むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター54

2019-08-19 10:29:40 | 小説
 昭和五年一月未明。香港の録音装置を開発する研究所で所長が、高電圧ケーブルを口に押し込まれて感電死している事件が起きた。所長は五〇代で研究所に四〇代の男性研究主任と、三〇代の女性研究班長と、二〇代の研究員が一〇人いる。死体は午前八時一五分に女性班長が研究室で発見した。通報があったのは午前九時三〇分だ。所長は録音用の紙テープに、樹脂を張るときに使う高電圧装置のケーブルで、死んでいる。研究所では紙テープを、使った録音装置をつくって放送局に売っていたという。公安が「どうしてすぐ通報しなかったんだ」と女性班長に聞いたら、「寝てるように見えました」と答える。公安が「録音装置は、なん人でつくるんだ」と聞いたら、「私と、主任と所長の三人でつくります」と答えた。作業机が一〇台あって所長の死体に、まったく関心がなさそうに、研究員が机に向かって待機している。公安が主任から事情を聞くと、主任が「政治家の声を、録音するための金箔を、張った録音テープをつくってるんだ」と言う。主任が時計を見ながら「一〇時ちょうど。開始」と叫ぶ。研究員一〇人が一斉に机の下から道具を出して、作業を始めた。電気ごてで金箔を溶かして石のような物に貼りつけている。公安が様子を見ていると、研究員たちがつくっていた物はイギリスの金貨だった。公安が主任に「なぜイギリスの金貨をつくってるんだ」と聞いたら、「イギリス政府に依頼されて、特別につくってる」と言う。公安は金箔の仕入れ先を聞いてそこへ行く。小さな店に金箔を張った屏風がびっしりと並んでいた。公安が店主から事情を聞くと、「未来の、日本の金貨なら以前つくってたよ。六〇年ぐらい先の年号を入れてそれっぽくだ」と言って業務用の使用済み封筒をさし出す。金箔の仕入れ先は、ビルの一室だった。公安がそこへ行くと、ドアが開いている。なかの様子を見ると、背広を着たイギリス人が立っていて、中国人の男が、外国の金貨を溶かして、金箔をつくっていた。イギリス人が「『傷がある鋳型を修正するように』と言いに行ってどうして殺す必要があるんだ」と言う。中国人の男が「『自ぶんで探せ』と言ってたが『自ぶんでつくれ』に聞こえた」と答える。公安が姿を現すと、中国人の男が、金ぴかの拳銃をとり出した。公安が近くにあったハンマーを投げつけると、男の口に「すぽっ」と入ってひっくり返る。公安は中国人の男を逮捕した。