いわき市・子年生まれの”オヤジ”

草莽崛起
日本人よ、歴史を取り戻せ!

日本戦争犯罪調査、3つの教訓

2014年11月29日 16時15分41秒 | 国際・政治
 米国政府が8年もかけて実施したドイツと日本の戦争犯罪再調査の結果(11月27日付朝刊既報)は、日本にとって慰安婦問題での貴重な教訓を与えた。まずはこの問題での国際的な日本糾弾が虚構であること、その日本糾弾の真の主役が中国系勢力であること、そして日本が次世代の国民のためにも冤罪(えんざい)を晴らす対外発信を欠かせないこと、などだといえる。

 クリントン政権下での1999年からのこの大規模な調査は、対象になった書類がなんと850万ページ。あくまでドイツが主体だったが、日本についても合計14万ページ余の戦争犯罪関連の書類の存在が報告された。その総括はIWG(各省庁作業班)報告と呼ばれた。

 事前の指示は日本の慰安婦制度の犯罪性、強制性や奴隷化に関する書類をも探すことを具体的に求めていたが、なんとその種の書類は、一点も発見されなかったというのだ。
 調査の当事者たちもこの結果に仰天し、当惑したことを最終報告で率直に認めていた。結果の分析に参加したジョージ・ワシントン大学の楊大慶教授らは最終報告の付属論文で慰安婦問題について「その種の書類は今回の調査では発見できなかったが、存在しないわけでない」と、種々の仮説を弁解として記していた。

 だが最終報告は同時に、慰安婦制は当時、日本国内で合法だった売春制度の国外への延長であり、日本軍は将兵の一般女性への暴行や性病の拡散を防ぐためにその制度を始めたという経緯をも記し、米軍側はそこに犯罪性を認めていなかった実態をも伝えていた。

 さて、ここでの日本側への第1の教訓は米国政府がここまで努力して証拠や資料がなにもないということは、実体がなかったということだろう。「日本軍が20万人の女性を組織的に強制連行して性的奴隷にした」という非難の虚構は米側の調査でも証明されたのだ。
 第2には、この米国政府をあげての大調査の推進には、在米中国系の反日組織「世界抗日戦争史実維護連合会」(抗日連合会)が、異様なほど大きな役割を果たしていた。

 IWG報告の序文では、調査の責任者が冒頭に近い部分で抗日連合会の名を具体的にあげて、この組織が代表するとする戦争の犠牲者たちへの同情を繰り返し、今回の調査が慰安婦問題などで日本の残虐性を証明する新たな書類を発見できなかったことを謝罪に近い形でくどいほど弁解していた。

 抗日連合会は在米中国系の活動家中心の組織だが、中国政府との絆も緊密で、日本の「戦時の残虐行為の糾弾」を使命として掲げ、1990年代から戦争捕虜、南京事件、731部隊などを提起して、日本をたたいてきた。IWG調査でもクリントン政権に強力なロビー活動を仕掛けていたという。慰安婦問題でも、主役は表面では韓国系にもみえるが実際は抗日連合会を主軸とする中国系だという実態がここでも証されたといえる。
 そして第3の教訓は、慰安婦問題での日本非難の虚構が米側でもここまで実証された以上、日本側にとってのぬれぎぬ晴らしの必要性がさらに鮮明になったことである。このままでは日本の国家も国民も20万人の女性をセックスの奴隷へと強制したという無実の罪を次世代へと残していくことになるのだ。

【政権の是非を問う】地球儀外交

2014年11月25日 10時56分45秒 | 国際・政治
 北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に先立つ今月10日、安倍晋三首相と中国の習近平国家主席による日中首脳会談が実現した。日本の首相と中国主席の会談は3年ぶりであり、両国の関係改善に向けた「大きな一歩」(首相)となったが、話題を呼んだのは会談の内容よりむしろ、握手を交わす両首脳の表情だった。

 安倍首相が淡々とした様子だったのに対し、習主席は伏し目がちで笑顔はなく、背後には両国の国旗さえ置かれなかった。

 日本国内では「無礼だ」と反発が起き、韓国メディアは「日本冷遇」と報じたが、APECに参加したリーダーたちの受け止め方は異なっていた。一部始終を目撃した政府高官はこう証言する。

