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反日から蜜月? 中国にキムチまで侮辱される文在寅政権「日本に離れてもらっては困る」

2017年09月26日 14時25分04秒 | 国際・社会
 就任から4カ月半となる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の口から、日本を批判する言葉がほとんど出なくなった。5月に大統領に当選するまでは、慰安婦問題などであれほど日本への嫌悪感を露骨に示していたというのに、北朝鮮の核・ミサイル問題に加え、中国との関係悪化などで今や「反日」どころではないようだ。困っている韓国は、慰安婦問題を勝手に棚上げしたまま、また日本にすり寄り始めている。

お手上げ状態?

 朴槿恵前大統領の罷免により、5月の繰り上げ大統領選挙(本来なら今年12月)で当選し、翌日に就任した文在寅大統領。内外での問題が山積する中での政権スタートだったが、それを尻目に北朝鮮はミサイル発射などの挑発を連発し続けている。

 21日には、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長がトランプ米大統領に対し、「史上最高の超強硬対応措置の断行」を明言する初の直々の声明まで発表した。

 金委員長が言うように、北朝鮮の挑発が今後も続くことは必至だ。ただ、その頻度は朴槿恵(パク・クネ)前政権時代よりも多く、文在寅政権の発足以降はエスカレートし続けている。

 文氏の大統領就任から4日後の5月14日に新型中距離弾道ミサイルの「火星12」を発射▼7月4日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」を初めて発射▼同月28日にも火星14を発射▼8月9日には米領グアム周辺へのミサイル発射計画検討を公表▼同月26日に短距離ミサイル3発を発射▼同月29日には火星12を発射し、北海道上空を通過▼今月3日に6回目の核実験を強行▼15日には火星12を発射。北海道上空を通過し、襟裳岬東約2200キロの太平洋上に落下▼21日、金委員長がトランプ米大統領を呼び捨てで非難、警告。

 北朝鮮との対話にこだわっていた文大統領だったが、火星12が発射された15日には、ついに国家安全保障会議(NSC)の場で「こんな状況で対話は不可能だ」と現実を認め、「断固たる実効性ある対策」を訴えるに至った。

 韓国大統領府は否定したものの、ストレスによる文大統領の「円形脱毛症説」まで韓国各紙に報じられた。ただ、文氏が相当に疲れていることは、映像を見ても間違いなさそうだ。まさに、お手上げ状態同然なのだが、そんなことは言っていられない。


THAADは急いで完全配備。やればできる

 文在寅政権は今月、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備を完了させた。THAADは北朝鮮の弾道ミサイルに対処するもので、現在の朝鮮半島情勢を考えれば当然の措置だ。

 THAAD配備について、文氏は大統領就任まで反対世論を受け態度をはっきりさせず、政権発足後も環境評価やら何やらで完全配備が遅れていた。韓国政府の対処を見れば、「ようやく配備」というよりも「あっという間の配備」だった。世論の反発があろうが、大統領の即断、鶴の一声で設置はされた。やればできたのだ。

 文大統領は6月末のワシントンでのトランプ米大統領との首脳会談や、7月初旬のドイツでの20カ国・地域(G20)首脳会議以降、外交を現実路線にシフトさせている。

 「北朝鮮の核問題解決への道が開かれておらず、弾道ミサイルでの挑発に対する制裁方法への国際社会の協議が簡単ではないという“事実”を重く受け止めねばならない」

 「痛切に感じなければならないのは、われわれに最も切迫している朝鮮半島問題にもかかわらず、われわれには解決する力も合意を導く力もないことだ」

 THAADの急いでの配備もその現実路線の一環だが、ここで、また別の現実問題に直面している。THAAD配備に猛反発している中国との関係だ。


エスカレートする嫌がらせ

 中国の韓国への嫌がらせはTHAAD配備の計画段階から始まり、4月の発射台2基の配備、今月の6基完全配備と段階を経るごとにエスカレートしている。

 「国益と安保的な必要性に従い(THAADの完全配備を)決定した」(康京和外相)という韓国の主張など、中国側は全く聞き入れない。最大貿易相手国の中国に輸出の25%を頼る韓国は、すでに中国国内で小売業や製造業など各業種が大打撃を受け、撤退や営業停止、店舗売却を余儀なくされている。

 特に傘下のゴルフ場をTHAADの配備地として提供したロッテへの攻撃はすさまじく、大手スーパーのロッテマートは店舗前で抗議デモをされ、不買運動の嫌がらせも受けた。同社は業績の大幅悪化に追い込まれ、中国国内店舗の売却作業に着手した。年末までの損失額は1兆ウォン(約1000億円)に上ると推計されている。

 また、韓国を訪れる中国人観光客も激減が続いている。韓流スター関連のイベントも続々中止に追い込まれて久しい。「幼稚なTHAAD報復」(中央日報)などと批判する韓国ではあるが、どうにもできない。中国の報復による韓国の経済損失は8兆5000億ウォン(約8500億円)に上る見通しだ。また、韓国外務省によると、中国在住の韓国人が巻き込まれた犯罪も急増している。


なめられる韓国

 こうしたなか、韓国では「韓中関係10月危機説」が流れている。先述のロッテマートをはじめ、流通業の撤収、10月1日の「国慶節」を当て込んだ食品業界の不振、中秋節の連休(10月1~10日)に中国人観光客の訪韓が全く見込めない-などだ。

 中でも深刻視されているのが、10月10日に満期を迎える中韓の通貨スワップ(交換)。日本との通貨スワップが再開されていない韓国にとって、中国との通貨スワップまで終了することは望ましくなく、不安要素だ。

 中国の経済報復に対し、韓国政府は世界貿易機関(WTO)への提訴も選択肢の一つに考えていたが、断念したようだ。筆者としては、やり返すべきところだが、韓国政府は「国益」を考慮し、そこまでは踏み切れないという。

