美意識を磨く 文田聖二の『アート思考』

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「アートは自分と無関係」ですか?

2019年10月11日 22時19分35秒 | 日記
美術館や画集で世界的な名画を鑑賞してもよく分からないのは、絵心や感性、才能の有無の問題ではありません。言葉や文化が違う異国の書籍や映画を翻訳や字幕なしに眺めているようなものなのです。絵には、制作された成り立ちや題材の意図、技法の発展、画材の発明、画家の師弟やライバル、パトロンなど影響を与えた人々との関係や社会背景があります。その時代のサイエンスとも共鳴し合ってきたアートはすべての人に関係し、芸術家のエピソードは異なる文化圏の人々の心にも響くはずです。

古代人が絵を描きはじめてから現代まで4万年ほどのアート ヒストリーがあります。そんなアートの歴史はヒトの進化の歴史ともいえます。古代では木の実などの樹液や土、血液などを混ぜて作った絵具と木の枝や動物の毛を画材として使い、中世ではモザイク画やフレスコ画などの技法が開発され、ルネサンス期以降、絵画技法の発展や油絵が発明されてから現代までの数百年に社会の変化に伴って絵画様式もその役割も変わっていきました。アートとサイエンスの発展によって、ヒトや社会の成長が促進されたともいえるのです。

何か才能や技術がないと創作、表現をすることが出来ないと勘違いをしている方がたくさんいます。絵にしても小説にしても勉強、仕事や遊びにしても大切なのは突き動かす衝動であり、その衝動を誰かに伝えたいという欲求があるということです。だから芸術の本当の魅力は、才能ではなく”強い想い”から浮き彫りになっていく作者自身の生きざまとそこから生まれた独特な表現なのです。

芸術家自身と創造したアート作品は「気質、習慣、思いの強さ、誰かの支え、出会い、環境、…」とさまざまな境遇(組み合わされた条件)の違いによって異なる魅力や特徴、それぞれが唯一無二のものとして構築されたといえます。芸術家は十人十色で、それぞれが違った生き方をしています。それだけ生き方にはたくさんの選択肢があるということです。

幕末志士の坂本龍馬が『人の世に道は一つということはない。道は百も千も万もある。』と語っていたように読者の皆さんも十人十色の自分らしさを見つけて表現すれば芸術家といえるのです。