 「首脳間ではむしろ習主席の頑なな態度が笑いものになっていた。習氏の沈鬱な表情を『市場に引かれていく牛みたいだった』と表現した首脳もいた…」
 各国首脳は、習主席が「日本に歩み寄った」とみられると政治基盤が打撃を受けるため、国内向けの演出に腐心していることを見透かしていたのだ。当然、日中どちらが会談の主導権を握り、どちらが追い込まれていたのかも理解していた。

 実際、会談で習主席は、これまで執拗(しつよう)に問題提起し続けてきた靖国神社参拝問題も、尖閣諸島(沖縄県石垣市)問題も一切言及しなかった。首相は中国に何ら譲歩することなく、首脳会談を実現したのだった。

 外交は「何かを求めた方の立場が弱くなる」(外務省幹部)のが常識である。

 日中外交筋によると、首脳会談に先立ち、日中間で交わした合意文書は、首相が会談をドタキャンすることを懸念した中国側の要請でまとめたものだった。中国側は文書に、首相の靖国神社不参拝の確約を盛り込むことにこだわったが、日本側が「それならば会談しなくてもよい」と突っぱねたところ、あっさりと折れてきたという。

 中国側はこの文書を日中同時発表するに当たり、こうも頼んできた。
「日本の外交的勝利だとは宣伝しないでほしい…」

 首相はその後、訪問先のミャンマーで李克強首相とも関係改善で一致し、オーストラリアでは再び習主席と握手を交わした。

 では、なぜ中国はそれほど軟化したのか。安倍外交の何が奏功したのか。

 ヒントは首相の祖父、故岸信介元首相にある。岸氏は「岸信介の回想」(文春学芸ライブラリー)で、昭和32年に日本の首相として初めて行った東南アジア歴訪をこう振り返っている。

 「私は総理としてアメリカに行くことを考えていた。それには東南アジアを先きに回って、アメリカと交渉する場合に、孤立した日本ということでなしに、アジアを代表する日本にならなければいけない、という考えで行ったわけです。(中略)それでアメリカに行く前後に十五カ国を二つに分けて回りました」
 アメリカを中国に置き換えるとどうか。

 「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げる首相は、日中首脳会談の前に5大陸を股に掛けて世界49カ国を巡り、200回以上の首脳会談をこなした。米国、東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリア、インド、ロシア、トルコなど各国との関係を次々に強化し、日本の発言力・発信力を高めた上で50カ国目の訪問国として中国を選んだ。

 では、日中首脳会談の実現に最も焦ったのは誰だったのか。歴史問題などで軋轢が生じている韓国の朴(パク)槿恵(クネ)大統領だった。実はこれも首相の読み通りだった。
 「遠くない将来、日中韓外相会談と、それを土台にした3カ国首脳会談が開かれることを期待する」

 日中首脳会談から3日後の今月13日、韓国の朴(パク)槿恵(クネ)大統領はミャンマーの首都ネピドーで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)首脳会議で唐突にこう表明した。

 「実現しない」と踏んでいた日中首脳会談が行われたのに衝撃を受け、孤立を恐れて方針転換したのは明らかだった。

 これは「日中両首脳が会えば韓国は必ず折れてくる」という安倍晋三首相の読み通りの展開だった。

 野党や一部メディアは、安倍外交によって、あたかも日本が世界で孤立しつつあるように訴えてきたが、現実は逆で、今の日本外交には順風が吹いている。
 では、首相はいつ、日中、日韓関係改善に向けての手応えを感じたのか。

 それは5月末、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)での基調講演だった。

 ここで首相は、海における法の支配について(1)国家が主張をなすときは法に基づいてなすべし(2)主張を通したいからといって力や威圧を用いないこと(3)紛争解決には平和的収拾を徹底すべし-という3原則を掲げ、こう説いた。

 「日本は法の支配のために。アジアは法の支配のために。そして法の支配はわれわれすべてのために。アジアの平和と繁栄よ、とこしえなれ」

 名指しこそしないが、国際法を無視して海洋進出を進める中国を批判したのは明らかだった。講演が終わると、各国の政府・軍関係者ら約500人の聴衆から盛大な拍手が起きた。
 一方、会場には中国軍人もいて講演後の質疑で首相への反論を試みたが、聴衆の反応は冷ややかだった。首相は後にこう語った。

