徒然草紙

読書が大好きな行政書士の思索の日々

遺言状 その10 自筆証書遺言

2005-07-27 10:44:16 | 遺言状
遺言状を作るときに、気になるのは、遺言状の
内容が他の人に知られたらどうしようか、という
ことでしょう。

遺言状には、財産の分割方法はもとより、場合
によっては、家族の知らない子供の認知につい
ての記載があるかも知れません。
このように、自分の生前に家族に知られたくない
ことがらを遺言状に記載する場合には、その内容
を秘密にしておく必要があります。

その手段として、考えられるのは、自分で遺言状
を書く、いわゆる「自筆証書遺言」の利用です。

「自筆証書遺言」は、自分で書くものですから、
お金がかかりません。また、いつでも思いついた
ときに書くことができます。ちょっと考えると非常
に簡単な方法にみえます。

しかし、以前、このブログでも書かせていただいた
ように、遺言状の作成には一定の決まりがあり、
それに反した遺言状は無効になってしまいます。
「自筆証書遺言」は、自分で書くものですから、
決められた遺言状の様式に少しでも違反すると、
せっかくの遺言状が無効になってしまいます。

また、きちんと様式にのっとって書いた遺言状で
あっても、それが家族に見つからなかった場合に
は、無駄になってしまいますし、見つかったとして
も、すでに家族の間で遺産分割協議が終わって
しまっていたら、遺言状の内容にしたがって遺産
分割をやり直すか、それとも家族間の遺産分割
協議を優先させるか、どちらかに決めなければな
りません。

いわば、二重に手間がかかってしまいます。

さらに、遺言状の内容について、家族の間で争い
が起きる可能性もありますし、以前書いたように
「検認」の手続きも必要となってきます。

一見、簡単なようでいて、その実、以外と面倒なの
が「自筆証書遺言」なのです。

そのため、「自筆証書遺言」を書く場合には、自分
ひとりではなく、行政書士や弁護士などの専門家
に相談をすることをおすすめします。

そうでなければ、費用はかかりますが、安全な「公
正証書遺言」を利用して、立会人として、行政書士
などの、法律で守秘義務が定められた専門家を
頼むというのがよいのではないかと思います。


宇宙戦争観ました。

2005-07-24 13:10:28 | 日記・エッセイ・コラム
昨日、「宇宙戦争」を観てきました。

正直言ってこわかったです。トライポッドの圧倒的な
力の前に、なすすべもなく逃げ惑う人間のなかに自分
もいるような気がしました。

映画を観終わってから、家に帰ってお茶を飲んでいた
ところに大きな地震がありました。そのとき私の思った
ことは、地震ではなくトライポッドが街をのし歩いている
のではないかということでした。実際、地震が起きたとき
に、真っ先に私がしたことは、窓から見える空を見上げ
ることでした。それくらい、「宇宙戦争」に登場したトライ
ポッドには妙なリアリティがありました。

さて、「宇宙戦争」でスピルバーグが描いているのは、
理不尽な暴力に対する恐怖です。映画に関するインタ
ビューのなかで、彼自身が9.11テロ以降、非常な恐怖
をもって暮らしていることを語っていました。なにが起こる
のかわからない。そのような恐怖に満ちた社会を我々は
生きている。そのような内容であったかと記憶しています。

異星人が操るトライポッドは、テロを始めとする理不尽な
暴力の象徴だと思います。そのように考えると、「宇宙戦争」
が単なる宇宙人の侵略SFものとはちがっていることがよく
わかります。

「宇宙戦争」には「ID4」のような派手な戦闘シーンはほとんど
出てきません。主人公は家族を守るために必死に闘いますが、
それは、宇宙人との闘いではなく、自分たちが生き延びるため
の闘いです。理不尽な暴力から逃れ、再び平和な日々を取り
戻すための闘いなのです。闘うべき相手は宇宙人だけではなく、
自分自身のおくびょうなこころなのです。

また、映画のラストで宇宙人を殲滅するのは、人間ではありません。
地球上の微生物です。このあたり、スピルバーグは原作に忠実です。

映画の設定が、100万年も前から地球を監視していた宇宙人に
よる侵略となっていましたので、この宇宙人には、地球上の微生
物に対する知識も当然あるはずだから、原作どおりにはいかな
いだろうというのが、映画を観る前に思っていたことです。

けれども、案に相違して原作に忠実なラストとなったのは、「宇宙
戦争」の主題が、侵略してきた宇宙人に対する人類の闘争ではな
く、トライポッドに象徴される理不尽な暴力に対する闘争とその克
服にあるからだと思いました。

人類は地球の支配者であり、そのために必要ならば何をしてもか
まわない。使えるものはなんでも使うのだ。そうすれば人類に不可
能なことはなにもない。

人類の歴史は、このような考え方のうえに成り立ってきたのだと思
います。しかし、それは間違いだったことがわかってきました。

人は他者との関係を抜きにして、生きていくことはできません。他人
を踏みつけにして生きていくことは、一時的には良いようにみえても
後で必ず報いをうけます。

大切なことは、自分の周りにあるものは自分のために存在している
という考え方を改めることでしょう。自分を取り巻く環境によって
自分は生かされているという認識をもつことが大事なのではないか
と思います。

ひとりよがりでいる者のすることには、必ず限界があります。その限
界を破るためには、他人との連帯が必要となります。
「宇宙戦争」でスピルバーグが原作に忠実なラストにした理由は、こ
れだろうと思います。

ところで、「宇宙戦争」の宇宙人の顔が「ウルトラセブン」に登場する
「ガッツ星人」に似ていると思うのは私だけでしょうか。




遺言状その9 遺言状の無効

2005-07-20 18:59:18 | 遺言状
せっかく書いた遺言状が無効になってしまう。

こんなことを考えたことはありますか?

