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ACID JAZZ FREAK

一時のブームとして流されがちなアシッドジャズ。その作品群を取り上げ、思うところを書いていく、時代に逆行したブログです

コラム;アシッド・ジャズとトーキン・ラウド

2010年11月21日 | コラム・追記・その他

「アシッド・ジャズ」という言葉が指す意味は、2つある。

ひとつは、80年代終わりから90年代全般にわたって主にUKを中心に盛り上がった音楽ムーブメント。
ある種の流行りと言い換えても良い。
モッズ・シーンに連動したムーブメントであり、ファッションの一部と言ってもいいだろう。

当時、UKのクラブで流行っていたのは、ジャズで踊ることだった。
そこでかけられるのは70年代のソウルジャズやフュージョンのはしり、Stevie Wonder などのソウル、ファンク。
つまり、今で言うところのレア・グルーヴだ。

やがて、そうした音楽を自分らでも演奏する連中が現れる。
もう一つの意味は、そのムーブメントの中心となった音楽のスタイルだ。

具体的には、70年代のソウル、ファンクをベースにジャズのエッセンス、インテリジェンスを取り入れ、
バンドによる演奏をボーカルによる歌と同等に、前面に押し出したもの。
インストの曲が多く収録されるのも特徴のひとつだ。

このスタイルには、必ずしもジャズにこだわらないところがある。
ロック的要素が強い音楽も、この時代に登場したというだけで、スタイルにカテゴライズされてしまう。
例えば Paul Weller だ。彼の音楽はジャズに留まらない広い音楽性を有しているのだが、モッズ・シーンに欠かせない存在としてリストに上がる。

「ACID JAZZ レーベル」は、そんな時代に登場した。
まさにアシッド・ジャズ・ムーブメントの発端あるいは象徴と言える。

このレーベルの看板アーティストは、言わずもがな、The Brand New Heavies だ。
他には James Taylor Qualtet(JTQ)、パーカッションの Snowboy、ロック的なテイストも持っていた Mother Earth などである。

「ACID JAZZ レーベル」ロゴ

「アシッド・ジャズ」という音楽スタイルの語源が、このレーベル名からなのか、あるいは逆に、音楽シーンからレーベル名を後付けしたのか。
そこのところははっきりしない(Snowboy の著書に詳しいようだ)。

アシッド・ジャズ、および ACID JAZZ レーベルに関わるコンピレーションは数多く出ているが、毎回選ばれるメンツは概ね決まっている
というのが現状だ。
もしその手のアルバムの購入を検討しているなら、このコンピレーション↓がお薦めだ。

「London Street Soul」

単なるカタログに終わらず、アルバム通して鑑賞に耐えうる構成になっていると思う。
当時のクラブの空気感を味わうにはもってこいだろう。

そして、その ACID JAZZ レーベルの中心人物の一人が、Gilles Peterson である。
人気のラジオDJでもあり、クラブで皿を回せばそのセンスにみんなが熱狂する……音楽の嗅覚が異常に優れた人物だ。

「TALKIN' LOUD」は、その彼が ACID JAZZ レーベルを離れたのち設立したレーベルである。

「TALKIN' LOUD レーベル」ロゴ

TALKIN' LOUD のレーベルコンセプトは、アシッド・ジャズ・レーベルのそれをもっと洗練させ、
よりジャズを強く意識した音楽を追求するものだった。

TALKIN' LOUD には新たな試みが溢れていた。

王道ジャズ・ファンクには Incognito と Galliano の2枚看板。
ソウルシンガー Omar や、Carleen Anderson を擁する Young Disciples。
ジャズ・ヒップホップの MC Solaar に、Urban Species。

まるで現代の BLUE NOTE レーベルといわんばかりに、発売されるレコードには必ず印象的なタイポグラフィのレーベル・ロゴがついている。
それはCDも同じで、ジャケットの表か裏面には、必ずあの丸いロゴが入っている
(発売時期によっては丸がスピーカーの如く歪んでいるものもある)。

そして、TALKIN' LOUD は2000年に入り、ロゴを一新した。



UKの音楽シーンを反映して、ドラムンベースやハウスなどのミュージシャンが多い。しかし、基本コンセプトは揺らぐことがない。

広義の “ジャズ” であること。
音作りがジャズっぽい、という表面的なことばかりでなく、音楽に向かう姿勢や目指すものが、ジャズの意識を持っていること。

実験的かつエンターテイメント性を失わない作品を生む新たな才能を、TALKIN' LOUD は今も発掘し続けている。


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