 「私の講演であんなに拍手が起きるとは思っていなかった。日中問題に対する世界の見方、立場が事実上逆転したのを実感した」

 この2年間の外交努力により「日中関係で異常なのは中国の方だ」という認識は世界で共有されてきた。

 日米関係に関しても、オバマ大統領は当初、首相を警戒していたが、6月のベルギーでの先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)では、首相にハグするまで距離が縮まった。

 また、首相はアジア・太平洋地域のシーレーン確保の観点から、オーストラリア、インドとの関係強化を重視している。
 7月の豪州訪問時には、アボット首相と「日豪が特別な関係」であることを確認し、両国関係を「準同盟関係」に引き上げた。

 アボット首相は共同記者会見で歴史問題について日本をこう擁護した。

 「日本にフェア・ゴー(豪州の公平精神)を与えてください。日本は今日の行動で判断されるべきだ。70年前の行動で判断されるべきではない。日本は戦後ずっと模範的な国際市民であり、日本は法の支配の下で行動をとってきた。『日本にフェア・ゴーを』とは『日本を公平に見てください』ということだ」

 歴史問題で対日批判を繰り返していた中国は穏やかな気持ちではいられなかったことだろう。

 首相は今月14日、インドのモディ首相との会談でも「日米印、日米豪の協力を重視している」と述べた。これは首相が第2次政権発足時に発表した日米豪印を菱(ひし)形に結びつける「安全保障ダイヤモンド構想」とつながる。この構想はフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアなど海洋国家との連携にも広がる。そうなれば日本の安全保障は大幅に強化される。
 「遠交近攻」という中国の兵法がある。遠くの相手と友好を結び、近くの敵を攻めるという意味だ。首相の「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」は実はこれに近い。

 今回の衆院解散・総選挙により首脳外交は年明けまで小休止するが、就任から2年弱で50カ国を駆け抜けた外交努力は、今まさに実を結ぼうとしている。

中国製“ニセBMW”を爆破した独人オーナーの怒り…

2014年11月17日 16時16分52秒 | 国際・政治
 独自動車メーカーBMWの意匠を“パクッた”とされる中国製の自動車を手に入れたドイツ人男性が、その余りのポンコツぶりに激怒。車をダイナマイトで爆破するパフォーマンスを行い、その動画をネットで公開したところ、世界中で70万回以上再生される人気となっている。動画では赤さびや腐食だらけで、ブレーキもまともでない同車の“性能”を丁寧に紹介。「こんな車が市場に出回ってはいけない」と破壊が必然であることを強調している。そこまでヤルか…という突っ込みはともかく、こんな車が実際に製造・販売されている事実は空恐ろしくもある。

あまりの低品質…あの“毒ギョーザ”連想

 壮絶な“最期”を迎えたのは、中国の自動車メーカー「双環汽車(シュアンファン・オート)」のSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)で、「CEO」という名の車だ。CEOといえば最高経営責任者の略だが、そんな“高尚”なネーミングとは裏腹に、この車はBMWの「X5」の意匠権を侵害したとして提訴されたことで有名になった。つまり“パクリ”というわけだ。

 約6分間の動画はドイツの自動車専門誌「AutoBild(オートビルド)」が制作し、動画サイトYouTubeで流した(AutoBildのウェブサイトで視聴可能)。主役として登場するのは、ドイツ人の自動車ジャーナリストで同車のオーナーのウォルフガング・ブラウベさんだ。映像では恰幅(かっぷく)のよい中年紳士…といった風情なのだが、表情は非常に怖い。この中国車に怒り心頭なのだ。
 動画によると、ブラウベさんは、中国車の品質を確かめるために知人から「CEO」を入手したという。爆破処分を決意した理由は、「例え中古車扱いでも、こんなボロ車を市場に出してはいけない」との結論に至ったため。誰かがこの車に乗ることは危険きわまりないというわけだ。