 そんな韓国の足元を中国は十分見透かしている。言うことを聞かず韓国にTHAADを配備されたからには、容赦はしないだろう。

 「キムチばかり食べて頭がおかしくなったのか」「大国間の勢力争いの中を漂う浮草」「寺や教会が多いのだから、韓国はその中で祈っていろ」(中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報の社説)と中国は韓国をなめきっている。

 韓国が誇るキムチまで侮辱されたことに、「非常に下品な言葉」「中国共産党指導部の水準そのもの」(朝鮮日報)、「特有の暴言を吐いた」(中央日報)など韓国メディアは一斉に猛反発した。この感情的で素直な反応も韓国らしいのだが、「中国による国を挙げての報復は始まったばかり」(東亜日報)だ。韓国は、なすすべがなく、もどかしさにさいなまれている。


日本に接近したい

 ソウルで第三者として中韓両国を眺めていて、これまで感じていたのは、韓国は中国の手のひらの上で転がされ、喜ばされ続けてきたということだ。中国は相変わらず韓国を見透かし、ちょろいものだと根底からなめている。THAAD配備への報復を通し、韓国はようやく中国の「えげつなさ」を肌で感じ、分かり始めた。

 そうしたなか、北朝鮮や中国との問題で困っている韓国が近付こうとしているのは日本。韓国は歴史的な経験から、朝鮮半島を取り巻く「大国」として、米国、日本、中国、ロシアを挙げるのだが、周囲を見回してみて、相手になって仲良くしてくれそうなのは米国と日本しかない。相手がどう思っているかはともかく。

 ただし、日韓関係、特に日本での韓国への感情は相変わらずよくない。理由は当然、2015年の日韓合意で「最終的かつ不可逆的に解決された」はずの慰安婦問題の蒸し返しだ。特に、日韓合意から1年の昨年12月に、合意の精神に反して釜(プ)山(サン)の日本総領事館前に設置された慰安婦像は、日本国民の神経を逆なでした。ソウルの日本大使館前の慰安婦像も撤去されないままだ。毎週水曜日恒例の日本への抗議デモも続いている。

 韓国は「中国だけでなく、日本人の観光客が減った」と一様に嘆いている。こうした言葉を聞くたび、韓国の政府、メディア、財界の関係者らに、筆者はいつもこう答えている。「簡単です。日本大使館と総領事館の前の慰安婦像をあの場所から撤去すれば済むことです」と。

 こう言えば、相手は大抵、「それはできないでしょう」と答えるか、理解してなのか無言で苦笑いをするかだ。


条約違反は知っての上で

 日本大使館と領事館前に設置された慰安婦像は、外国公館前での侮辱行為を禁じたウィーン条約に違反している。10日余り前に康京和外相が韓国駐在の外国メディアと会見した際に、「韓国の外相として、この国際条約違反をどう思うのか」と直接聞いてみた。

 康外相は表情を硬くし、「外相直属の作業部会を発足させ、韓日合意の検証作業を進めている。作業部会の結果が出次第、可能な選択を検討していく」と答えるにとどまった。

 国連で長年働き、「国際通」として鳴り物入りで女性として韓国初の外相に就任した康外相は当然、ウィーン条約違反であることを知っているはずだ。だが、「可能な選択の検討」と含みを残し、日本への刺激を最小限避けた。

 康外相は、「慰安婦問題など過去の問題を直視し未来志向的に発展させるという文大統領の意志に日本政府は共感している」とし、首脳間のシャトル外交など「基本的な枠組みでは合意している」と述べ、文在寅政権が明らかに日本との関係を改善させたい思いであることを示唆した。

 日本の公館前でのウィーン条約違反を問題視する主張は、韓国の一部メディアでまれに出ている。今回は極左の労組、全国民主労働組合総連盟(民主労総)が釜(プ)山(サン)の日本領事館前に来年5月、徴用工像を設置する計画をめぐってのものだ。

 朝鮮日報(20日付)は社説で、ウィーン条約に韓国も加入していることを指摘した上で、「韓国ではデモ隊が法を無視して構わないのかもしれないが、国際社会ではそうではない。『韓国は外国公館の安寧と品位を守れない国』との世界の見方が、韓国の得になるのかは疑問だ」と問題視した。

 韓国国内で盛り上がった日本の公館前での侮辱行為が、国際ルール違反であり、韓国の品を落としていることを、自らわざわざ世界に見せていることを理解しているのだ。


これ以上の関係悪化はまずい

 さらに、同紙の社説は、昨年12月に日本総領事館前に設置された慰安婦像にも言及。「普通の日本人までが韓国に嫌悪感を抱き、その余波は現在も少しも静まっていない。状況はより悪化する可能性がある」と懸念を示した。

 ウィーン条約には触れないものの、中央日報も同じ日に社説で、「日本は緊密な安保協力関係を強めるべき地理的に最も近い隣国だ」とし、像設置で「感情的にゴタゴタをあおるのは自制せねばならない」と訴えた。この主張の理由として同紙は、北朝鮮の核実験やミサイル発射で韓国が危険な状況に近付いていることを挙げている。

 少なくとも朝鮮日報は、慰安婦像の設置で韓国が日本からどれほど嫌われているかが分かっている。また、中央日報も慰安婦像には触れてはいないが、日本の公館前への像の設置が韓国の国益に反することを承知しているのだ。

 「これ以上の日本との反目は避けるべきだ」との主張には、「日本にまで離れられては困る」という危機感がうかがえる。

 釜山の慰安婦像をめぐっては、文在寅大統領が野党時代の今年1月に現場を訪れ、像の「保存」に積極姿勢を示した。また、昨年末に締結に至った日韓の安保分野の情報共有を可能にする軍事情報包括保護協定(GSOMIA)には、文氏が党首を務めた現在の与党「共に民主党」が「国民感情」を理由に反対した。

