黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

「最悪」だ・・・。

2010-11-03 22:00:58 | 民法改正
 最近,うちの飼い猫が一匹増えました。
 もともと,我が家にはアレックス(通称あーちゃん)という体重7キロの大きな猫がいるのですが,うちの親が小さな野良猫(メス)を保護しまして,最初はどこかの家へ里子に出そうとしたのですが,白地に茶色というあまり見栄えのしない猫で,しかも子猫というにはちょっと大きくなりすぎたせいもあってどこにももらい手がなく,結局うちで飼うことになりました。
 それで,その子猫に名前を付けることになり,色々考えた末に「シャナ」と名付けたのですが(命名の由来は追及しないで下さい),その名前どおり,小さいくせにやたら強気な猫に成長しています。何しろ,二倍以上の体格差があるアレックスに自分から飛びかかっていき,打ち負かしてしまうのですから・・・。おかげで,最近のアレックスは家の中でも居場所がなくなり,シャナが来られない高い場所でひっそりと寝ていたりします。
 シャナが来たことについて,仮にうちのアレックスが感想を述べるとしたら,まず間違いなく「最悪だ・・・」と答えることでしょう。

 今回の記事は,特に目的があるあるわけでもなく,とりとめのないものに過ぎませんが,最近の黒猫の心境も,実はアレックスのそれに近いです。
 このブログでも既に何度か触れているとおり,黒猫は東京弁護士会の法制委員会に所属しており,民法改正の日弁連対応バックアップ会議の委員も務めています。この委員をやっていると,BU会議の1週間前くらいに,法務省から日弁連経由で,民法改正に関する法務省作成の資料がどっさりと送られてきます(これらの資料は,法制審議会の開催前は部外秘とされていますが,開催後は法務省のウェブサイトにアップされ,誰でも入手することができます)。
 東京弁護士会からは,高須純一先生が法制審議会の民法(債権関係)部会幹事となっているため,月に1~2回くらいの頻度で開かれる法制審議会(正確には,法制審議会の民法(債権関係)部会)の前に,法制委員会のBU会議で議論して東京弁護士会としての意見をまとめ,その結果を法制審議会での議論に反映してもらうという段取りになっています。
 ところが,次回の法制審議会で検討する議題について,法務省からの資料が送られて,それに目を通して自分の意見をまとめるというのは,かなり大変な作業です。特に前回は,100頁を超える膨大な資料がBU会議の直前に送られてきて,しかも会議当日まで2日しかなく,意見書を作るのに一晩徹夜してもまだ終わりませんでした。医者から徹夜は止められているのですが,徹夜しなければ作業が時間内に終わらないんじゃ,徹夜も仕方ないでしょ・・・。
 次回の法制審議会は11月9日に予定されており,そのためのBU会議は11月8日開催予定。今夜は,法務省からの資料が送られてこなければ中小企業診断士の勉強に充て,送られてきたらその資料の検討に充てる予定でしたが,正直言ってパソコンのメールボックスを開けるのが苦痛でした。
 そのときの黒猫の心境を例えるなら,こんな感じです(中島みゆき様の『最悪』に合わせて歌ってください)。

  それは星の中を歩き回って 帰り着いた夜でなくてはならない
  決して雨がコートの中にまで 降っていたりしてはならない
  それは何にもない 何にもない部屋の ドアを開ける夜でなければならない
  間違ってもパソコンのスイッチが 付けっぱなしだったりしては
  間違ってもパソコンのスイッチが 付けっぱなしだったりしてはならない
  Brandy night 法務省からのメールが 
  Brandy night ちょうど流れてきたりしたら
  最悪だ

 恐る恐るメールボックスを開けてみたところ,法務省からのメールは届いていました。ただ,今回の議題はどうやら組合契約・終身定期金契約と和解契約だけのようで,分量も以前にくらべ少なかった(詳細版でも全41頁)ので,どうやら今回は徹夜まではしなくて済みそうです。
 これだけでは「黒猫のつぶやき」としては中身がなさ過ぎるので,最後に裏話を一つ。
 従来,法務省の立法に対する弁護士会サイドの意見は,日弁連と各単位会(東京三会,大阪弁護士会など)とで全くばらばらに議論され,意見書も別々に出されているのが普通で,弁護士会内部での意見調整などは(少なくとも黒猫の知る限り)試みられたことさえもないのですが,今回の民法(債権法)改正は特に重要な問題だということで,日弁連が各単位会宛に意見を募り,その意見を集約するという作業が現在行われています。
 ところが,各単位会といっても,東京三会のように会員数が数千人もおり,大阪弁護士会のように民法改正問題を検討するための特別委員会が設置されているようなところもあれば,会員数が数十人程度しかおらず,地域の「弁護士会」として最低限必要な会務活動を回していくために,一人の弁護士が5つ,6つもの委員会を掛け持ちするのは当たり前とされている単位会もあり(委員会活動に限らず,このような辺境地域の弁護士における会務活動の負担はとても重く,多重債務者問題に引っかけて「多重会務者」問題と呼ばれています),そういう辺境の弁護士会では,せいぜい法曹人口問題に関する議論をするだけで精一杯,とても民法改正に関する高度で複雑な議論に付いていく余裕はない,というのが実情らしいです。
 そういう単位会からは,9月末日までに意見書を出せという諮問を出したところ「模範答案を出してくれ」という要望があったらしく,それに応えて(?)日弁連が重点テーマをいくつかに絞って意見を求めても,結局「意見なし」という意見書が送られてくる始末。日弁連は回答期限を延長し,少しでも多くの意見を集めたいということらしいのですが・・・。
 そもそも,今回の民法改正については,実務上かなり重要な問題であるにもかかわらず,現役弁護士の大半は「どうせ弁護士会の意見なんか通りはしない,実際に法律が出来てから勉強すればいいや」などと考えているらしく,法曹人口問題などに比べると実務界の関心はかなり薄いようです。そんな態度で,知らぬうちにとんでもない民法が出来上がってしまえば,会社法の制定時とは比べものにならないくらいの混乱が生じるのは避けられないと思うのですが・・・。