 BMWのほかメルセデスやポルシェ、マイバッハなど著名な自動車メーカーを抱えるドイツ人の目から見れば、この中国車は「許せないもの」に映ったに違いない。


ABS作動せず「戦場から掘り出したような車」

 動画に出てくるCEOは一見、新車のように見えるが、近づいてよく見ると、車体各部の塗装がブクブクと膨らみ、塗膜の下がさびだらけなのがわかる。まともな塗装工程を経ない手抜きの証拠だ。メッキ部品さえ赤さびが浮いている。ここで、「この車は製造されて5年、10万キロメートルしか走っていないが、既に分解が始まっている」とナレーションが入る。

 ブレーキディスクは表面がさびているだけでなく、冷却穴部分の腐食も始まっているという危険な状態。ブレーキパッドは剥がれ落ち、曇ったヘッドライトの内側にはハエが数匹死んでいるというありさまだ。

 ここでAutoBildのテストドライバーが登場し、テストコースでその走行性能を確かめるとして車に乗り込んで一言。「こんな冒険は初めてだ」。

 走り出すと、スラローム走行ではステアリングが素直に効かず、サスペンションはふにゃふにゃ。直線走行中に急ブレーキをかけるとスピンし、ABS(安全装置)は正常に作動しない。車をジャッキアップして車体下部を見ると、エンジンもミッションもワイヤ類もさびだらけ。

 テストドライバーからは「ノルマンディー上陸作戦(1944年)の際に海岸に埋めた車を、今掘り出してきたようだ」と強烈な皮肉が。「実際のところ、10年落ちの建設機械のようだ」と、もうボロクソだ。

斧で滅多打ち、ダイナマイトで爆破

 テスト終了のあと、ブラウベさんが再び登場。「こんな無責任で信用できない車は、誰にも売ってはいけないと思い、中古で売り飛ばさずに持っていた」と告白し、「この車は、破壊されなければならない」と冷徹に宣言。その壊し方は徹底的だった。

 まずは二度と走れないようエンジンオイルと冷却水を抜いて走行し、エンジンを焼き付かせるという、映像的には地味ながら致命的な破壊行為を実行。CEOは約2キロで走行不能となったが、ブラウベさんは一言、「まあ、こんなものか」。

 さらに消防署と話を付けてポンプ車を用意。電装系を破壊するため、サンルーフから車内に放水するという大がかりな水攻めを実行したが、ここでドアの隙間から水がピューピューと勢いよく漏れてしまい、気密性の欠如も発覚。ブラウベさんはこめかみがビキビキと音をたてそうな怒りようだ。

 ついに大木も切り倒せそうな斧を持ち出し、ボディー各部に突き立てて壊しまくった。さらに内装にキックを入れ、ドアの内張パネルを引きちぎり…。最後はダイナマイトを無造作に車内へほうり込み、起爆装置のスイッチをオン。車の上部が吹き飛び、メラメラと炎をあげるCEOをバックに、ブラウベさんは「このガラクタ車が最期を迎えたことをうれしく思う」。ここで初めて笑顔を見せた。


韓国車にも失格の烙印

 この全編ドイツ語で語られる爆破パフォーマンスは、YouTubeで70万回以上再生される人気ぶり。背景には、批評のためには自動車を壊すこともいとわない欧米の自動車紹介番組の過激さと辛辣(しんらつ)さがある。最も有名なのが英BBCの人気番組「トップ・ギア」だ。
 司会者ジェレミー・クラークソンさんの軽妙なジョークと皮肉たっぷりの批評、同リチャード・ハモンドさんのまじめな走行レビューなどに加え、企画も人気。世界中で特番ロケが行われ、日産の新型GTRに乗ったクラークソンさんと、新幹線やフェリーなど公共交通機関を利用するハモンドさんらが、石川県千里浜から千葉県鋸山まで競争するレース企画も注目を集めた。

 こうした企画のなかでも過酷な“試験”は評判で、オフロード車を海に沈めたり、階段で走らせたり、果ては数メートルの高さから落としたりして、まだ走れるかどうかを確かめるなど手加減がない。