 日本からの衛星画像情報や、哨戒機などによる北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)情報の提供を受けられるGSOMIA。北朝鮮が挑発を繰り返す今や、「日本の優れた情報収集能力を活用することができ、韓国にとって必要なもの」(締結当時の同省関係者)に確実になっている。


自らまいた種

 あれほど熱を上げた慰安婦像の問題の大きさや、反発を続けた日本との防衛協力の大切さを、文在寅政権はようやく悟ったようだ。そして、何事もなかったかのように、日本にすり寄り始めている。

 困ったときに手っ取り早く頼りにできるのは日本しかない。日本を知る常識的な者ほどバツの悪さを感じているようだが、一般人はそうでもない。自分(韓国)を中心に日本も回っていると思っているかのようだ。韓国にとって、日本は相変わらず甘えが通じる国であり、それほど“お人よしな国”に映っている。

 ただ、困っている韓国だが、自らまいた種はすでに芽を出して伸び続けている。韓国に対する日本国民の見方だ。文在寅政権の韓国は、自ら刺激した日本世論を必死になだめにかかっている。ただし、あれほど侮辱された日本で、世論がどこまで韓国からの秋波に反応するかは分からない。

 韓国メディアには突然、「日韓蜜月」との見出しが登場したりもしている。慰安婦問題などをめぐり、あれほど日本を非難し続けた韓国は、いつの間にか日本と蜜月関係になろうとしているのか。困ればわが身を振り返らず、必ずといっていいほど日本に歩み寄ってくる韓国。過去に何度もあった対日姿勢だ。

 ただ、韓国であれほどうるさかった慰安婦問題は、日韓合意で完全かつ不可逆的に解決することが両国で確認したにもかかわらず、文在寅政権によって棚上げにされている。状況によっては突然、蒸し返し始める可能性もある。

 政権発足当初は85%を超えていた文在寅大統領の支持率は、今月、初めて60%台に落ちた。韓国の歴代政権が支持率回復のために、日本との歴史問題を利用してきたのは記憶に新しい。韓国を取り巻く今後の状況次第だろうが、今後の文在寅政権がその例外であるという保証はどこにもない。

トランプ米大統領は核使用を「核のボタン」ではなく「ビスケットとフットボール」で命ずる!? 

2017年09月26日 11時19分55秒 | 国際・社会
 米大統領選挙期間中、民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官は米サンディエゴで行った演説で、「(共和党候補だった現大統領ドナルド・)トランプ氏の指を『核のボタン』の近くに置いていいのか」と、核兵器発射権限を託する大統領として不適格だと批判し聴衆をあおった。対するトランプ氏は「『最終手段』以外に核兵器を使うつもりはない」と反論した。米国と北朝鮮との「決戦」が迫る中、今次小欄は大統領に成りそこねたヒラリー氏の『核のボタン』に関する誤認識を検証する。『核のボタン』など存在しないのだ。

広島を訪れたオバマ大統領の横にも黒光りする「フットボール」が

 その前に、トランプ氏が19日に初めて行った国連での一般討論演説に触れたい。トランプ氏は北朝鮮に対し言い切った。

 「ならず者体制」

 米国のジョージ・W・ブッシュ大統領も同じ言葉を使っている。大量破壊兵器保有の有無を国際社会に明確に説明しなかったイラクのサダム・フセイン政権を「悪の枢軸」と名指したブッシュ氏は結局、フセイン政権を滅ぼした。ブッシュ氏もまた、北朝鮮を「ならず者国家」と罵倒していた。

 ただし、ブッシュ氏はフセイン政権を滅ぼしたものの、北朝鮮への軍事攻撃は断念した。けれども、トランプ氏の国連演説での対北「ならず者」宣言は『最終手段』投入も視野に入れた発言とも、一部で観測されている。 

 実際、トランプ氏は国連演説で明言した。

 「米国はあらゆる手段を講じて自国と同盟国を防衛する」

 「(軍事攻撃に踏み切る事態となれば)北朝鮮は完全に破壊される」

 小欄は一貫して北朝鮮に核・ミサイル開発を断念させ、地球規模の核拡散という悪夢を食い止めるべく経済制裁を加えても限界があり、もはや対北武力行使しかないと主張し続けてきた。さもなければ米国は、米国に届くICBM(大陸間弾道ミサイル)を断念させる代わりに、日本に届く弾道ミサイル受け容れ「核保有国家」に認定。実業家出身のトランプ氏による危ない取引(ディール)で、わが国は北朝鮮に要求を呑ませ続けられる属国に成り下がる。外国の投資・観光は激減し、経済を含む国力が次第に削がれていく。

 しかし、まだ武力行使の段階ではない。武力攻撃は、米国が不断に続けているシミュレーションが《過去最低の犠牲者数》+《作戦目的達成への成功率80%》をはじき出し、《最良の日》を厳選できて後のこと。

 しかも、「真正核兵器」の投射は文字通り『最終手段』だ。各種通常型ミサイル&無人・有人の航空戦力&大規模な特殊作戦部隊をはじめとする通常戦力と並行して使われる可能性があるのは、小欄でも度々触れてきた《電磁パルス(EMP)攻撃》や小さな核爆弾ミニ・ニューク(戦術核)を搭載した《地中貫通核爆弾》など。

 EMP攻撃は上空での核爆発により→巨大な雷のような電波が津波のように地上に襲来→電子機器をマヒさせ軍事用を含むインフラを機能不全にする。核爆発に伴う熱波や衝撃波は地上に届かず、被攻撃側の人々の健康に直接の影響はない。

 地中貫通核爆弾は、地上の岩盤を突き破り→地下要塞に在る北朝鮮・朝鮮人民軍の軍事・核施設に到達後吹っ飛ばす。こちらも、一般国民の住む地上の被害を抑え、核汚染も局限。地下に蓄えられる朝鮮人民軍の生物・化学兵器も、核爆発を抑えた小さな核爆弾(ミニ・ニューク)が発する熱波で蒸発→無害化に一定程度貢献する。

