質問要旨
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県西部の輸送機器産業を中心としたものづくり産業はいま、
「製造現場からの脱炭素化をいかにはかるか」という世界共通の重い
課題に直面している。しかし、これはものづくりの2次産業だけの
問題ではなく、すべての産業が協働してサーキュラーエコノミーの
循環型共生圏をつくることを目指さねばならない。
そこでモデルとして紹介するのが、デンマークのカルンボー市で
ある。ここでは、企業間の廃棄物を資源として融通し有効活用する
「産業共生モデル」を構築している。このモデルには大企業だけ
でなく、地場の中小企業やスタートアップ企業が参加しており、
オープンイノベーションの実践がここで成されている。
しかし、レイクハマナ未来都市構想において、このカルンボー型
モデルを形成し、サーキュラーエコノミーの循環のループをつくろう
とすると、いくつかのボトルネックがあることに気がつく。
まずは、すべてのリサイクルの確立が必要だということである。
リサイクルの美名に隠れて不適切な処理が行われないよう法的には
廃棄物処理法があり、そのなかでも確実にリサイクルできる技術や
体制が整ったものから、順次「自動車リサイクル法」のように
特別法のカタチをとって独立させているのだが、現在ある特別法の
ものだけでは不足で、せっかくさまざまなリサイクル技術が確立
されてきても、法律が追いついていなければ、多くの廃棄物を
有価物にすることはできない。
また、既存の工業団地にリサイクル業を組み込み、工業団地内での
サーキュラーエコノミーをつくることがまずは現実的であると考える
が、これにも壁があり、建築基準法51条で都市計画区域に産業廃棄物
処理施設を設置するには都市計画審議会に諮る必要がある。
これらの課題に取り組み、日本のサーキュラーエコノミーのモデル
になり得る「レイクハマナ未来都市構想」をいかに具体的に描くか
所見を伺う。
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<答弁内容> 天野政策担当部長
サーキュラーエコノミーと「レイクハマナ未来都市構想」についてお答えいたします。
地球規模の気候変動に対応するため、世界は脱炭素社会に向け、大きく舵を切りました。
深刻化する地球環境の問題は、エネルギーや環境問題にとどまらず、国際的な産業競争力に
関わる経済問題となっており、その解決の「鍵」を握るのが、環境と経済が調和する
社会を目指す「地域循環共生圏」とされております。
レイクハマナ未来都市構想は、県西部地域に「地域循環共生圏」を形成しようと
するものであります。この地域は、我が国有数の「ものづくり産業」の集積地域であり、
脱炭素やリサイクルを意識した取組が極めて重要であります。
製造、生産を担う動脈産業と、そこから排出される廃棄物をきれいにして再び循環させる
静脈産業が一体化した工業エリアをつくっていく必要があります。
換言すれば、「循環経済」(サーキュラーエコノミー)の実現を目指すものでありますが、
そこから更なる成長へと飛躍していくためには、技術革新が不可欠であり、
産学官金の密接な連携が求められます。議員御指摘の、デンマーク、カルンボー市の、
企業間の廃棄物を資源として融通し有効活用する「産業共生モデル」も、
行政主導というより、自治体もパートナーの一人として、長い年月にわたる地域ぐるみの
持続的・内発的な取組の賜物とされています。
このため、県では、例えば、工業技術研究所が県内企業と共同開発した食物残さから
新たなエネルギーを生み出す小型実証プラントの食品製造現場への実装や、
大学や企業が連携して進める資源循環型のエネルギー創出事業への助成支援などに
取り組んでいるところであります。
一方、議員御指摘のとおり、レイクハマナ未来都市構想において、
カルンボー市型の、比較的規模の大きい循環経済モデルを構築しようとすると、
廃棄物処理に係る法令等の様々な制約に直面することとなります。
このため、くらし・環境部など関係部局と連携しながら、経済団体、関連企業などの
御意見を伺いつつ課題の整理を行い、必要とあれば、法令の改正などを含め、
国に対して要望してまいります。
県といたしましては、バックキャスティングの視点から、
「レイクハマナ未来都市構想」に「地域循環共生圏の形成」に向けた具体的な
取組の方向性を盛り込み、官民が、隘路となる課題の共有を図ることで、
脱炭素・循環型社会の実現を目指す道筋を明らかにしてまいります。
再質問
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レイクハマナ未来都市構想を推し進める際の課題ははっきりしているものの、この課題に対して、誰がやるのか、また、チームを作ったりしてやっていくのかが不明瞭である。
どのようなお考えをお持ちなのかを伺う。
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<答弁内容> 天野政策担当部長
レイクハマナ未来都市構想における産業廃棄物処理等の課題に対するチーム編成等に
ついてお答えします。
実際に、法令上の問題にかかわるところがございます。
そうしますと、廃棄物処理法等の法令に精通いたしましたくらし・環境部はもとより、
先ほど少し例をお示ししましたけれども、食物残渣をメタ発酵させてエネルギーを
作るというところが、今、工業技術研究所と県内企業4社で作り上げてきたものを、
いよいよ5月に協同組合を発足させまして、自走化に向けて売り込みにかかっている
ところであります。
そういった例もございまして、ここには技術革新と先ほど申し上げましたが、
循環経済を更に飛躍させるには技術革新、それを国頼りにするのではなくて、
県の公設試、民間企業の研究機関が一緒になって取り組む必要がありますので、
経済産業部等もこのチームに入ってくると思っております。
更に、ものづくり産業が集積した浜松地域でまずやるこの未来都市構想は、
その成果を全県展開していく必要があると思っております。
工業エリアは浜松地域だけではございません。中部、東部、伊豆にもですね、
その成果を全県展開させていくためには、政策推進局を中心とする部局も入りまして、
それを広く全県に横展開できるような調整も必要かと思っております。
議員御指摘のとおり、この問題をバックキャスティングの視点で、
必ず次の世代、次の世代にですね、実現できるようにチームを組んで
取り組んでまいりたいと思っております。