか。
それはやはり、習政権自身が進めようとしている国際戦略と大いに関係があろう。


▼覇権戦略の「隠れ蓑」として歴史問題を利用

度々指摘しているように、習近平政権の成立以来、中国は?小平時代以来の「?光養晦」(能在る鷹は爪隠す)戦略を放棄して、アジアにおける米国主導の国際秩序の破壊とそれにとってかわる中国中心の「新中華秩序」の樹立を目指そうと躍起になっている。
かつての中華帝国がアジアを支配したのと同じように、中国はもう一度アジアの頂点に立とうとしているのである。

2014年5月、習近平主席は自ら「アジアの安全はアジア人自身が守る」というキャッチフレーズの「アジアの新安全観」を提唱したが、それは誰の目から見ても、今までアジアの安全保障と深く関わったアメリカ勢をアジアから追い出すための布石であろう。

そして今、中国が中心となって進めているアジアインフラ投資銀行構想は、まさに日米主導のアジア経済秩序を引っくり返し、中国中心の「新秩序」を作り上げようとするための戦略と言える。つまりこのアジア地域において、中国は今後、アメリカに対抗してその覇権に挑戦しようとする姿勢を明確にしているわけだ。

このような「挑戦者」と「既成秩序の破壊者」としての習政権の外交姿勢は当然、アメリカの警戒心を高め、強い反発を招くこととなった。

その結果、アメリカは日本との同盟関係の重要性を再認識してその強化に傾いた。
2014年4月のオバマ大統領の訪日において、「尖閣防衛」と「同盟関係の強化」を明確に訴えた日米共同声明が発表されたことはまさにその表れの1つであったと言えよう。

そして中国中心のアジアインフラ投資銀行成立の動きが世界に広がった後でも、日米両国だけは警戒の姿勢を崩さず一定の距離をおいた。

その一方、南シナ海において、習政権がアジア覇権の樹立のために進めてきた、「島嶼埋め立て」や諸国に対する挑発的行為などの一連の拡張的政策がアメリカの不興を買っただけでなく、アジア諸国の反発を招くこととなった。

今年4月に開かれたASEAN諸国外相会議が一致して中国による「埋め立て」の中止を強く求めたことからも、周辺諸国の憂慮と反発はよく分かる。
少なくとも南シナ海においては、中国こそが平和の秩序を破壊しようとする問題児として認識されているはずである。

つまり、これまでの2年間、習近平政権は自らの進める覇権戦略のいわば「隠れ蓑」として日本との「歴史認識問題」を大いに利用してきた。

現実の国際政治において、既成の平和秩序を破壊して覇権主義的政策を遂行しているのは中国自身であるにもかかわらず、というよりもむしろ、まさにそれが中国自身であるからこそ、中国政府としては自らの正体を覆い隠して諸国の目を誤摩化すためには、日本の「歴史問題」をことさらに強調してそれを全面的に持ち出す必要があった。

かつて日本がアジアを「侵略」したという往時の歴史を持ち出すことによって、そしてこの日本は今でも歴史を「修正」して「戦後秩序」を引っくり返そうとしているとの嘘の宣伝を展開することによって、「悪いのは日本であって中国ではない」との国際世論を作り上げるのが目的だ。

その際、中国にとってこのような反日宣伝戦を展開する主戦場の1つはアジア地域であることは言うまでもないが、もう1つの主戦場はやはりアメリカだ。

アメリカにおいて日本の安倍政権の「歴史修正主義」に対する批判を広げ、日本に対する警戒心を煽り立てることができれば、アメリカの中国に対する警戒がその分和らぐという算段もあり、歴史問題で日本に対するアメリカの信頼を揺るがせることによって日米同盟に亀裂を生じさせることが出来れば、習政権にとってなおさら万々歳の結果であろう。

アメリカとアジア諸国からの反発をかわして自らの覇権戦略をより進めやすくするための「環境整備」として、歴史問題で日本を徹底的に叩くことはまさに習近平政権の既定戦術である。

今年9月3日、中国政府は「抗日戦争勝利70周年」を記念して周辺国首脳を招いて北京で大規模な軍事パレードを開催する予定だが、各国首脳を巻き込んでのこの大々的な反日イベントの開催はまさに、習政権による「環境整備」の一貫であり、その総仕上げでもあろう。