 EMP攻撃や地中貫通核爆弾は《サイバー攻撃》や《電子妨害》などとともに、一般国民の犠牲を抑制できる、使用ハードルの低い兵器と言える。

 前置きが長くなった。冒頭のお約束通り、『核のボタン』に関する大統領に成りそこねたヒラリー氏の誤認識を検証する。

 米国は現在、900発の核弾頭を保有し、個々の核弾頭は広島や長崎を壊滅させた核兵器の10~20倍の威力を持つ。

 結論から言えば、『最終手段』以外に核兵器を使うつもりはないと反論したトランプ氏が正しい。というか、『最終手段』でしか使用できぬ態勢となっている。繰り返しになるが、そもそも、ヒラリー氏がトランプ氏に詰問したごとき『核のボタン』は存在しない。

 代わりに、米軍の最高司令官として核兵器使用の最終決断をする米国大統領は《ビスケット》と呼ばれる、核兵器の発射コードを刻んだカードを使う。

 一方、米軍の大統領付武官が《核のフットボール》の通称で知られる黒色のブリーフケースを常時携行する。ブリーフケース内には核攻撃発動に必要な装置・情報が収められているが、ケースを開けるには、大統領が携帯する《ビスケット》が必要だ。《核のフットボール》の中に収められている装置・情報は以下の4点。

 (1)攻撃の選択肢一覧を記した黒い手帳

 (2)大統領が避難可能な掩体壕(えんたいごう)一覧

 (3)緊急警報システムの使用手引書

 (4)大統領の本人確認に使う認証コードを刻んだ小さなカード

 発射位置や核ミサイルの性能にもよるが、米軍は核弾頭が着弾する時間を最短5分程度と分析。大統領はギリギリの時間内で、迅速に核攻撃を意思決定し、米軍の関連部局に命令を発出しなければならぬのだ。

 ブリーフケースを持った武官もまた、常に大統領のかたわらを離れられない。ブリーフケースは5人程度の交代要員が持ち回りで、大統領に付き従う。周辺警護を担任するシークレット・サービスの要員と同様、ホテルでも大統領と同じエレベーターに乗り、同じフロアで待機する。大統領が職務を遂行できなくなる非常事態を想定し、副大統領用のフットボールも用意されている。

 《核のフットボール》を持ち歩く任務に選ばれる武官が、米国防総省やシークレット・サービス、FBI(米連邦捜査局)の厳しい身元審査&病歴・適性検査をパスしなければならない経緯は、言をまたない。

 2016年5月、当時のバラク・オバマ大統領が被爆地広島に歴史的訪問を果たし、被爆者を抱擁していた際にも、オバマ氏の目と鼻の先に武官が握りしめた正式名称《大統領緊急カバン》の、このブリーフケースが黒光りしていた。 

 ただ、米大統領が核兵器使用を決心し、《ビスケット》を使った後も、極めて慎重かつ複雑なステップが踏まれる。


金正恩氏は『核のボタン』を押す前に…

 米オバマ政権当時、筆者は日米軍事筋より、米アリゾナ州所在の《タイタン・ミサイル博物館》に関係する資料を得た。もっとも、タイタン・ミサイル博物館ではミサイル・サイロが公開され、施設を見学でき、発射手順やミサイル発射の模擬試験のシーンを収めた動画も公開されている。

 資料によると-

 タイタン・ミサイル博物館の地下10メートルの地点にはミサイル発射基地が在る。発射基地は《発射ダクト》と《管制室》などを備える。

 発射ダクトには冷戦時代、核エネルギー出力9メガトンの水素爆弾が搭載されていたICBM(大陸間弾道ミサイル)の《タイタンII》が鎮座している。タイタンIIは稼働を完全停止したが、発射システムは抑止力効果モデルとして世界に広めるべく、保全されている。

 管制室では発射までにこんな手順を踏む、という。

 (1)発射の必要に際し、スピーカーが「ピーピーピー」という音を発する。

 (2)音に続き、暗号無線でパスコードを含むメッセージを受信する。

 (3)2人の管制官が受信メッセージを書き取り、互いに見比べてメッセージが正しいか確認する。

 (4)続いて、2人の幹部管制官が自分しか知り得ないパスコードをおのおの入力して金庫を開ける。

 (5)金庫にはカード7枚が入っている。

 (6)カードにはパスコードが刻まれ、パスコードと先に無線で傍受したメッセージに含まれるコードが一致すれば、ミサイル発射命令が演習ではなく、実戦であることが実証される。

 (7)命令を確認するや、管制官が2人でカギを差し込み、回すのだが、鍵穴は離れた場所にあり、単独での発射を阻む仕組みになっている。

 (8)2人で同時にカギを差し込み→回し→そのままの状態を5秒間維持する。特に、管制官がカギを差し込んでから2秒以内に、相方の管制官がカギを差し込む行動も要求される。

 逆説的には、大統領の核兵器発射命令を阻止するには、関係者の造反が不可欠となる。 

 (9)最後は、ダイヤル式のカギでミサイル解除コードを入力すればミサイル発射準備が完了する。段階的に複数種のランプが点滅し、最後の点滅を迎えると解除は不可能になる。

 なお、ダイヤル式のカギには16個のアルファベットを持つ6つのダイヤルが並び、気の遠くなるような組み合わせの中で、発射解除コードはたった一つだけ。誤発射を防ぐ安全装置となっている。

 (10)そして、いよいよ発射サイロのフタが開くと…

 あってはならぬ悪夢だ。が、国のジェームズ・マティス国防長官もトランプ大統領の国連演説前日の18日、意味深長な言葉を口にした。米軍が北朝鮮への軍事攻撃を敢行し、朝鮮人民軍の報復攻撃があっても、韓国の首都ソウルを「重大な危険」より回避する軍事的選択肢があると公言したのである。

