pinのかけら

人生ってながい…

夏の記憶~ヘンゼルとグレーテル~

2007-08-26 | Weblog
小さい頃の夏の思い出をもうひとつ。

小学校低学年の夏休み。
毎日たいくつをしていた私は、母に「遊園地に行きたい!」とか「動物園に行きたい!」とか、どこかへ連れて行って!のおねだりをしていた。
でも、仕事の忙しかった母には、そんな時間はなくて…

ある日、母は「じゃあ、送り迎えをしてあげるから、ふたり(私と弟)で、遊園地に行ってらっしゃいよ!」と言った。
遊園地というのは、県境の川を渡ったところにある小さなこじんまりした遊園地。
とはいえ、私は小学校低学年、弟はおそらくまだ幼稚園年少くらい・・・
今思えば、母の行動って大胆!!(今の世の中じゃ考えられませんね~。)
そして、その提案にのる私もすごい!ひとりで幼稚園児の弟の面倒をみるのだから・・・!
でも、その当時の弟は、身内がいうのもなんだけど、とってもかわいくて、知らない人からしょっちゅう「まあ、かわいい弟さんね~」って声をかけられて、私はそれが自慢だったのよね。
(私がかわいいと言われることはなかった・・・)

そして、母は私たちをの車で送り、「遊び終わったら電話をちょうだいね!」と私と弟を遊園地の前で降ろし・・・
遊園地で乗り物に乗ったのか、昼食はどうしたのか、その辺の記憶は全くないんだけど・・・
何人もの人に「2人できたの?お姉ちゃんえらいわね~」「まあ、かわいいわね~」と声を掛けられたことと、弟がサル山を気に入って、ずっとその前から離れず、うんざりしながらつきあったことだけは覚えてる。

夕方近くなっても、サル山から離れない弟をなんとか説得して、遊園地を出て、私は家に電話をかけた。
ところが受話器から聞こえてくるのは“おかけになった電話番号は現在使われておりません・・・”というアナウンス。
何度かけ直しても、同じ・・・

どういうことなの???・・・その時、最近〝ヘンゼルとグレーテル〟を読んだばかりの私が考えた結論は


「私たち、捨てられたんだわ!!」


そうなんだ!お母さんは私たちを捨てるつもりだったんだ。だから急に「遊園地に行っておいで」なんてやさしいことを言ったんだわ!
そして、私たちがいない間に、きっとどこかに引っ越してしまったんだ!!

さあ、この小さな弟をかかえて、これからどうしよう・・・

とにかく、住んでいた家まで、歩いてでも帰ろう!!車でしか来たことのないところだけど、川沿いを歩いていけば、きっとなんとか帰れる!!

私は弟を連れ、県境の川に掛かる橋を渡って帰ることにした。

橋までたどりついた頃に弟は「お姉ちゃん、疲れた!もう歩けない・・・」としゃがみこんでしまった。
しかたなく弟をおんぶして橋を渡る。
歩道はあるけれど、歩いてわたる人などほとんどいないような車のたくさん通る橋。
当然、弟をおんぶして歩いてる小さな女の子は、とても目立つ。
通り過ぎる車が何台も、スピードを落とし、「どこまで行くの?乗っていく??」と声をかけていく。
でも、その時の私、気分はすっかりヘンゼルとグレーテル。
悪い魔女に捕まって食べられちゃったら大変!!と思ってるから「いいえ!大丈夫です!!」とすべてきっぱりお断り。

橋はとても長くて、弟はとても重かった…けど、意地で橋を渡りきる。

渡りきったところにあった公衆電話が目に飛び込んできた。

「・・・もう一度だけ、電話してみようかな・・・」

受話器からは聞き慣れた母の声。
「え!もう出てきちゃったの?え??橋を渡った??すぐ行くから、そこで待ってて!!」

迎えに着た母の車の中で、電話が通じなかったことを話すと、「市外局番、回した??」という母の質問。


・・・シガイキョクバン???なんじゃそりゃ??・・・


その時、私は、市外局番の存在を知らなかったのです。
川の向こうが他県だったこと、他県に電話を掛けるときは、市外局番が必要なこと・・・そのとき学びました。

ホッとした車の中、へ~そうだったんだぁ~・・・知らなかったよ~と、さっきま自分達がヘンゼルとグレーテルだったことなんて、すっかり忘れてました。

思い出してみると、すごい発想ですよね、捨てられたなんて・・・

でも、あの頃の私、弟とふたりでどうにか生きていくぞ!と本気で思えるくらい、たくましかったですよ。もしかしたら、今よりずっとたくましかったかも。





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