そして、その直後に予定されている習主席のアメリカ公式訪問は、彼はおそらく、9月3日の「反日の国際大盛会」の余勢をもってアメリカに乗り込み「歴史問題」を材料にして日本攻撃を一気に盛り上げる魂胆であろう。

▼安倍首相の米議会演説の効果

しかしここに来て、習政権のこの戦術が挫折してしまう可能性が出てきている。中国の進める反日宣伝戦が国際的に失敗に終わってしまう流れが、米議会での安倍首相の演説によって作り出されたからである。


今回の訪米に当たり、中国がアメリカを主戦場の1つとして挑んできた「歴史戦」にどう対処するか、安倍首相は最初から周到に用意していた痕跡がある。

ワシントンに入ってからの4月29日、安倍首相は第2次世界大戦で戦死したアメリカ兵を追悼する記念碑を訪れて黙とうした。報道によると、安倍首相は「パールハーバー」と刻まれたモニュメントの前で、しばらく身じろぎもせずたたずんでいたというが、こうした「身体言語」の発する意味はやがて、米議会での演説において明らかになったのである。

40分間にわたる演説の中盤に入り、安倍首相は案の定、この訪問の話を持ち出した。

「先刻私は、第二次大戦メモリアルを訪れました。神殿を思わせる、静謐(せいひつ)な場所でした」と切り出してから、次のように静かに語った。

「一角にフリーダム・ウォールというものがあって、壁面には金色の、4000個を超す星が埋め込まれている。
その星一つ、ひとつが、斃れた兵士100人分の命を表すと聞いたとき、私を戦慄が襲いました」

「金色の星は、自由を守った代償として、誇りのシンボルに違いありません。しかしそこには、さもなければ幸福な人生を送っただろうアメリカの若者の、痛み、悲しみが宿っている。家族への愛も」

「真珠湾、バターン・コレヒドール、珊瑚海…、メモリアルに刻まれた戦場の名が心をよぎり、私はアメリカの若者の、失われた夢、未来を思いました」

「歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。私は深い悔悟を胸に、しばしその場に立って、黙祷を捧げました」

「親愛なる、友人の皆さん、日本国と、日本国民を代表し、先の戦争に斃れた米国の人々の魂に、深い一礼を捧げます。とこしえの、哀悼を捧げます」

以上が、安倍首相が演説の中で、アメリカとの「歴史問題」、つまり70年前に終結したあの残酷な戦争について触れた一節であるが、そこには、歴史から逃げようとするような姿勢はみじんもなければ、歴史を「歪曲」しようとする「歴史修正主義者」の面影もない。

あるのはただ、日本の指導者としてのかつての戦争に対する「悔悟」であり、そして日本国民を代表して捧げるアメリカの若き戦死者に対する心からの哀悼であった。

テレビの映像では、安倍首相による演説のこの部分を受け、静聴した米国議員がいっせいに立ち上がって拍手した場面が確認されている。
「歴史」に対する安倍首相のこの語りは、アメリカ人の心を打つのには十分であり、そしてアメリカの一部で流布されている
「安倍=歴史修正主義者」のイメージを払拭するのにも十分であった。

歴史との正しい向き合い方

そしてその後、安倍首相の演説はこう続いた。「みなさま、いまギャラリーに、ローレンス・スノーデン海兵隊中将がお座りです。
70年前の2月、23歳の海兵隊大尉として中隊を率い、硫黄島に上陸した方です。
近年、中将は、硫黄島で開く日米合同の慰霊祭にしばしば参加してこられました。こう、仰っています」

「硫黄島には、勝利を祝うため行ったのではない、行っているのでもない。その厳かなる目的は、双方の戦死者を追悼し、栄誉を称えることだ」

「もうおひとかた、中将の隣にいるのは、新藤義孝国会議員。かつて私の内閣で閣僚を務めた方ですが、この方のお祖父さんこそ、勇猛がいまに伝わる栗林忠道大将・硫黄島守備隊司令官でした」

「これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう」

「熾烈に戦い合った敵は、心の紐帯が結ぶ友になりました。
スノーデン中将、和解の努力を尊く思います。ほんとうに、ありがとうございました」

演説のこの部分では、中国の挑んできた歴史戦に対して、安倍首相はまさに余裕綽々の勝利を手に入れたのではないかと、筆者は演説の原稿を読みながら強く感じずにはいられなかった。

その前段では、アメリカとの戦争の出来事に自ら触れて戦死したアメリカ兵士に追悼を捧げることによって、安倍首相は中国などによって押しつけられた「歴史修正主義者」の誤ったイメージを完全に払拭したのは前述の通りだが、それに続いて、ここでは安倍首相は見事に、歴史を乗り越えての両国の「和解」を演出してみせたからである。

その演出のために、事前に新藤義孝議員をワシントンに呼んできてローレンス・スノーデン海兵隊中将の隣に座らせたのはまさに用意周到というべきものであるが、この2人を握手させる場面を米議会で演出させることによって、そして自らの語った「熾烈に戦い合った敵は、心の紐帯が結ぶ友になりました」との詩的な言葉によって、安倍首相はアメリカとの「歴史の和解」を強く印象づけたのと同時に、過去の「歴史問題」に対する一国の指導者の正しい姿勢を世界に向かって示すことも出来た。

そう、「和解」によって克服することこそ、歴史との正しい向き合い方であると、安倍首相は示したのである。新藤義孝議員とスノーデン海兵隊中将の拍手によって象徴された日米両国の和解は、まさに「歴史の和解」の1つの理想的な形、1つの模範的な見本として世界中の人々に提示された。

中国の習近平主席は当然その場にはいなかったが、筆者の耳には、安倍首相の発した言葉の一つひとつが見事に、習主席たちの歪んだ論理に対する痛烈な批判にも聞こえた。
日米の和解と比べれば、いつまでも「歴史」に固執する中国の了簡はいかに狭いものなのか。
中国の主張する「歴史認識」はどれほど歪んでいるか。それはまさに日米の和解との対比において浮き彫りにされた。

思えば、習主席はいつも日本に対して「正しい歴史認識」を求めているが、歴史をきちんと見つめた上でそれを乗り越えて未来へ向かって和解の道を歩むことこそ本当の正しい歴史認識ではないのかと、安倍首相は見事に、より高い次元から習主席の歴史認識論を完全に論破した。

その後、演説は「アジア諸国民に苦しみを与えた事実」に触れてから、戦後日本の歩んだ「平和の道」を強調して、日本と米国は今後、アジアと世界の平和を守っていくためにどうすべきなのか、と語った。
まさにこの「未来志向」の演説の部分で、安倍首相は「武力や威嚇は、自己の主張のため用いないこと」との原則を強調して中国の習政権の乱暴な覇権主義政策を暗に批判しながら、それに対処するために、日本はアメリカとの間で、「法の支配・人権・自由を尊重する価値観」の共有に基づく「希望の同盟」関係のよりいっそうの強化を訴えてその歴史的演説を結んだ。

▼今秋訪米予定の習近平は…

この演説は大成功であった。

議員たちの総立ちの拍手からもその反響の大きさが窺える。その場にいたバイデン副大統領やベイナー下院議長、マケイン上院軍事委員長からも高く評されたが、その中で、たとえばローラバッカー共和党下院議員による次の評価の言葉は特に注目すべきだ。

「レーガン元大統領のスピーチ・ライターだった経験から、Aプラスを与えられる。
歴史問題を威厳ある形で語った。第二次大戦に関し、首相はもう卑屈な態度を取る必要はない」

アメリカの下院議員からこのような言葉を引き出した時点で、少なくとも中国の展開する「歴史戦」に対する反撃として、安倍首相は決定的な勝利を手に入れたと言えよう。
そう、安倍首相は中国などによって押し付けられた「歴史修正主義」のマイナスイメージを完全に払拭してアメリカの政治家たちの信頼を勝ち取っただけでなく、この名演説により、日本はまさに「威厳ある態度」をもってアメリカとの「歴史問題」に永遠の決着をつけることが出来た。