 確かに、南北軍事境界線(38度線)とソウルは最短で30キロ。1万門・基とされる火砲が火を噴けば、「ソウルを火の海にする」との北朝鮮の恫喝は現実になる。

 そういえば、米軍は4月、「全ての爆弾の母」と呼ばれる、通常型爆弾では最大の破壊力を有する《大規模爆風爆弾=MOAB》をイスラム教スンニ派過激組織《IS=イスラム国》にめがけて投下した。破壊面積は半径1000メートルをはるかに超える。地上の火砲は無論、地下坑道に隠れていても「顔」を出した瞬間、壊滅できよう。「軍事行動は間違いなく選択肢に含まれる」と発言するトランプ大統領の脳裏には、投下された「母」が産み落とした不気味なキノコ雲の映像も、マティス国防長官の説明とともに貼り付いているはずだ。

 反面で米国の軍や情報機関は、北朝鮮の核管理が、米国など5大核保有国のように慎重かつ複雑なシステムで厳重管理されているかにも、大きな懸念を抱く。韓国や日本への通常・核兵器を用いた攻撃以外にも、核兵器の暴発・偶発発射を恐れているのだ。 

 いずれにせよ、北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩・委員長が『核のボタン』を押す前に、米国は…

韓国「偵察衛星貸して」 諸外国に依頼も全て断られる 北脅威に為す術なしの現実

2017年09月26日 10時17分29秒 | 国際・社会
 北朝鮮の核(水爆)・ミサイル実験でようやく危機を実感した韓国政府と軍が混乱している。北朝鮮のミサイルに対抗する手立てが、韓国には全くないことが明らかになったのだ。特に発射の瞬間を捉える偵察衛星は諸外国に「貸してほしい」とレンタルを依頼したが、全て断られた。韓国本土防衛の望みは暗い。

誰か貸してくれないか

 韓国では北の核・ミサイル開発に対抗し、防衛システム「キルチェーン」を構築し本土を防衛することとしていた。韓国版「キルチェーン」とは、北の核・ミサイル施設に先制攻撃をかけるプランで、ミサイル発射の兆候を偵察衛星で把握し、発射場所を先制攻撃するもの。韓国空軍の戦闘機KF-16の地上攻撃能力を向上させるなどの改造費も含まれる大規模な防衛計画だ。ところが、このキルチェーンの第一歩となる偵察衛星を、韓国は持っていなかった。

 中央日報(電子版)などによると、韓国防衛事業庁は8月25日、レーダー搭載衛星4機と赤外線センサー搭載衛星1機の計5機の偵察衛星を21年から3年間で打ち上げ運用する計画を発表した。しかし、この計画が完成する23年までの約6年間は、北のミサイル発射の兆候を探知する手立てがない。そこで韓国軍は偵察衛星の「レンタル」というアイデアを思いつき、諸外国に打診したのだ。

 その結果は、「貸し借りするという発想は最初から無理だった」(韓国テレビ局SBS電子版)。韓国軍が打診したイスラエル、ドイツ、フランスからは、いずれも「貸せない」という通知が9月11日までに届いたという。

 軍事用の偵察衛星はいずれも「脅威のある場所」を恒常的に偵察できる軌道に投入されており、イスラエルなど3国の衛星が東欧や中東周辺を重点とした軌道を描いているのは間違いない。北朝鮮を偵察するためには軌道変更が必要で、そのためには偵察衛星の持つエネルギー(推進剤)を相当量失うこととなる。本来なら偵察高度を下げ詳細な情報を得るなど「いざというとき」のために使うエネルギーを失ってしまうのだ。また、映像からどれだけ細かい情報が得られるか(分解能)など軍事衛星の能力も「レンタル先」に明らかになってしまう。例え同盟国でも貸し借りなどあり得ない。

 しかも偵察衛星の寿命はどの国でも5年前後とされている。他国に貸せば衛星開発費と打ち上げ費用に加え、十年以上の長期スパンで考え抜かれた偵察衛星システム、さらには安全保障構想さえ変更を迫られることになる。

 SBSによると、3国からは偵察衛星を貸せないどころか、映像の貸与や販売もできないと、けんもほろろの応対を受けたという。


計画と信用

 北朝鮮の核、ミサイル開発は急速に進んでおり、9月15日には今年8回目となるミサイル発射を実施、北海道上空を通過している。日本では「Jアラート」でミサイルの飛翔が通知されたが、この発射を最も早く探知したのは米国の偵察衛星とされる。ミサイル発射時の炎や熱を衛星が感知し、米軍システムから日本海を遊弋するイージス艦や米海軍太平洋司令部、日本政府や自衛隊などに通知される。

 一方で日本も事実上の偵察衛星といえる情報収集衛星を03年から10機以上打ち上げている。ところが、北朝鮮の軍事力の脅威に直面している韓国はゼロ。これまで何をしていたのかといえば、かりそめの平和に浸っていたのだ。

 「ろうそくデモ」で退陣した朴槿恵(パク・クネ)前大統領は12年12月の大統領選でこんな公約を掲げた。「2020年には月に太極旗(韓国国旗)がはためくだろう」と、月への有人探査を宣言した。以降、「韓国型ロケット」と称する液体燃料ロケット「KLSV2」の開発に多額の資金を投入してきた。自国技術での打ち上げに資金などのリソースを集中したのだ。しかし技術力不足から月計画は延期を重ね、現在の目標は21年に月衛星軌道投入というもの。当初の「20年に有人月探査」からは大きく後退した計画となっている。こんな資金があれば偵察衛星を作り、他国に打ち上げを依頼できたはずだが、韓国の優先順位は目の前の危機より“絵に描いた餅”だった。


