宇宙戦艦ヤマト復活編外伝◇雪 生還編◇
前編⑤
「地獄の番犬=ケロベロス…ですか!?」
「上條、あの超巨大戦艦ガトランティスの奥をよく観てみろ!光点が在るのが解るか?」
「…あっ!解ります!」
「あれが、メッツラーを媒体とした=あの思考ホログラムの言っていた別次元の門だろう!」 「あの門の先に太陽系の星々も、雪も存在する!」
「桜井。艦内通信だ。」 「コスモパルサー第一攻撃機隊、雷撃機隊は直ちに発艦せよ!」 「第二攻撃機隊は発艦準備を急げ!」
「此方、小林!第一攻撃機隊発艦完了!!」 「これより目標の超巨大戦艦へ攻撃を開始する!」
「艦橋了解!ご武運を!」
ヤマト航空隊第一攻撃機隊は13機から成る攻撃機隊である。 航空隊隊長と編隊長を兼任する小林以外は、2機で一組の編隊である。 同様に佐々木を編隊長とした雷撃機隊も第二攻撃機隊編隊長工藤以外は、2機一組の編隊を組む計39機の三編隊構成。 ※予備機を合わせて42機のコスモパルサー機を搭載している。
ヤマト航空隊の基本攻撃パターンとしては、第一攻撃機隊が敵艦載機を惹き付け、雷撃機隊の艦爆攻撃と続き、第二攻撃機隊が援護に入り、第一攻撃機隊と交代、第一攻撃機隊は速やかに帰艦、整備と補給を済ませ、再び発艦し、雷撃機隊及び第二攻撃機隊と共に帰投、雷撃機隊及び第二攻撃機隊の帰艦後、順次帰艦する。 これが基本的は攻撃パターンである。
今回、敵艦載機隊が存在しない極めて珍しい戦闘パターンの為、小林率いる第一攻撃機隊は、佐々木率いる雷撃機隊の支援に専念した。
「何時に成ったら艦尾が見えて来るんだよ?」
「隊長。ボヤキは禁物ですよ~。データによると全長12キロメートルも有るようです!」
「にしても、図体ばかりデカイが、近接兵装は少ないのか!?」 「こりゃ美晴に仕事(たのしみ)取っといてやらないと、ムクれちゃうな。」 鼻歌やジョーク混じりにパルサーを飛ばす小林は、次の瞬間、度肝を抜かれる。 逆十字架のように直立浮遊していた超巨大戦艦が、動き出したのだ。 直立浮遊から水平へと体制を変えると同時に発砲した。 砲塔一基が、ほぼヤマトの全長程の大きさが有る。 その数、艦体上部だけでも16基、側面6基、下部に2基も装備されている。 その上部に装備された16基の砲がヤマトに対し、一斉射撃を行ったのだ。
「…マジかよ!?」 「アイツ動き出しやがったぞ!!」 「全機!散開せよッ!!」
「編隊長!!超巨大戦艦が発砲した!!」
「あれだけの砲撃、ヤマトは無事なのか?」
「……どうやらシールドミサイルを使用したようで、無事を確認!」 「おそらく波動フィールド・ミサイルを使用したと思われる!」 「着弾したヤマト周辺に特殊な歪みとプラズマ波が、確認出来る!」
「そうか!ところでコッチは全機、無事か?」
「無事です!」の返答に小林は安堵の表情を見せた。
◆
【タキオン波動粒子エネルギー弾頭ミサイル=波動フィールド・ミサイル】 波動エンジンで生み出されるエネルギーをそのまま使用し、弾頭に詰め込んだ防衛用エネルギー弾で、中にはタキオン粒子で覆われた3次元空間があり、この空間は周囲の空間連続体と比べて非常に不安定なもので、攻撃を受けた目標は周囲の時空間が歪曲して崩壊・誘爆に至る。
◆
「艦長!散開する攻撃機隊とワスプを一旦、引き上げさせ、トランジッション波動砲で一気に方をつけましょう!」
「駄目だ!」
「何故です?」
古代は上條からの具申「トランジッション波動砲」の使用に許可を出さなかった。
「上條。波動実験艦武蔵は何処で、地球や太陽系の惑星がブラックホールに飲み込まれた事を教えてくれた?」
「…銀河中心部のブラックホール。」
「そうだ。銀河中心部のブラックホールだ。だが、あの"次元の門"の手前には、この超巨大戦艦ガトランティスの残党軍しか存在しない!」
古代の説明に何かを感じた上條は、トランジッション波動砲使用不可を受諾した。 そう。ヤマトの航海はまだ、半ばを過ぎたに過ぎない。 次元の門の先に、まだ目にした事のない"本隊"が待ち受けている。 トランジッション波動砲を使用すれば、ヤマトは一時的だが、全てのエネルギーを失う。 仮にガトランティス残党軍を超巨大戦艦を殲滅させたとしても。
「上條。ここに折原に作らせた簡易的だが、あの超巨大戦艦の平面図がある。」
