
デトロイト・テクノの重鎮 Carl Craig が、生楽器を交えて打ち込みとの融合を果たした作品
・・・というのが、レコード屋のポップに書かれる常套句だ。
それは間違ってはいないのだが、テクノ好きにとっては Carl Craig のこの作品は、やや異端に位置するものだろう。
しかし、同時に彼の最高傑作とする評価もよく聞く。
テクノにあまり明るくない人間としては、まず「デトロイト・テクノ」というのがどういうサウンドかイメージ出来ない。
機械くさい、硬質で矩形波バリバリな印象だ。
そのような先入観でこれを聴くと、それがまったく間違っていたことがよく分かる。
これはまさしくテクノそのものなのだが、肉感的なビートに溢れている。
生楽器か打ち込みか、というレベルではない。
音がそれぞれ主張し合い、ぶつかり合って複雑なグルーヴを生み出している。
Miles Davis が『Bitches Brew』で試みたのも、根っこは同じではなかろうか。
本作では冒頭でMiles Davis、Art Blakey、John Cortrane の名前が出てくることからも、ジャズに対する親和性を感じる。
#8 People Make The World Go Round など、Herbie Hancock の# People Are Changing (『Sound System』収録)を彷彿とさせる。
アンサー・ソングではないかと思うほどだ。
その前の#7 Brakula が壮大な曲想を持っているので、余計にそれが引き立つ。
メタリックなビートに囲まれながら、ソウルフルな歌声を響かせる。
【参考アルバム】
『Sound System』Herbie Hancock
Herbie Hancockの70年代末期3部作の2作目。
#Rock Itで有名な1作目『Future Shock』のヒップ・ホップ路線(今の耳で聴くと、むしろエレクトロニカに近い)を踏襲しつつ、
アフリカン・ミュージックのオーガニックさを同居させている佳作。トランペッターの近藤等則が参加している。
3作目『Perfect Machine』まで行くと、完全にエレクトロニカ。
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