現実との乖離

 韓国軍は14日、遠距離誘導弾(巡航ミサイル)「タウルス」の試射に成功したと発表し、国民に安心と安全を打ち出したが、このミサイルはドイツ製。これまで国産武器にこだわってきたが、戦車も自走砲も戦闘機も国産化できず、“使い捨て”の誘導弾すら輸入せざるを得なかった。北朝鮮が一途に核兵器と弾道ミサイルを開発する間、造船やメモリーなど目先の金儲けに右往左往してきた結果、韓国の防衛産業は全くと言っていいほど育っていなかったのだ。その結果、「ミサイル防衛」は丸裸の状態が続いている。

 日本の場合、弾道ミサイル防衛は、弾道ミサイルを宇宙で破壊するSM3と、大気圏に再突入してきたところを迎え撃つPAC3の二段構えだ。いずれも高性能の誘導ミサイルで、超音速の弾道ミサイルを迎撃できる。いわば「拳銃の弾を拳銃で撃ち落とす」ような離れ業を現実のものとしている。このうち後者のPAC3は射程が比較的短く拠点防衛用で、主役は高高度で迎撃するSM3だ。これは高性能レーダーを搭載した海上自衛隊のイージス艦から発射、誘導するものだ。ところが韓国海軍は、イージス艦を導入しているものの、SM3を誘導する高額なシステムは導入していない。当然SM3も搭載しておらず、北朝鮮が弾道ミサイルを発射しても「見てるだけ」の状態が長年続いている。「短距離側」も弾道ミサイル迎撃対応のPAC3ではなく、一世代前の対航空機用のPAC2しか配備しておらず、北の弾道ミサイルを迎撃する手立てがないのだ。

 唯一の希望は在韓米軍が配備する高高度防衛ミサイル(THAAD)だが、韓国では有りがたく受け入れるどころか反対運動が巻き起こり、文在寅(ムン・ジェイン)大統領もこれを収めるどころか、配備を問題視する始末。これでは米国から「コリア・パッシング」されても当然だ。

 さかのぼれば、韓国全域を射程圏に納めた北の準中距離ミサイル(IRBM)「ノドン」の開発・配備は1993年。以降25年間、危機から目を背けてきたツケの支払いを韓国は迫られている。

中国・党代表名簿、「毛沢東の孫」落選の意味

2017年09月25日 15時42分02秒 | 社会・政治
英雄の子孫「紅二代」を警戒する習主席、軍権掌握へ大量排除

 10月18日から開かれる第19回党大会に出席する党代表名簿が出そろった。特に話題になったのは解放軍・武装警察選出の303人の代表名簿だ。前海軍司令の呉勝利が失脚と一時報道されたが、その呉勝利は名簿に名前が残っていた。前空軍司令の馬暁天も動静不明ではあるが、名簿に名前が残っており、どうやらこの二人の政治生命はつながっているもようだ。その一方で、聯合総参謀部総参謀長の房峰輝、政治工作部主任の張陽という胡錦涛の信任が高い二人の現役上将の名前がなかった。また、毛沢東の孫の毛新宇はじめ、解放軍内の紅二代・太子党がごっそりと落選していた。党大会前、軍内では、激しい人事更迭の嵐が吹き荒れており、毛沢東ファミリーですら、習近平の軍内粛清から逃げることができないようだ。

失脚説から一転否定が示す、大混乱

 産経新聞、共同通信などが前海軍司令の呉勝利が党の規律違反で取調べを受けているとして、失脚説を報じたが、その後の9月6日に発表された党代表名簿には呉勝利と馬暁天の名前が残っており、この二人の”無事“が確認された。その後、9月8日に天津で行われた中国全国運動会の閉会式に呉勝利が登場し、自らの健在をアピールした。呉勝利は72歳で、すでに海軍司令職を引退、党中央軍事委員会に名前は連ねているが、次の党大会で円満引退する可能性はある。だが、どうやら政治生命が完全につぶされる事態は避けられたもようだ。ただ、過去二度ほど汚職の噂が出て取調べを受けたというのは本当らしく、今後も絶対安全というふうにも言いきれない。

 空軍司令を解任されたばかりの馬暁天の名前も残っていた。岳父含めて三代にわたる軍人家系のサラブレッド、馬暁天が更迭された、という報道も産経新聞によるものだ。すでに68歳だから空軍司令引退は更迭というより円満退職とも言えるのだが、その動静が一時不明であったことで憶測を呼んだ。習近平から特に信任が厚いといわれた馬暁天と呉勝利が失脚したという説がいったん流布して、その後にそれが否定されるということは、それは軍内権力闘争が相当混乱しているということだろう。

 呉勝利・馬暁天の習近平派二人の上将が“生き残った”こと自体よりも、軍・武装警察選出の名簿で話題になったのは、毛沢東の孫、毛新宇の名前がなかったことだ。

 習近平が鄧小平よりも毛沢東を尊敬し、その演説やしぐさ、ファッションにいたるまで毛沢東を意識していることは周知のことだが、毛沢東の孫に対しては冷ややかな扱いであったということか。


毛沢東は大好きだが…

 毛新宇は毛沢東の二男、毛岸青と女性カメラマン邵華の一人息子。一応、中国人民大学歴史系卒業で、修士号、博士号をもつが、インタビューなどの受け答えをみると、実際のところは知的に相当問題があるらしい。毛沢東の孫というだけで、最年少で少将に出世したといわれ、“祖父の七光り”極まれりという印象だが、インターネット・ユーザーの間では、ユーモラスで笑いを提供する存在として結構人気もあった。

 だが習近平は、おそらく相当、彼を嫌っていたと思われる。たとえば軍のパーティで習近平が参加の将校たちと次々ワイングラスをあてて乾杯しているとき、目の前にいる毛新宇だけをすっと無視して立ち去るといった様子が動画でネットにあがっている。

 もともと実力でのし上がったのではなく、毛沢東の名前だけで党代表になっていた毛新宇が党代表に落選した理由があるとしたら、習近平が嫌った、という理由しか思えない。しかし習近平は、毛沢東が大好きで、毛沢東の「実践論」「矛盾論」の勉強会を各省の党委員会で行うように指示するほどだ。

