黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

金の斧,銀の斧(改訂版)

2013-07-23 12:15:35 | 近未来の法曹界
 今回は,単なるネタ記事です。
<参 照>
金の斧,銀の斧(タダスケの日記)
http://d.hatena.ne.jp/tadasukeneko/20130721/1374393398
司法試験推進派の学者が手を滑らせて適性試験出願者数を泉に落としてしまいました。(Schulze BLOG)
http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52030251.html

 Schulze先生の言われるとおり,タダスケ先生のお話は結末がちょっと残念なので,黒猫流にアレンジしてみます。


 潰れかけた法科大学院制度の擁護に日々邁進している,遅稲田大学総長・法学学術院教授のの鎌口薫教授は,ある日ふと手を滑らせて,適性試験の出願者数を泉に落としてしまいました。
 どうしよう。このままでは法科大学院に学生が入ってこなくなる。
 鎌口教授が困り果てていると,突然泉から美しい女神様が現れて,優しい口調で教授にこう問い掛けました。

女神「あなたが欲しいのは,司法試験合格者の就職状況の改善ですか?」

鎌口教授「いいえ,違います。司法試験合格者は既に夢を実現した人たちであり,その人たちの就職のことなんかはどうでもいいんです。それよりも,司法試験に合格できるかどうか分からない学生たちの方が大事です。」

女神「あなたが欲しいのは,司法修習生に対する給費制の復活ですか?」

鎌口教授「いいえ,違います。そんなお金があるなら,むしろ大赤字の法科大学院に対する補助金にお金を回してもらいたいくらいです。法科大学院の予算を削られるおそれのある給費制の復活なんて全く望んでいません。

女神「では,あなたが欲しいのは,司法試験合格率の上昇ですか?」

鎌口教授「そう,まさにそうです! 司法試験の合格率が低すぎるから,司法試験に落ちるリスクをおそれて学生は入学してきませんし,司法試験の合格率が低すぎるから,学生は司法試験の受験勉強ばかりに気を取られて法科大学院の授業に集中しませんし,司法試験の合格率が低すぎるから,私たちも司法試験の受験指導ばかりやらされて好き勝手な授業ができないのです! どうか,司法試験の合格率を上げて下さい!」

 ある意味非常に分かりやすい主張を熱心にまくしたてる鎌口教授に対し,それでも女神様はにっこりと微笑みました。本当はこめかみの辺りにちょっぴり青筋を立てていたのですが,空気を読めない鎌口教授は気付きませんでした。

女神「分かりました。あなたの望みを叶えて差し上げましょう」

 女神様の言葉と同時に,あたりは眩い光に包まれ,鎌口教授は意識を失いました。

 鎌口教授が目を覚ますと,驚いたことに,司法試験の合格率はほぼ100%になっていました。択一試験は廃止され,論文試験は法律的なことがほとんど書けていなくても,白紙答案でさえなければ合格という試験になったのです。

鎌口教授「有り難い,女神様の偉大なお力によるものだ。これで法科大学院は救われる。

 しかし,教授が喜んだのも束の間でした。司法試験の合格率がほぼ100%になると同時に,司法修習はもはや維持できないということで廃止され,司法試験合格後に法律事務所等で2年間以上の実務経験と実務補習を経ることが弁護士登録の要件とされました(要するに,公認会計士と似たような制度になったのです)が,実際に就職して弁護士の登録要件を満たすことができたのは,司法試験の上位100位くらいに入った人か予備試験合格者,あるいは弁護士の子弟くらいでした。
 しかも,法科大学院での受験指導が全く行われなくなった結果,司法試験の上位100位は,ほとんどが法科大学院の修了者ではなく,予備試験合格者が占めることになりました。それ以外の人は,司法試験に合格しても弁護士登録をすることができない,いわゆる「待機合格者」となり,そのほとんどは他の就職先もない単なる社会のお荷物になり果てました。

 それだけではありません。司法試験のレベルがもはや行政書士試験すらも大きく下回るものになった結果,法科大学院の修了により資格を取得した弁護士は,その多くが基本的な法律用語すら理解できないレベルに成り下がり,一般市民からも「名ばかり弁護士」などと非難され,法科大学院出身の弁護士には仕事を依頼するな,と広く言われるようになりました。
 その結果,従来の新司法試験に合格した,それなりの資質を持つ法科大学院出身の弁護士までが深刻な風評被害を受けるようになり,また司法書士だけでなく行政書士までもが,真の法曹に相応しいのは弁護士ではなく自分たちだと主張するようになり,政府にも働きかけて弁護士の業務権限を脅かすようになりました。

 法務省と最高裁は,このままでは司法官僚の質を維持することができないと感じ,独自に「裁判官登用試験」や「検察官登用試験」を実施するようになりました。広く優秀な人材を集めるという名目で,これらの受験資格に法科大学院の修了や司法試験の合格は必要ないものとされた結果,裁判官や検察官を目指す人は法科大学院など見向きもしなくなりました。
 また,裁判所や検察庁の法科大学院に対する教員派遣は,どう考えても不必要なので全部取りやめになりました。教員の学者枠を増やせると教授達は一時喜びましたが,下位ローにおける唯一の良心と言われた裁判官教員がいなくなったことで,下位ローの教員体制はまさに壊滅的状況になりました。

 こうして,鎌口教授の落とした適性試験出願者数は,結局一人も戻ってきませんでした。法科大学院はその後間もなく潰れ,鎌口教授は職を失っただけでなく,激怒した遅稲田大学のOBたちに見つかったら袋叩きにされるおそれがあるので日本にもいられなくなり,世界中を転々として逃げ回った挙げ句,最後はカスピ海の孤島でぼろ布一枚にくるまれて最期を迎えたと伝えられています。
 めでたし,めでたし。

(言うまでもないとは思いますが,このお話はフィクションです。実在の大学・個人・団体等とは一切関係ありません。)

3 コメント

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女神さま (Unknown)
2013-07-23 21:54:56
今までの妄想記事は、もしかするとあり得るかと期待を込めた笑いがこみあげてくるものでしたが、今回の妄想記事は、ちょっとあり得ないので、笑いも半分でした。
 因みに、法科大学院協会とは、何をするところなんでしょうか?
各大学から会費集めて。。。

女神さまは、「あなたの中に神様はいるのよ。感情的になってはだめ。本当は、あなたも失敗だったと認めているのでしょう。素直になって。ローから逃げるなら今しかないでしょう。」と微笑んでいらっしゃいました。
 
 今は、ローの期末試験直前期です。
もうそろそろA日程の願書受付の時期です。はあ。
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Unknown (Unknown)
2013-07-24 12:12:12
学者は研究に励めばいいんですよ。
役割がもともと違うんですから。
なのに法曹養成とかやるから、
学問的にも実務的にも中途半端な、
よくわからない大学院ができて、受験生も実務家も国民も迷惑するんです。
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錯誤 (Unknown)
2013-07-24 16:14:34
>学者は研究に励めばいいんですよ。
役割がもともと違うんですから。

当の学者さんは、逆の発想ですよ。
「法科大学院は、学者のテリトリーなのに、実務家が大きな顔して侵入しおってきて。」と堂々とおっしゃっていますから、本試験と無縁であった学者こそが法曹養成に相応しいとの認識のようです(・。・;)
まあ、試験委員の学者さんは、そんなことおっしゃいませんけどね。
 ローの世界は、強気に出たもの勝ちですからね。筋が通るかとか、物事の本質など関係ない。。
 
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