むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㊶

2019-08-06 10:09:37 | 小説
 ヤフーオクで入札がある十万円金貨をよく見ると、業者が出品している物だ。これは大きな手変わりがあって趣味品として取り扱える物を買いとりして出品している。記念金貨をよく見ると、刑務所みたいなところでつけたと思われる細かいひっかき傷があるっ。持ち主の阿呆な女が気づかないでプレッシャーに耐えられなくなって天変地異を叫ぶことがある。やめてもらいたい。十万円金貨は不動産投機が過熱し始めた昭和61年に「入居者の持ち物からリスクを受けることがあります」と告知するための国策で発行された。金貨そのものに独特な生体負荷があるわけだ。タイトルは乳母車。

 昭和五年一〇月未明。上海で乳母車の、販売店の社長が鼻にどんぐりを入れられて、口におむつを詰め込まれて死んでいる事件が起きる。死体は女性従業員が発見して、どんぐりは台所にいくつかあった物で、おむつは展示している人形の物だった。女性従業員は胸が大きい二五歳と小さい三〇歳の二人で、どちらも死んだ社長と肉体関係があるみたいだ。公安(中国の警察) は、犯人は女性従業員のどちらかだと直感したが複雑な古代ゲームを、思いつきかけたので手順を変えることにした。公安は奥さんから事情を聞く。死んだ社長は五〇歳で、奥さんは三五歳だが、子供はいない。公安が「どうして子供をつくらないんだ」と聞いたら、奥さんは「主人は『子供はお客様の都合だから、おれたちはつくらない』と言ってたから」と答えた。昔はおむつを売っているだけの会社だったが、工作工場を買収してからは、乳母車をつくって販売しているという。社長と、女性従業員との関係を聞いたら、奥さんは「主人の会社だから好きにさせてる」と答えた。夫婦の寝室は、店の二階にあるが事件当時社長は食事を終わらせてから外出していたという。公安が「社長が死んでるのになぜ気づかなかった」と聞いたら、奥さんは「熟睡してたわ」と答える。公安はやっと古代ゲームの全体像が見えた。「シーソーゲーム」だ。まず直径一一㎜の鉄球に、長さ二〇㎝ぐらいのシーソーレール。シーソーは高さ五㎝くらいで中央に溝があって、溝にはまれば一点。シーソーが一一個並んでいて、へらを使って下げたり上げたりして一回ずつ交替で遊ぶ。先に六点とった方が勝ちで、問題は溝の前後が盛り上がっていて、溝の両わきにあるレールが、外側にふくらんで鉄球が通過する構造だ。鉄球に加速をつけすぎると、溝を飛び越える設定になっていた。調子よく連続得点することが難しくてシーソーゲームになる。公安が六点目を想像しながら、二五歳の女性従業員に事情を聞くと、「私は昨日家へ帰って忘れ物に気づいて、店へとりに戻ったんです」と言う。公安が「なん時頃」と聞いたら、「午後一一時頃でした。店に明かりがついてて、社長がいます。私が『忘れ物をとりにきた』と、言うと社長がどんぐりを鼻の穴に詰めて、『子供をつくろうよ』と言いながら私のからだをなでまわします。それで私がそばにあったおむつを、口に押し込んで鼻をつまんだら死んじゃいましたよ」と言った。公安は二五歳の女性従業員を逮捕する。