 毛沢東が大好きな習近平はなぜ毛新宇が大嫌いなのか。考えられるのは尊敬する毛沢東の子孫が、毛新宇のような、メディア取材を受けながら鼻をほじるような人間であること自体に不快を感じている、という可能性。毛新宇はその立場上、いつも、公式の場にでれば、取材記者たちに囲まれるが、祖父・毛沢東の自慢話をよくする。我こそは毛沢東の唯一の後継者、といわんばかりの態度である。しかし、習近平は自分が我こそは毛沢東思想を受け継ぐ、毛沢東の後継者にならんとしているので、この見た目も中味も毛沢東の後継者にふさわしくない毛新宇が毛沢東の孫であることを鼻にかけるのが許せないのかもしれない。

 もう一つは、毛新宇自身が、習近平の指導イデオロギーを「習近平思想」と呼ぶことに対して、反感をもっていることが習近平に伝わった可能性だ。毛新宇は軍事学院の研究職が本職であり、その研究テーマは「毛沢東思想」。彼の研究業績がどれほどのものかはさておき、農村革命から建国に至るまでの実践で裏付けられた毛沢東思想と、わずか5年、党と国家を指導しただけの習近平の指導イデオロギーが、同じ「思想」で並び称されるとしたら、おそらくはほとんどの「毛沢東思想」研究家は抵抗を感じるだろう。この毛沢東信奉者のトップ2であろう二人が、本音のところでは仲が悪いのは十分想像はできる。

 だが、これが単に個人の好悪の結果だけでないと考えるならば、この党代表名簿から毛沢東の孫が落選したことが示す“サイン”は結構不穏だ。

 実は、毛沢東だけでなく、今回、党代表名簿から落選した中には、紅二代、つまり革命戦争に参加した英雄の子孫たちがかなり含まれているのだ。


「怖い紅二代」を軒並み排除

 具体的には、胡耀邦(元総書記)の女婿の劉暁江(退役上将)、張震(開国中将)の息子の張海陽(退役上将)、劉少奇(元国家主席)の息子の劉源(退役上将)、李先念(元国家主席)の女婿の劉亜洲(空軍上将)、建軍の父・朱徳の孫の朱和平(空軍指揮学院副院長)ら、軒並みビッグネームの紅二代たちが落選しているのだ。

 代表名簿に名が残っている紅二代・太子党の高級将校は、王寧(武装警察部隊司令員、岳父が建国に功労のあった南京軍区指令員・杜平)、武装警察部隊参謀長の秦天(元国防部長・秦基偉の二男)、習近平ファミリーと深い関係の装備発展部長の張又侠(建国上将・張宗遜の息子)、それに失脚の噂もあった馬暁天。この四人はいずれも、習近平のお気に入りで知られる。

 軍部の党代表からここまで徹底して紅二代・太子党を排除したのは、おそらく習近平の意思である。それはなぜなのか。

 これはもう推測でしかないのだが、しかしながら私だけの推測ではない。結構多くの人がそう考えている。つまり、習近平は紅二代・太子党を恐れているのだ。

 習近平自身が紅二代・太子党であり、習仲勲の息子として、かなりの高下駄を履かせてもらって出世してきた。

 官僚としてのスタートラインは河北省正定県だが、このとき、習近平は当時の河北省の書記であった高揚から「親の七光り」をずいぶんいじられたことがある。正定県の書記になって間もなくのころ、習仲勲が、けっこう親ばかで、心配してわざわざ高揚に「息子のことをよろしく」と電話をしたそうだ。だが、高揚は親の七光りに甘んじる習近平の態度が気にくわないので、会議の場で、「習仲勲から電話を受けたが、たとえ政治局員(習仲勲)からの直々の頼みでも、えこひいきはしない」と発言して、習近平はえらく恥ずかしい思いをしたことがある。

 このエピソードは、紅二代・太子党がいかに最初から特別扱いされているか、ということの証左でもある。高揚は特別潔癖で公正な人物であったから、習近平をえこひいきしなかったが、普通なら紅二代・太子党は特別扱いされて、取り巻きに恵まれるのである。そして、習近平自身、総書記になれたのは、八大元老の中でも最も尊敬された一人、習仲勲の息子であったという理由以外にない。

 つまり、紅二代・太子党は、それだけで人脈があり、その人脈は軍内はもちろん、党中央から国有企業、民営企業など経済界にまで広がる。このことが、実は習近平には脅威に感じられたのではないだろうか。紅二代・太子党の軍人が、もし習近平のやり方に不満をもったならば、彼らの周りには、すぐ同調して力を貸す党内および経済界の人脈が集まるのだ。実力不足とささやかれた習近平が、太子党であるが故に総書記にまで出世できた。では、習近平よりも人望も実力もあり、兵力を動かせるような紅二代・太子党子弟が、習近平を批判しだしたらどうなるだろう。


「独裁の野望」阻む力を削ぐ

 しかも、習近平の反腐敗キャンペーンは、紅二代・太子党にまで向かい始めている。たとえば鄧小平ファミリーが後ろ盾にいる安邦保険集団のCEO・呉小暉を失脚させた。このことは紅二代・太子党たちの不安と不満を誘ったことだろう。紅二代・太子党は、生まれながらの“貴族”として様々な利権にあずかるのが普通だったから、もちろん汚職・党規律違反など探せばいくらでもでてくる。紅二代・太子党同士には、家族同様の絆があるのだが、それも親の代に築かれたもので、習近平がその絆をきっちり受け継いでいるかというとそうでもないらしい。

 たとえば胡耀邦と習仲勲はイデオロギー的にも似通っており、母親同士が親友であったため、習近平も胡耀邦ファミリーとはもともと家族ぐるみの付き合いがあった。だが、習近平が総書記になってからしばらくして、双方ファミリーは距離を置きはじめている。胡耀邦の妻・李昭が3月11日に死去してからは、習近平と胡耀邦ファミリーをつなぐものはもう、なくなった、という人もいる。