 生産国や生産メーカーに偏見がないのも特徴で、トヨタ・ハイラックスは褒めまくるもののプリウスは低評価。欧州車も同様に平等な批評を展開するのだが、韓国車だけはほぼ毎回、酷評されている。

 特に韓国メーカー、ヒュンダイ・アクセラの回では「ヒュンダイ・アクシデントか?」と名前から気に入らない様子で、走行テストでは何もかも「ダメ」という評価に。

 最後はクラークソンさんが「こんな車なら私でも作れる」と言い切り、「では、お見せしよう」と自分で作った“車”をスタジオで紹介。壊れた冷蔵庫など粗大ゴミの家電にタイヤらしきものをつけたガラクタだったが、廃家電のモーターを内蔵しており、スタジオで自走して観客の喝采を浴びた。
 こうした歯にきぬ着せぬ批評が当然の欧米で、中国車や韓国車が合格点を得るには、まず安易な“パクリ”と、外見だけを繕う虚飾をやめることが必要なのだが…。戦闘機から自動車までコピーと盗用が当たり前の中国・韓国では、まだまだ時間がかかりそうだ。

“中国はずし”に困惑する習近平氏…北京で開かれたTPP交渉は焦る“部外者”にクギを刺す会合になった

2014年11月11日 14時00分59秒 | 国際・政治
 中国は改めて「分かりやすい国」だと思う。習近平国家主席は、北京で開幕中のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の9日の会合で、「アジア太平洋地域では自由貿易に向けた取り組みが次々と現れて、困惑を招いている」と苦言を呈した。
 習氏がいう「困惑を招いている」取り組みとは、日米豪を中心に“中国はずし”のまま交渉が進む「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」をさす。困惑しているのは「中国」というわけだ。

 日米豪などTPP交渉参加12カ国はしかし、APEC日程の合間を縫っても、あえて北京において重要な会合を重ねた。

 習氏のみならず、中国外務省の洪磊報道官はAPEC開幕前に、「北京でTPP関連会合が開かれると聞いているが、各方面ともAPEC議題に集中するよう望む」と牽制(けんせい)していた。

 TPP交渉参加国側は、たまたま北京で数多くのメンバー国の担当者が集まる機会を利用したにすぎないが、TPP交渉に参加していない中国には、TPP会合の掛け持ちが“いやがらせ”と映ったかもしれない。

 いやがらせ、では聞こえが悪いが、結果的に中国にクギを刺すことにはなったのだろう。
 世界銀行や国際通貨基金(IMF)に似た機能のBRICS銀行の本部を上海に、アジア開発銀行(ADB)そっくりのアジアインフラ投資銀行(AIIB)の本部を北京にそれぞれ置き、戦後の「ブレトンウッズ体制」に挑戦する中国。国際協調よりも日米欧との対抗軸を作り出し、主導権を握って経済覇権を狙う野望も分かりやすい。

 ならば、中国はTPPを敵対視しているかといえば、そうでもない。李克強首相は4月、海南島での「ボアオ・アジアフォーラム」年次総会で、「TPPはアジアを中心とした『域内包括的経済連携(RCEP)』と共存できる」と述べ、TPPへの参加に意欲をのぞかせた。

 しかし、TPPは農産物をはじめ、関税や市場開放など、かつてない自由度を求められるギリギリの交渉が続き、規制や既得権益層の利害でがんじがらめの中国にはハードルが高すぎる。それでも中国が色目を使うのは、「世界貿易機関(WTO)加盟の痛い経験則」(中国の経済学者)からだろう。

 日本の強い後押しで、中国は2001年12月にWTO加盟を果たして国際経済界にデビューした。とっくに加盟条件を満たしていた台湾を力ずくで待たせて、1カ月だけ中国が先行加盟した経緯は、苦い思い出だ。

 それはここでは置くが、国際経済界に認められる新入会員になったものの、急速な経済膨張とともに「発言力」を握りたい欲望を抑えられなくなった中国にとっては、WTO前身のGATT(関税貿易一般協定)時代から積み上がった先進国の紳士協定でもある国際ルールに縛られるのがイヤになってきた。
 WTOの機能や強制力が弱体化している側面もあるが、TPPが中国抜きで新たな国際ルールを作ってしまうと、中国にとっては、ダンピング問題などで手足を縛られることになったWTOの二の舞いになりかねないと危惧した。TPPルールが固まる前に、中国の考えを盛り込みたい、可能ならば主導権の一角も狙いたいとの思いが、習氏や李氏の発言から読み取れる。