そしてそのことは、「歴史認識問題」を利用してアメリカの日本に対する不信感を煽り、日米同盟に楔を打ち込もうとする習近平政権の目論みが完全に失敗に終わったことを意味している。
今後、彼らがどれだけアメリカで「対日歴史戦」を展開したとしても、アメリカの対日姿勢に影響を与えるほどの効果はもはや期待できないであろう。

そして、アメリカとの「歴史の和解」を演じることによって、この和解の意味するところの「歴史の克服」を世界中に示すことによって、安倍首相の演説はまた、世界範囲における中国の対日歴史戦を無力化するほどの効果をもった。

今後、習近平政権がいくら「歴史だ、日本が悪かったのだ」と騒いでも、アジアの国々に対してもはや説得力を持たなくなり、世界からの共鳴と支持を呼ぶことはいっそう難しくなるだろう。
逆に、「歴史問題」で中国が騒げば騒ぐほど、彼ら自身の認識と度量の狭さと国柄の異様さを曝け出すこととなろう。

「歴史問題」を利用した日本叩きが一旦失効してしまえば、今度は、中国自身が進めようとする覇権主義政策がむしろ現実の問題として浮き彫りになる。70年前の「歴史」においてではなく、まさに21世紀現在のアジアの国際政治において、一体どの国が平和を脅かしているかは一目瞭然だからである。

短期的には、米議会における安倍首相の演説が成功したこの状況で、今秋に予定されている習近平国家主席の訪米はかなり難しい問題を抱えることとなった。安倍首相が米議会で演説した以上、同じ国賓として習主席は当然同様の待遇をアメリカに求めなければならない。
さもなければメンツが丸つぶれとなる。

しかし今秋のアメリカ議会で、習主席は一体何を語るのだろうか。アメリカに対して日本との「歴史問題」を蒸し返すことの無意味さは中国も既に分かったはずだが、かといってアメリカと「共有の価値観」や「希望の同盟」を語れる立場でもない。

歴史を乗り越えて未来に向け同盟関係を固めた日米両国を前にして、自分たちは一体どうやって対処すればよいのか、それこそが習近平外交の抱える最大の悩みとなるであろう。

韓国の「無人偵察機」事故で使い物にならず、それで「北の警戒万全」とは…

2015年05月13日 19時12分01秒 | 国際・政治
情報収集低下させた“場当たり主義

 韓国海軍が情報収集艦で運用する2種(航空機型とヘリ型)の無人偵察機が、実際は事故やGPS機能の不備などで運用できない状態にあることが判明した。対北朝鮮警戒を目的に配備されたが、航空機型に関しては全機が運用できないまま5年も放置していた。また空軍の早期警戒機「ピースアイ」も米メーカーが製造ラインを閉じたため交換部品が調達できない事態に。情報収集で海と空の“目”を失いかねない危機的状況だが、その背景には、いつもの“場当たり主義”が指摘されている。


無人機が墜落

 韓国ネイバーニュースなど現地メディアは4月中旬、海軍の情報収集艦が5年にわたって無人機(UAV)の運用を怠っていたとして「目を閉じたまま 性能発揮できず」などと報じた。

 韓国海軍は「新紀元」と「新世紀」の2隻の情報収集艦を運用。情報収集には軍と国家情報院(旧KCIA)が関わっているとされる。

 このうち新世紀艦には北朝鮮軍の情報を収集するため、2003年から米国AII社の無人偵察機RQ-7「シャドー400」を3機配備。全長約3・5メートル、幅約4メートルと小型で、滞空時間は約7時間。韓国陸軍も使用していたため、海軍への導入に問題はないと判断された。

 韓国の月刊誌「月刊朝鮮」などによると、海軍の無人偵察機は、02年6月に北朝鮮との間で哨戒艇同士の小規模な砲撃戦が発生した延坪島近海など、軍事境界線(北方限界線=NLL)に近い西海5島近辺を警戒するため導入され、北朝鮮の港や大口径砲、ミサイル基地などを映像で監視しているとされた。
 ところが07年と10年に操縦装置やエンジンの故障で相次いで2機が墜落。残る1機も不調で飛ばせず、10年以降はUAVを運用していなかったことが明らかに。3機とシステム一式で計260億ウォン(約28億3千万円)がスクラップになっていたのだ。