 紅二代・太子党は、習近平がのぞむ独裁の野望を阻めるだけの政治実力、影響力をもっている。それを恐れた。だから軍という、兵力を動かせる部分から紅二代・太子党の排除を開始したのではないだろうか。


軍権掌握か、フルシチョフの轍か

 実は房峰輝失脚の背景にも、きな臭い噂がある。今年6月中旬から2か月余り、中印国境で両軍がにらみ合って一側触発にまで高まった中印国境危機において中印両軍が「撤退協定」を結ぼうとしたとき房峰輝が反対した、という噂であり、それが原因で失脚させられたという話である。

 裏の取りようもない話なのだが、もしも、この噂に多少の真実が含まれているとしたら、房輝峰が中印紛争再発の危機を党大会前にあえて招き、習近平政権の安定を崩そうとした、という可能性があるわけだ。確かに9月3日にBRICS首脳会議が予想されているのに、中印国境が緊張してインド首相が会議を欠席するような事態になれば、習近平のメンツは丸つぶれだ。軍人は、たとえ習近平に真向から刃向かわなくとも、こんな風に習近平政権の安定を揺るがすことはできる。

 強軍化路線を進めている習近平にとって、軍のコントロールを失うことは、失脚の直接的な原因となる。フルシチョフも軍制改革によって軍権の掌握と強軍化を目指したはずが、逆に軍のコントロールを失い軍事的メンツを失って失脚に至った。

 この軍・武装警察選出の党代表名簿から、習近平が今の段階では軍権掌握に自信をもっておらず、強い恐れを感じていることが、読み取れないだろうか。

荒井広幸・元新党改革代表「安倍晋三首相は『国民の結束を問いたい』と言ったんです」

2017年09月25日 15時31分18秒 | 社会・政治



北朝鮮危機前に総選挙は今しかない

 実は安倍晋三首相が18日に米国に出発する前に電話で話したんです。長年の親友にして盟友である者として、臨時国会での衆院解散・総選挙への反対を進言するためです。

 私は「この時期の解散・総選挙は北朝鮮情勢への対応で政治空白を作るし、『もり・かけ(森友学園・加計学園問題)隠しだ』と批判される」とはっきり進言しました。

 私の言葉に首相はいらだつかなと思いましたが、意外に淡々としていました。そして私にこう言ったんです。

 「国際社会が圧力を強めない限り北朝鮮は核・ミサイルを放棄しないよ。対話と言いながら結局、時間稼ぎされて核・ミサイルがここまできてしまった。これから圧力をかけるしかない中で解散・総選挙をするのは今しかないんだ」

 「もり・かけ隠し解散」などと言われることについては「そういう批判は甘んじて受ける」と言いました。「これから大変な局面にどんどん進んでいくんだ。非常に困難な時なんだよ」とまで言うんですよ。

 そこで私は直感したんです。首相はトランプ米大統領を含む世界の指導者との会談を通じてつかんだ何かがある。そこで「日本の首相として国民を守るためにどうしたらよいのか」を考えたんだと思いますよ。首相も平和的に解決したいと思っているけど、米国は大統領でさえも「軍事的選択肢を排除しない」と言っているわけですからね。

 首相は「今回の解散・総選挙で国民に結束を問いたい」というニュアンスのことも言いました。言外にあるのは日本を取り巻く国際情勢はますます難しくなるということです。だからこそ国民のみなさんに結束を呼びかけているんですよ。

 逆に言えば、この衆院選は「国民に日本の安全保障を考えてもらう選挙である」と言えます。同時に「平和裏に北朝鮮問題を解決しないと大変なことになるから自分に力を与えてくれ」と訴える選挙でもあるんです。

 「自分たちの命を守り抜くんだ」という強い国民の決意があれば、それをもって首相がトランプ氏を止めることも、進めることもできるんです。

 首相は中露首脳にもモノを言える人なんですよ。それをまた別の人が「新しく首相になりました」って挨拶するんですか。それこそ政治空白じゃないですか。

 首相は、自分を批判してきた人も、批判していない人も、すべての日本人を守ることを優先しているんです。大変なプレッシャーだと思います。「政治空白だ」「党利党略だ」などと他人に言われ、首相にその懸念を伝えたことは考えが浅かったと思います。今はそっくりそのまま野党にお返ししたいですね。

 今度の解散・総選挙はみんなで「日本を守るための壁」を作るような時間ではないでしょうか。

 10月18日から中国で共産党大会があります。11月上旬にはトランプ氏の来日があり、その後はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が控えています。

 この間に北朝鮮に対する国連安全保障理事会による追加制裁決議や、中国当局による北朝鮮の企業や個人所有の銀行口座を全面凍結したことの効果を見ることになります。

 北朝鮮が中国共産党大会に合わせてメンツを潰すようなことをしないかどうかは分かりませんが、9~10月の東アジア情勢は「小康状態」だと言えるのではないでしょうか。

 仮に最後に残るのが軍事的選択肢であっても、まだ時間を要する。米国は、国際社会に対して「ここまでやったけど北朝鮮は核を放棄する状況にない。次の段階にいかなくてはなりませんよ」と伝える責任があります。

 「解散は首相の保身だ」という批判に対してはこう答えたい。「憲法改正に必要な国会の3分の2の議席を持っているのに、それを投げ出して衆院選を打つんですよ。それは国民の命を守るという理由があるからです」とね。

 私は、昨年の参院選後に新党改革を解散したこともあり、この1年余り謹慎していました。ですが、有権者の一人として、いまの国会議論やマスコミ報道があまりに平面的過ぎると危機を感じ、口を開く決意をしました。

 福島出身の私が東日本大震災で得た教訓が2つあります。一つは「万が一は起こり得る」。もう一つは「日本人を救うのは日本人である」ということなんですよ。