 中国は今回のAPECで議長国として、国際社会に存在感を見せつけたいところ。メンツ最優先の主義はAPECのいたる場面で顔をのぞかせている。であればこそ、世界第2の経済大国が「部外者」扱いされれて焦りをみせるTPP交渉を、日米豪はもっと戦略的に「分かりやすく」利用したらいいのに。

中国は日米と戦争するか スケープゴートは日本 尖閣に手を出す可能性は「ある」 防衛大・村井教授

2014年11月10日 10時26分26秒 | 国際・政治
 群馬「正論」懇話会の第36回講演会が10月30日、前橋市の前橋商工会議所会館で開かれ、防衛大教授の村井友秀氏が「東アジアの『戦争と平和』」と題して講演、パワーシフト理論を使って米中、日中間で戦争が起きる可能性を分析し、「米中は戦争しないが、日中は起こり得る」と指摘。戦争を抑止するために、日本が軍事力を増強する必要性を訴えた。詳報は以下のとおり。

■軍事力の変動から説くパワーシフト理論

 戦争が起こる仕組みをパワーシフトの理論を使って説明したい。この理論は過去500年間に欧州で起きた200件の戦争について言えることだ。

 仮に今、Bという国がAという国よりも軍事力の点で優位で、B国がA国に追い付かれそうになっているとする。この状態でB国がA国に仕掛ける戦争を「予防戦争」と呼ぶ。逆にA国がB国をすでに追い越し、追い越したA国が自国の優位を固めるためにB国に起こす戦争を「機会主義的戦争」と呼ぶ。戦争には、この2種類しかない。戦争は軍事上、強い方が始める。

 予防戦争の例を挙げると、1941年の日米戦争が当てはまる。当時の国力は米国を5とすると、日本は1。それなのに、なぜ日本は戦争を仕掛けたのか。日本の方が強いと思ったからだ。なぜか。太平洋に展開できる海軍力は日本の方が上だったからだ。

■米中間のパワーシフト

 今、米国と中国の間でパワーシフトが起こっているといわれている。この理論において、戦争が起きやすい軍事力の差はプラスマイナス20%ぐらいといわれている。圧倒的な差が付くと戦争は起きない。戦争をしなくても圧倒的な差があれば、弱い方は言うことをきくからだ。
 米中間のパワーシフトを考える上で重要なのは、どの場所で衝突が起こるかということだ。(米ハーバード大教授の)ジョセフ・ナイ氏は「米中間のパワーシフトは起こらない。今の実力は米国を10とすると中国は1。軍事力が将来にわたって逆転することはない」といった。しかし、この議論は雑だ。これでは日米戦争を説明できない。

 これを説明するには、軍事力は距離が遠くなればなるほど落ちるLSGという理論が必要になる。制空権は距離の2乗に反比例するといわれている。

 日本周辺の東シナ海、西太平洋でみると、米国の場合、軍事力はあまり下がらない。制空権がなければ制海権はなく、制海権がなければ、上陸(地上戦)はできないとされるが、米国の特徴は、航空母艦を多数抱え、肝の制空権が下がらない点だ。9万トンの空母なら90機、6万トンなら60機の戦闘機を載せられる。これは動く飛行場で、9万トンの空母が3隻あれば日本の航空戦力(約200機)に匹敵する。米国の空母は原子力で動くため航続距離も長いから、距離が離れても軍事力はほとんど下がらない。

 中国はどうか。何とか空母は造ったが、技術的な問題で、スピードが出ない。スピードが出ないと重い飛行機を飛ばせないから、それほど脅威にならない。

 今の戦争は何が攻めてくるか。戦艦でも飛行機でもない。ミサイルだ。中国は沿岸、陸上に数多くのミサイルを保有するが、中国が飛ばせるミサイルの距離はせいぜい600キロ。日本周辺で比較すると、米国の方が上だ。
■弱きをたたく航空母艦、強きをくじく潜水艦