 この理由について、月刊朝鮮は「無人偵察機は艦上の射出機から発射し、海上に墜落後は網で回収するため、艦上運用では制限が多い」と指摘する。つまり、2本の棒の間に渡した網の中に機体を押し込んで回収するため、揺れる海上での運用が難しいというわけだ。しかし、そうしたことは当然予測できたことで、なぜ陸軍装備を安易に海軍へ導入したのかという点はメディアの間で非難の的となった。

 また、こうした装備は事故での喪失をある程度見越し多めに導入しておくことも各国の常識だが、韓国ではわずか3機のみの導入で、補充もなかった。


遊覧観光船との批判

 無人機が運用できない事態を放置したまま、「対北朝鮮の警戒は万全」との姿勢をとってきた軍には非難が集中。また、新世紀艦は広いプラットホーム(甲板)を設けるなどUAV運用を重視した艦だが、5年もUAV抜きで航海していたことから、「遊覧でもしていたのか」「燃料費の税金は…」といった批判も出ている。


航法に商用GPS

 一方、新紀元艦も致命的な欠陥を露呈した。同艦はシャドー400のような航空機型ではなく、ヘリコプター型のUAV「S-100」(オーストリア・シーベル社製)を4機導入。全長3メートルとコンパクトで滞空時間は6時間。東亜日報(電子版)は「UAE(アラブ首長国連邦)も130機を導入した」とその性能と実績を紹介したが、13年10月に問題が発覚した。
 聯合ニュース(電子版)や世界日報などによると、同機は「GPS電波妨害に脆弱(ぜいじゃく)であることが分かった」というのだ。国会国防委所属のソン・ヨングン議員が海軍の資料を基にこの問題を取り上げ、「航法装置が商用GPSであるため、電波妨害などの電子戦に無防備だ」と指摘したという。

 どうやら原因の根本は「米国の同盟国で韓国だけが米軍の軍用GPSの利用を認められていない」(朝鮮日報電子版)点にあるようだ。

 同紙などによると、韓国では最新の戦闘爆撃機F15K、主力戦闘機F16Kなど空軍はもちろん、次期主力戦車のK2や地上戦術情報システム、さらに潜水艦やイージス艦までが商用GPSの運用能力しか付与されていない。

 韓国軍は「米軍用GPSの導入には時間や予算が余計にかかる」と釈明するが、現実は米軍からGPSの電波のうち軍用モードの使用暗号の提供を断られている状態だ。先の「シャドー400」の墜落も、このGPS問題が原因と見る向きもある。


衛星を売り飛ばす

 商用GPSでは受信障害などが度々発生してきたが、軍用コードであるL5は周波数幅も広く、出力も高いため、商用コードより脆弱性は低いとされる。

 韓国がそうした高性能の米軍GPSの軍用コードを教えてもらえないのは、戦闘機のブラックボックスを勝手に分解したり、武器を分解して偽造品を作ったりし、米国から軍事機密情報漏洩(ろうえい)を危ぐされているためだが、決定的な出来事は10年の衛星売却だ。
 中央日報(電子版)によると、韓国初の通信商用衛星と自賛してきた「ムグンファ衛星」の2号と3号を、運営会社のKTが中国・香港の企業に売却した。ところが、この衛星の製造元は戦闘機製造など米国航空宇宙分野の雄、ロッキード・マーチン社。米国の宇宙科学技術の粋が詰まった衛星とその運用情報を簡単に中国へ売り飛ばすのだから、米軍の機密など教えてもらえるわけがないのだ。


そして“空の目”も

 こうした行為がたたり、韓国空軍自慢の早期警戒機、ボーイング737 AEW&C「ピースアイ」にも鉄クズ化の危機が迫っている。

 空飛ぶレーダーサイトともいわれ、いつ北朝鮮の攻撃を受けるかわからない韓国にとっては生命線ともいえる兵器。だが、不具合と予備部品の欠如で共食い整備を繰り返した結果、全4機中3機が飛行不能状態にあると現地メディアが報じたことは以前紹介したが、さらに問題が発生した。

