愛詩tel by shig

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風がささやく 3

2009年04月15日 20時21分17秒 | 小説

風がささやく 3

   谷田茂

札樽自動車道までは10分もかからなかった。

札幌ジャンクションで道央道に乗ったところで、瞳に尋ねた。

「地平線の見える大牧場に行く前に、富良野に立ち寄る予定なんだけど。

構わないかな?」

「もちろん。まったく計画のない旅だから」

「よかった。それと、泊まりはファーム・インといって、農家が経営する宿なんだけど。

そこのコッテージを取ってある。寝室は2つあるから、一緒でいい?襲ったりしないよ」

「大丈夫。信用してるわ。卜部さん紳士だもの」

「紳士とまでは言えないけど、分別はあるほうだ」

そのとき、BMWのオープンカーが横につけた。

若い男で、走り屋って感じだ。ニッと不敵な笑いを見せて、急加速した。

「ねえ、ちょっとスピード上げるよ。挑戦されては黙っていられない」

「大丈夫。負けないで」

僕はシフトレバーの上にある、Sボタンを押した。

オペルに付いている、スポーツモードだ。押せばオートマでも加速性能が発揮される。

アクセルペダルを目いっぱい踏み込むと、背中がシートに強く押し付けられた。

アストラはぐんぐん加速し、遥か前方のBMWがあっという間に近づいた。

BMWを抜き去るとき、走り屋の男はびっくりしたような顔をしていた。

「すごいわ。これ、スポーツカーなの?」

「まさか。普通のセダンだ。ドイツではサルーンと呼ばれてるけど。

ただ、この車は特別に生産されたうちの1台で、高速で稲妻のように走る。

エンブレムの稲妻のマークは伊達じゃない」

1時間ほどで高速を降り、田舎道を通り越し、山間部を走る。

小さな滝で休憩し、やがて<msnctyst w:st="on" address="富良野市" addresslist="01:北海道富良野市;">

富良野市

</msnctyst>街に入った。

渋滞を避け、農道を走る。ほどなくファーム・インのコッテージが見えてきた。

コッテージの前にアストラを停め、エンジンを切った。

向いにある建物がオーナーの家だ。チャイムを鳴らした。

奥さんが出てきた。

「卜部さん、いらっしゃい。鍵は部屋にあります」

「どうも。それと、二人で泊まります。あと、夕食なんですが二人分用意お願いできますか?」

「はい、分かりました。いつものですね」

僕は頭を下げ、車に戻り、瞳をコッテージに案内した。ログハウスだ。

「わあ、カントリーハウスね。とても素敵だわ」

「ここはリビング。2階が君の部屋だ。荷物を置いたら外に出ておいで」

僕は瞳を裏の畑に案内した。瞳は息を呑んだ。

「わあ、ひまわり畑。圧巻ね」

僕はカメラを構え、ファインダーを覗くなり、すぐにソフトフォーカスレンズに交換し撮影した。

その間、瞳は一面に広がったひまわり畑に見入っていた。

瞳を畑から引き離してリビングに戻り、カメラをケーブルでテレビにつないだ。

そして、さっき撮ったばかりのひまわり畑を画面に映した。

瞳は「え?!」と声に出した。

「これ、さっきのひまわり畑?なんだかファンタジックに写ってる」

「うん、幾つか傷んだ花があったから、ソフトフォーカスレンズを使って分からないようにした」

「ふうん、これがプロの技なのね。納得」

「ひまわりって、日に向かう葵って書くよね。今の君にはそんなパワーが必要かもしれないね」

4につづく

Himawari

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