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黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

もし予備試験に『採点実感等に関する意見』があったら

2012-07-07 22:58:04 | 近未来の法曹界
 今日,ネットで取り寄せていた『戸籍時報』二冊が届きました。
 愛知学院大学の米倉明教授(東京大学名誉教授)が,戸籍時報の2011年8月号で『法科大学院全廃も一つの道かも』,同10月号で『法科大学院制度廃止,法学部一元制創設及び同2年卒業制の導入を』という興味深い記事を書かれていることが最近分かったので,早速読んでみたのですが,特に前者は想像以上に過激な内容になっています。
 今,ブログでこの記事をどうやって紹介するか検討しているところですが,今回はその前に,昨年の司法試験予備試験に関する小ネタをお送りします。

 2011年度予備試験の論文式試験では,憲法に関し以下のような問題が出題されました。

[憲 法]
 多くの法科大学院は2004年4月に創設されたが,A大学(国立大学法人)は,2005年4月に法科大学院を創設することとした。A大学法科大学院の特色は,女性を優遇する入学者選抜制度の採用であった。A大学法科大学院が女性を優遇する入学者選抜制度を採用する主たる理由は,法科大学院・新司法試験という新しい法曹養成制度の目的として多様性が挙げられているが,法曹人口における女性の占める比率が低い(参考資料参照)ことである。A大学法学部では,入学生における女子学生の比率は年々増え続けており,2004年度には女子学生が約40パーセントを占めていた。A大学法科大学院としては,法学部で学ぶ女子学生の増加という傾向を踏まえて,法科大学院に進学する女性を多く受け入れることによって,結果として法曹における女性の増加へ結び付けることができれば,法科大学院を創設する社会的意義もある,と考えた。
 A大学法科大学院の入学者選抜制度によれば,入学定員200名のうち180名に関しては性別にかかわらず成績順に合格者が決定されるが,残りの20名に関しては成績順位181位以下の女性受験生のみを成績順に合格させることになっている(このことは,募集要項で公表している 。)。
 男性であるBは,2007年9月に実施されたA大学法科大学院2008年度入学試験を受験したが,成績順位181位で不合格となった。なお,A大学法科大学院の2008年度入学試験における受験生の男女比は,2対1であった。
〔設問1〕
 あなたがA大学法科大学院で是非勉強したいというBの相談を受けた弁護士であった場合,どのような訴訟を提起し,どのような憲法上の主張をするか,述べなさい(なお,出訴期間について論ずる必要はない 。)。
〔設問2〕
 原告側の憲法上の主張とA大学法科大学院側の憲法上の主張との対立点を明確にした上で,あなた自身の見解を述べなさい。
(参考資料である『法曹人口に占める女性の比率』は引用省略)

 予備試験については「採点雑感等に関する意見」は公表されていませんが,もし作られていたらどんな意見が書かれていたのでしょうか? 勝手に想像してみました。

<採点雑感等に関する意見(ウソ)>
 本問は,『出題の趣旨』でも述べたとおり,いわゆる積極的差別是正措置を含む法科大学院の入学者選抜制度の合憲性(憲法第14条違反か否か)を問う問題であるが,実際の答案には,例えば以下のような解答をするものが目立った。

「本問は,どのような訴訟を提起し,どのような憲法上の主張をするかという問いであるが,『基本的人権を擁護し,社会正義を実現する』(弁護士法1条1項)という弁護士の使命に鑑みれば,Bからこのような相談を受けた弁護士としては,そのような事件を受任する前に,そもそも法科大学院教育は司法試験の受験資格を取得する以外に別段の存在意義がなく,その教育内容も社会的に評価されていないこと,入学者の大半が司法試験に合格できず単なる失業者になっていることなどの社会的実態をBに対し懇切丁寧に説明し,裁判に訴えてA法科大学院の入学を勝ち取ってもおそらく何のメリットもないことをBに納得させる責務があると考えられる。」

「法科大学院入学の許可を求める法律上の利益(行政事件訴訟法37条の2第3項)は認められるとしても,事実上の利益は存在しないものと考える」

「既に女性受験者を30%以上も確保しているにもかかわらず,A大学法科大学院が敢えて成績の低い女性受験者を合格させているのは,法曹というよりは法科大学院教授らの愛人候補を養成するためであると推定するほか無く,そのような法科大学院に男性が入学しても良いことは何もない。弁護士としてはまずBを思いとどまらせるべきである」

「誇大広告をして学生を集めた法科大学院に損害賠償請求をするならともかく,法科大学院に行政訴訟を起こしてまで入学許可を求めるなどは狂気の沙汰である。説得しても聞き入れないようであれば精神鑑定が必要である

「学内でこのような措置が容認されるということは,A大学の憲法教員にはろくな人物がいないことが強く推認される。他の法科大学院を当たった方が現実的であろう」

「Bが未修者コース・既修者コースのいずれを選択したのかは不明だが,特に未修者コースであれば7~8割が中途退学又は三振と言われており,既修者コースも今後相当の悪化が懸念される。Bはこのような実情を熟知していないと思われるため,多大な費用と労力を掛けてこのような訴えを起こすよりは,予備試験の合格を目指して勉強する方が現実的であることをまずBに教えるべきである」

「いまや法科大学院は『崩壊大学院』と呼ばれている。そうした現実を知らないBに現実を説明せず,漫然とこのような訴えを起こさせるのは社会的正義に反するのではないか。最近は仕事がなく食べていけない弁護士が多いと言っても,このような事件まで安易に受任するようでは,もはや法曹界は終わりである

女の子目当てにローに入っても何にも良いこと無いよ。Bにはそのくらい教えてあげるべきだと思う」

「A大学法科大学院側は,Bを入学させることは本学のアドミッション・ポリシーに反するものであり,仮に裁判でBの入学が決まってもソクラスティック・メソッドでいじめ倒し簡単に進級させるつもりはないから,結局BにA大学法科大学院への入学許可を求める利益は無いと主張することが考えられる。このような主張は法的には失当であるとしても,事実上はBに入学する意味を失わしめる重大な主張である。強いてA大学法科大学院への入学を求めるのではなく,A大学法科大学院の入学不許可処分を違法行為として国家賠償請求訴訟を提起した方が現実的ではないか

「今2008年ということは,3~4年もすれば定員割れになり入りやすくなるから,それまで待った方がいい。こんなろくでもない理由で入学者枠を決める大学は没落するのも早いはず」

 解答者の言い分はもっともだと思うが,本問はあくまで憲法上の問題点に関する設問に答えるものであり,また問題の時期は2008年であって,法科大学院制度の破綻が既に明らかとなった2011~2012年頃の問題ではないから,解答者諸君は憲法論に関する解答に専念してもらいたい。

1 コメント

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阿呆か大学院 (なめ猫)
2012-07-08 02:18:30
>A大学法科大学院の入学不許可処分を違法行為として国家賠償請求訴訟を提起した方が現実的ではないか

憲法違反行為を公然と行っている,アホなA大学法科大学院を認可し,同院に対し多額の補助金を交付しつつ該行為を組織的に野放し・支援している,国(文科省)の幇助責任を追及すべく,国(法務大臣)も被告に加えてくださいね。
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