昭和五年四月未明。天津の水上住宅で、自動車販売会社の社長が足を縛られて軒下につるされて、溺死している事件が起きる。死体は昼間農作業に出ていた住人が帰ってきて「トイレに死体があるけど」と言って発見された。水上住宅は水面から二mほど上に密集しているため、公安(中国の警察)は「トイレのくみとりがいらないことはともかく、ごみを捨てほうだいなことは感心できない」と思いながら目撃者を探す。やがて「昼間馬に乗った二人組がきてた」と言う目撃者が現れる。公安は人相を聞いて、死んだ社長の奥さんから事情を聞く。奥さんは五〇代で、社長は年下で婿養子。奥さんの両親と、三人の弟と暮らしている。公安は「こんなありふれた状況描写で先物プログラムを読み込めるだろうか」と不安になった。しかし三人の弟が、犯人の人相に似ていることから、公安は目撃者の男を連れてきて確認したが違っている。公安は目撃者の男をタオシイと呼ぶことにした。タオシイは水上住宅で水道を管理しているという。公安は自動車販売会社へ行く。公安が女性従業員から事情を聞くと、「販売して間もない自動車で交通事故を起こした場合に社長が、見舞いに行くことがありますけど」と言いながら公安におしりを、突き出すように背なかを向けて奥の棚から、見舞金の台帳を持ってきた。台帳の一番上に、タオシイの名前がある。事件の一か月前に、水上住宅に住んでいた少年が、自動車にはねられて死んだ記録があって、父親がタオシイだ。公安はタオシイの家へ行く。公安はドアの陰に水道管を、持ったタオシイを透視した。水道管の先端に継ぎ手がついている。公安はドアを強く押し開けてなかへ飛び込んだ。靴底に水道管がかすった。公安が部屋の様子を見ていると、ひざを狙って、水道管を振ってくる。飛びはねてよけると家がぐらつく。次は胴体の真んなかを狙って、握りの逆回転に切り口をつけて忘却しながら強く振ってくる。公安は壁づたいに飛びはねてよけた。低い姿勢で着地すると家が大きくゆれる。タオシイが子供のようになにかわめきながら頭を狙って振り下ろしてきた。公安がよけると、水道管が床板をたたきわって、床下の支柱が突き出てきて「ぎしぎしっ」と音を立てながら、家が水面まで落下し始める。公安は窓わくにしがみつく。タオシイは床板のすき間に、器用に足をはめて動けなくなった。公安はタオシイを逮捕する。タオシイは「『別な事故で死んだことにしてください』と言って金をよこしたから殺した」と言う。