 航空母艦の役目は何か。空母は自分より弱いものをたたくときに圧倒的な効果を発揮する。逆に強い相手には弱い。防御が脆弱だからだ。強大な相手には「走る棺桶」になってしまう。世界一の軍事力を持つ米国は、だから空母を世界中に展開している。英国とフランスも空母を持っているが、それは米国に対するものではない。自分たちよりも弱い相手に向けてのものだ。

 一方で、自分より強いものを相手にするときに有効なのが潜水艦だ。弱い国は空母ではなく、潜水艦を持つ。中国も、これまでは潜水艦を造り続けてきている。

 では、なぜ今、中国は空母を造ったのか。想定しているのは米国ではなく、東南アジア、南アジア。そう、自分より弱い相手に向けて、自分の強さを、より効果的に展開しようとしている。

 そういった点を考慮すると、現時点で米中間にパワーシフトは起こっていない。だから、米国と中国は戦争しないということになる。

■日中戦争は起こり得る

 日本と中国ではどうか。日本と中国では、パワーシフトが起こっているといわれている。戦争が起きる可能性が高いのは、米中ではなく、日中の方だ。

 では、日中間では、どういった戦争が考えられるか。

 戦争には、大・中・小がある。中国共産党は合理的な政府で、徹頭徹尾、損得の利害で動く。異質なのは韓国。あの国は利害関係を無視し感情的に走ることがある。中国は米国が出てくるような大規模な戦争はしない。負けるからだ。
 では、中規模なものならどうか。これも米国が出てくるから、やらないだろう。

 米国の国益の考え方には、死活的国益、戦略的国益、周辺的国益の3つがある。死活的国益は、例えば「9・11」(2001年米中枢同時テロ)だ。周辺的な国益では、例えばソマリア内線がある。ソマリアでは作戦中、米兵に死者が18人ほど出ただけで撤退した(1993年のモガディシュの戦闘)。「9・11」は、まったく異なる。

 日本を見捨てれば戦略的国益に影響が出る。「米国は同盟国を守らなかった」という評価が世界中に流れるのは、米国にも非常にデメリットが大きい。だから中規模な日中戦争なら米国は出てくる。中国はそう考えているはずだ。

■中国が考える日中戦の勝機は「米国抜き」

 中国が日本に勝てる条件は、絶対に米国が出てこないこと。この視点から問題になるのが、尖閣周辺などで想定される小規模な戦争だ。中国は小さい戦争なら米国は出てこないとみている。その根拠は何か。米国は尖閣について2つの立場、見解を示す。1つは「日米安保条約の適用範囲だ」という。一方で、領有権について「米国は中立の立場だ」ともいっている。これはどういう意味か。中国にも日本にも「尖閣に出てくるな」ということだ。双方を抑止しようとしているということで、だから中国は尖閣をめぐる戦争に米国は出てこないと思っている。

 日本と中国との間に戦争が起きないようにするには、どうすればいいか。それは、日本が単独でも勝てるようになるか、中国に米国が必ず出てくると思わせるかのどちらかしかない。しかし、米国が必ず出てくると思わせることは無理だ。なぜなら、あの国(中国)は同盟というものを信じていないからだ。
 だから、日本が単独でも勝てるようにするしかない。

■尖閣を先鋭化させたのは中国の国内事情

 中国が尖閣に手を出す可能性はあるか否か。私はあると思う。

 ここでスケープゴート理論というものを説明したい。

 そもそも、尖閣をめぐって日中関係が緊張しだしたのは、日本による尖閣の国有化とは関係がない。尖閣については中国は2008年から動き出した。中国は日本をスケープゴートにしようとしているからだ。その最大の原因は国内の暴力的なデモだ。中国ではデモが頻発している。年間10万件を軽く超えているだろう。しかもデモの特徴は大規模で暴力化、凶暴化している。体制にとって、これは深刻な危機なのだ。

 原因は何か。すさまじい国内格差だ。中国では今から20年前に経済改革が始まったが、当初は一部が富を得て、遅れて貧しい者も豊かになるといわれた。だが、そうはならなかった。格差は広がり、ひどくなる一方だ。金持ちしか偉くならない共産主義に、貧しい者たちが激しく抗議している。

