羽根光る蝿
死んでなんかいない
生きているときよりも
もっと生き生きと
羽根光る蝿
空の向こうに
飛んで行く
(真鹿子)
深夜に帰宅して、文字通りバタンキュウと、わたくしのいつも定位置に倒れ込み、ちょうど顔のところに風があたるように設置している扇風機をつけて、解放感いっぱい♪♪24時間中一番心地いいひとときを過ごしていると、目前のカーペットの上を、黒くて小さな虫らしきものがチョコマカとせわしげに移動している。目を凝らして見ると、いびつな円や四角を描きながら、小さなハエが歩いている。
ハエってこんな風に歩く虫だったのかしら?携帯のカメラのズームを最大に拡大して覗き込むと、パッチリと可愛いい複眼のハエだけれど、右側の羽根の付け根のところを痛めているようだ。
近頃わが家のボス猫がジャンプアタックのハエ狩りに目覚め、時折ベランダから入ってくるハエを楽しみにしている様子だけれど、アタック攻撃を受けて、負傷したのかもしれない。
ハエの治療といっても、消毒液をかけると、かえって逆効果かもしれないし、こういう風に出会ったのも何かのご縁だから、見つめていると、やがてハエ君の動きも鈍くなって、眠りはじめたのか、わたしも眠り込んでしまった。わたしはいったん眠りにつくと、危険かもしれないくらい、深く眠り込んでしまう熟睡型らしいので、睡眠途中で目覚めることはなく、朝になって見ると、動かなくなったハエのからだだけを残して、もういなくなっていた。
わたしたちはみんな、もともと、不生不滅の存在なのだから、ハエ君は今頃、傷ついて残念な念の羽根を念入り強化して、六甲山の空の向こうを元気良く飛び回っていることだろう。
ところでハエの驚異的なの飛翔能力は、もはや超能力である。空間に一瞬、手足を突っ込んでいるかのような静止飛行、直進飛行をしながらの方向転換急発進や、急上昇ジグザグ飛行に、急降下瞬間移動と、まるでUFO!ハエの飛翔能力の解析結果が、UFO製造の根幹となっている可能性も、なきにしもあらず!我が羽根光るハエ君のからだが、外れてしまった、わたしたち不生不滅の聖なるいのちの流れのなかの、ハエ君の強化された羽根の念は、ちょっとおちゃめなハエ型の未確認飛行物体となって、華麗なる飛行の、暗号めいた飛跡を残しながら、六甲山系はるかなる空へと飛んで行く。