 韓国聯合ニュースやNEWSISなどによると、ピースアイの整備に必要な重要な保守部品のうち64種類が生産中止になったというのだ。導入されてわずか4年。日本では家電製品ですら冷蔵庫で9年、テレビやデジカメで8年などと、製造終了後の部品保有期間が定められている。それに対し韓国空軍と米国の“商売”では、製造終了後どころか「買って4年」で打ち切りとは…。

 現地メディアによると、製造終了は韓国国防研究院が発刊した「国防予算分析・評価および中期政策方向」で発表された。製造中止となった部品には探索レーダーシステムなどを構成する重要部品も含まれていた。

値切ってナンボ

 こうした事態を招いたのも韓国側の“事情”にある。納入時、韓国側はボーイング側の提示額17~19億ドルに対し、16億ドルを主張し、結果的にその額に値下げさせたが、その代わり必要なスペアパーツを省かれたというのだ。

 プリンターで例えれば、メーカー提示額では5年分のインクがついてくるのに対し、値切ったため1回分のインクしか付いていないようなもの。兵器は運用と保守にこそ予算が必要なのだが…。

 さらに機数の少なさも追い打ちをかけた。ピースアイを運用するのは韓国とトルコ、オーストラリアの3カ国で、その数は計14機。部品生産ラインをいつまでも保持しておける機数ではない。他国のように最初に買っておけば…というのは後の祭りだ。

 韓国メディアが一斉に「日本の早期警戒機より性能がいい」とたたえた名機も、韓国型運用で鉄くず化しつつある。UAVといい衛星といい、こうした姿勢が改善されない限り、兵器の早期ガラクタ化は避けられない。

中露首脳会談 身勝手な「歴史」反論せよ

2015年05月10日 18時18分51秒 | 国際・政治
 力による現状変更への非難や警戒を国際社会から集めていながら、改めるどころか、開き直っている。

 モスクワで開かれた中露首脳会談の印象だ。

 習近平国家主席とプーチン大統領は戦勝国の立場を強調し、過去の歴史をめぐり日本を牽制(けんせい)する姿勢を打ち出した。

 一方、東シナ海、南シナ海での国際ルールを無視した中国の海洋進出、ロシアによるウクライナへの軍事介入が改まる気配はみられなかった。

 自由や法の支配といった普遍的価値の実践を、いかに中露に受け入れさせるか。日米や他の先進国には、結束の必要性を再認識する日になったといえよう。

 先進7カ国(G7)の首脳は、軒並み戦勝70周年式典を欠席し、出席したのは中露の友好国など約20カ国にとどまった。10年前の同じ式典には、日米を含む倍以上の国から首脳が参加した。

 そのこと自体、ウクライナ問題がロシアの国際的地位の凋落(ちょうらく)を招き、中露が国際秩序を乱す重大な懸念をもたらす存在であることを浮き彫りにした。プーチン氏にとっては、習氏の出席と首脳会談の意味は大きかっただろう。

 会談では「ファシズムや軍国主義に対して共闘した」ことを確認し、戦略的互恵関係を深化させるなどの共同声明に署名した。
 第二次大戦を戦った友誼(ゆうぎ)を確認したいなら、そうすればよい。だが、今日に至るまでに自らがとった、正義と相反する行動には頬かぶりし、一方的に日本を対象にして「歴史の歪曲(わいきょく)」を批判する問題のすり替えは容認できない。

 とくに、習氏は南京事件で「30万人の同胞が痛ましく殺戮(さつりく)された」と昨年から主張している。日本側の調査や研究から、現実にはありえないことだ。今夏に戦後70年談話の発表を控える安倍晋三首相を牽制し、反論を封じようという中国の意図は明白である。

 先の大戦の終結前後に、旧ソ連は中立条約を破棄して対日参戦し、北方領土を武力で不法占拠した。プーチン政権はこの事実に向き合わず、「戦勝」を盾に4島の実効支配を続けている。

 9月には中国での「抗日戦争勝利記念日」で中露が再び連携する可能性が高い。安倍首相は新たな日米同盟関係を背景に、国際秩序の担い手にふさわしい日本の立場を訴えてほしい。