「あの時は全く余裕がなかったから気が付かなかったが、あの超巨大戦艦は艦体上部に武装が、集中している。」 「艦底部には近接兵装は、はっきり解らないが、大型兵装は翼の下部に二基と格納された主砲しかない。」 「艦首後部に砲塔が二基確認出来るが、この格納された主砲の先端部分にバリアミサイルを利用して、ヤマトを接近させ、接岸する。」 「この場所なら装備された兵装では、射角が取れない。」 「白兵戦を仕掛け、推進機部を破壊する!」
「丁度、強襲揚陸艇ワスプは発艦が完了している。」 「それと、バリアミサイルを展開して、ヤマトを下部に降下させている間に残りのコスモパルサー隊を発艦させる。」 「いくら火力がデカイがとは言え、五月蝿く飛び回るコスモパルサー隊を狙い撃ちする事は不可能だ!」
「活路を開くにはこの方法しかない!」
「桜井!全艦及び散開するコスモパルサー隊とワスプに通達!」 「これより超巨大戦艦に対し、白兵戦を仕掛ける!」 「待機中のコスモパルサー隊はバリアミサイル発射と同時に発艦せよ!」
「上條!バリアミサイルをヤマトの左右と前方に発射!」
「天城!ヤマト緊急発進!!目標、超巨大戦艦ガトランティス!」 「下部へ降下せよ!」
「了解!!」
全部署の返答が返ると、古代はヤマトを緊急発進させた。
超巨大戦艦ガトランティスの集中砲火が激しく成る中、宇宙戦艦ヤマトは古代艦長の指揮の下、全速で降下、超巨大戦艦の艦底部を目指した。 バリアミサイルが張り巡らされた防御膜を盾に、散開するコスモパルサー隊、強襲揚陸艇ワスプを一度、ヤマト後方に纏め、第二攻撃機隊の発艦を完了させた。
「艦首、姿勢制御スラスター噴射!」 「ロケットアンカー射出!」 「ガトランティス艦艦底部に固定!」 ヤマトの操縦悍を握る天城一佐の額に汗が滲む。 「踏ん張りが効かないッ!」と言葉を溢すと、履いていた踵高10Cmのピンヒールのパンプスを脱ぎ捨てた。 腰の辺りまで入ったチャイナドレスのスリットからガーターベルトで固定された黒いストッキングに包まれた太ももを覗かせた。
急制動で停止したヤマト。 完全停止し、艦内に異常が無い事を確認した天城一佐は、コルンを呼んだ。 「五分、私と交代して。」そう告げると自席を立ち、「艦長。五分、離れる許可を。」 「艦内服を着用したいと思います。」と告げた。
「うむ。よかろう。」
許可を得た天城は脱ぎ捨てたパンプスを拾い、第一艦橋を後にした。
ヤマトの接岸と同時に嵐のような砲撃はピタリと止んだ。 この機を見逃さず、小林率いる第一攻撃機隊は艦底を飛び回り、推進機に寄り近いエアダクトを目指す強襲揚陸艇を援護した。 一方、佐々木率いる雷撃機隊及び第二攻撃機隊は、艦上部をスレスレと飛び回り、ブリッジを目指した。 戦艦の上を飛んでいるという感覚は無く、むしろ要塞の中を飛行している感覚だ。 ヤマト程の大きさのある砲塔や上部構造物を3D化した映像を頼りに、射角に入らないよう集中しての飛行は、そう長くは続かない。 身体自身が持たないと言った方が、正解かも知れない。 少しでも、高度をはみ出れば即、砲撃の餌食なのだ。
「美晴!コッチは揚陸に成功、海兵隊が乗り込んだ!」
「了~解ッ!」 「佐々木隊は全機!艦爆を開始せよ!」
その号令を待っていましたと言わんばかりに、各機は散開、対艦ミサイルをぶっ放した。
◆
「隊長。やっぱ積んで来て正解でしたね。」
「まぁな。だだっ広いかんな。こんな場所で使うなんて思ってもいなかったがな。」 「陸じゃなくて、戦艦の中だかんな。」
【全地形対応型多脚戦車アスタラス】
ブルーアースから派遣された海兵隊らは、揚陸艇に搭載した全地形対応型多脚戦車三両に分乗、超巨大戦艦機関部を目指していた。
「おっと!ガトランティスの武装兵らのお出迎えだぜ!」 「散開しながら、踏み潰せ!」
「おいおい!奴ら対戦車ミサイルランチャーまで、持ち出したぞ!」
「艦内っていうより、室内演習場だぜ!」
「おう。派手に暴れんのは構わないが、弾、取っておけよ。推進機、手作業で破壊は勘弁だからな。」
「了~解!!」
◆前編⑥へつづく。
この物語りは、「宇宙戦艦ヤマト復活編」の続編として二次創作ではありますが、オリジナルの物語りです。 既存のメカ設定及びキャラクター設定は基本的に、そのまま引用しています。 使用している画像は一部を除き、宇宙戦艦ヤマトシリーズ本編等より、引用した画像でイメージです。 一部、私の設定及び解釈が混ざっています。