 そんな内部でたまった国民の不満を外に向けて、目をそらそうとしている。日中間の緊張と日本の国内状況は関係ない。国内の緊張を外に向けて、緊張を一定範囲内に保とうとしている。だから緊張が下がりすぎると工船を日本領内に侵入させたりして緊張を高め、緊張が高まりすぎると下げる。今の中国の動きも、日本との関係改善をしようとしているわけではない。緊張関係を操作しているだけだ。

 中国のスケープゴートは日本でなければいけないのか。スケープゴートになるのは、国民的に盛り上がる存在でなければいけない。中国には日本以外にロシアという格好の国がいるが、中国は選ばない。ロシアは危険すぎるからだ。あの国は何をするか分からないところがあって、本当に怖い。逆に日本はちょうどいい、安全な敵なのだ。
■反日キャンペーン、中国の目的はアジアの覇権

 中国は今、世界中で反日キャンペーンをやっている。目的はアジアの覇者になるためだ。なぜ反日キャンペーンか。日本をおとしめるためだ。

 中国は経済力、軍事力などで日本を追い抜いたが、まったくかなわない決定的なものがある。ソフトパワーだ。ソフトパワーは、その国の影響力。いい国だと思わせる力、説得力。相手は、その国を信用し、言うことを聞いてくれる。今の中国には、その力が日本より遥かに劣る。だから中国は80年も前の日本を持ち出してきて非難する。80年前の日本と今の中国を比べようとしている。

 だから、中国の土俵で戦ってはダメ。今の日本、将来に向けた日本で勝負すべきだ。

■戦争と平和のコストから見る日本の道

 最後に今の日本はどうしたらいいか、述べたい。

 日本が望むのは中国と戦争しないことだ。日本には2つの選択肢がある。戦争でいくか、平和でいくか、だ。どちらを取るかは軍事的コストで選ぶ。戦争のコストが小さければ、戦争をする。大きければ戦争はしないで、平和的な手段を取る。合理的な政権であれば、そうする。

 日本の選択肢は軍事力を大きくするか、小さくするかの2つ。軍事力を小さくしたら日本と戦争したときの中国のコストは小さくなる。小さければ戦争をする。軍事力を大きくして日本が強くなれば、中国が日本と戦争したときのコストは大きくなる。そうすると戦争はしない。
 日本が中国との戦争を防ぐには、日本の軍事力を大きくすることだ。大きくすると平和になる。こういうメカニズムだ。軍事力を大きくすれば戦争になり、小さくすれば平和になるという単純な発想では平和は維持できない。これはローマ以来、つまり「平和を欲すればすなわち、戦争に備える」「軍備を怠るな」。それが平和を維持するためのポイントだ。これは2000年前からの世界の常識。日本は世界の常識に従うことだ。

 もちろん、こういう議論もある。日本が軍事力を拡大すれば、中国も軍事力を拡大する。戦争にはならないが、軍拡競争になる。確かに、これは大きなマイナスだ。戦争をすれば経済的に儲かるというのは、他国が戦争しているときであって、自分が戦争して得になることはない。

 では、軍拡したら損ではないのか。もちろん、コストはかかる。問題は、軍拡したときのコストと、戦争になったときのコストだ。軍拡したときのコストは軍拡競争というコスト。でも軍縮したら、その最大のコストは戦争になる。

 合理的な選択とは何か。最大の損害の小さい方を取ることだ。これが国際関係での合理的な選択で、だとすると、軍縮したときの最大のコストは戦争。軍拡したときの最大のコストは軍拡。私は戦争のコストの方が軍拡よりも大きいと思う。だから、より小さなコスト、すなわち軍拡を取る。

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 村井友秀(むらい・ともひで) 昭和24年、奈良県出身。48年、大阪大文学部卒、56年、東大大学院国際関係論博士課程を満期退学。専門は東アジア安全保障、中国軍事史。平成5年に防衛大国際関係学科教授に就任。「失敗の本質」(共著、ダイヤモンド社)、「中国をめぐる安全保障」(共著、ミネルヴァ書房)など著書多数。