遺言状には決められた書き方があって、それに
反した場合には、その遺言状は無効になって
しまいます。ですから、遺言状を書く場合には、
事前に充分な注意が必要です。

遺言状には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、
公正証書遺言の3つがあります。それぞれに
ついて、書き方が決められています。

もっとも安心なのは、公正証書遺言です。これは
遺言を遺す人の依頼によって、公証人が書くもの
ですから、遺言をする方からすれば、面倒なことは
ありません。ただし、費用がかかることと、2名の
立会人が必要となりますので、費用がかかるのは
ちょっと、という人や、遺言の内容を他人に知られた
くないという人は、利用を考えてしまうかもしれません。

そうしますと、自筆証書遺言か秘密証書遺言のどちら
かひとつを選ぶことになりますが、こちらについては、
冒頭述べたような、遺言状の書き方の間違いによる
「遺言状の無効」といった問題が常につきまといます。
さらには、前回書いた「検認」の問題もあります。

ですから、こちらを選ぶ場合には、行政書士、弁護士
などの専門家の相談を受けることをおすすめします。
費用はかかってしまいますが、安心のための費用とし
て、割り切ることも大事ではないかと思います。

同じ費用がかかるのなら、公正証書遺言の方が良い
と思うけれども、他人に遺言の内容を知られたくない
という人は、立会人に行政書士などの専門家をたのむ
のもひとつの方法です。

行政書士をはじめとする専門家には、法律で守秘義務
が定められていますので、安心して任せることができま
す。

いずれにしましても、遺言状を書く場合には、まず、専門
家に相談されることが、後々のトラブルを避けるためには
必要です。



遺言状 その8 「検認」の問題と公正証書遺言

2005-07-13 17:22:48 | 遺言状
遺産分割協議には、相続人全員の同意が
必要です。そして、相続人のうちのひとりが、
行方不明の場合には、どうにかして、その人
を探すか、失踪宣告の申立てをするか、そ
れでなければ家庭裁判所に特別代理人を
選任してもらわなければなりません。

いずれにしても、大変な労力がかかります。

そこで、遺言状を使って、このような場合
に備えることが必要となってきます。
遺言状に、財産の分割について、きちんと
記載されてあれば、たとえ、相続人のなかに
行方不明の人がいる場合でも、大騒ぎをして
その人を探す必要はありません。

(もっとも、行方不明になっている人が遺留分
の権利を持っている場合には、少し話がちがっ
てきますが。)

しかし、その場合でも、財産の分割はできる
わけですから、相続人がそろわなくて、分割
協議ができず、財産が宙に浮く、といった事態
は避けることができます。また、分割協議のた
めの面倒な手続きも必要ありません。

しかし、同じ遺言状でも、種類によっては、財産
の分割ができないおそれがでてくるものがありま
す。

遺言状を自分で書く、「自筆証書遺言」や「秘密
証書遺言」の場合ですと、財産の分割ができない
おそれがあるのです。

この二つの遺言状には、開封するさいに、「検認」
という手続きをとることが必要とされています。

「検認」は、その遺言状が、たしかに被相続人によっ
て書かれたものであることを証明するために取られる
手続きです。この時には、相続人全員の立会いが
必要です。そのときに行方不明の人がいたらどうなる
でしょうか。

探し出すか、代理人をたてるか、いずれにしろ、「検認」
の作業だけで大変な時間がかかってしまいます。

そこで、お勧めするのが「公正証書遺言」です。
「公正証書遺言」には、「検認」の手続きが必要ありませ
ん。そのため、遺言状に記載された内容をスムースに
実行することができます。

遺言状はあっても、その内容の実現がなかなかできない。
このような、問題を解決できるのが、「公正証書遺言」です。


遺言状 その7 代襲相続

2005-07-07 11:20:01 | 遺言状
相続と遺贈の違いについて書いたときに
代襲相続という言葉を使いました。
今日は、その代襲相続について書きます。

代襲相続とは、被相続人よりも前に相続人
となるべき人が亡くなってしまった場合に、
その人が相続する予定の相続財産を、その
人の子供が相続することをいいます。
このようにして、財産を相続する人のことを
代襲相続人と呼びます。

代襲相続人になれるのは、法定相続人の
子供です。
法定相続人のなかで、被相続人と親子の
関係のある相続人の子供には、たとえ、
その子供が亡くなったとしても、その子供
に代襲相続の権利が認められています。

被相続人の兄弟の子供(つまり、被相続人
にとって、甥や姪)の子供には、代襲相続は
認められていません。

問題となるのは、代襲相続人の行方が知れ
ない場合です。

遺産の分割は相続人全員で行なわなければ
なりません。ひとりでも、相続人が欠けた状態
で行なわれた遺産分割は無効となってしまい
ます。
そのため、このような場合には、なんとしても
代襲相続人を探し出すか、それがだめなら、
失踪宣告の手続きをとるか、家庭裁判所に
不在者財産管理人を選任してもらって、その人
をいれて、遺産分割協議を行なうかしなければ
なりません。

いずれにしても、時間と労力がかかって大変
です。

そこで、遺言状の活用が考えられます。代襲相続
の権利をもつ子供の行方が知れないといった事情
がある場合には、遺言状によって、財産の帰属先
を明確にしておくのです。そのことによって代襲相
続人の行方がわからないために、遺産分割が困
難になることを防止するのです。