元上場証券会社店長のブログ

元上場証券会社の店長(東京日本橋支店・大阪北浜支店)現在現役株式為替ディーラーのブログです。日本FP協会AFP

為替

2007-11-01 12:41:34 | Weblog
通貨の相場は背後にあるいくつもの力によって動かされる。その力の中には互いに相反するものも多い。結局、相場はそういう力の合計がプラスになるかマイナスになるかで、上ったり下ったりするのである。

ドルの実質実効相場は除々に下っている。その下落幅は先進国通貨に対しては大きいが、途上国通貨に対しては小さい。云う迄もなく、ユーロが対ドルで上昇しているのに、人民元は一向に切上がらないからである。

これからどうなるだろうか。まずはドル金利の動向である。サブ・プライム危機は案の定米国経済にじわりじわりと打撃を与えはじめている。リセッションの可能性も段々高まってきた。FEDは年内にも再び利下げをするだろう。そうなれば、ドル下落は加速することになる。しかし、それにブレーキをかける動きもある。インフレの危険も高まっていることである。また、利上げをしたい欧州中銀や日銀が手を縛られていることもマイナスだ。ともあれ、ドル金利の魅力が減るだろうことは確かで、結果はドル安だ。

次いで米国の貿易赤字はどうなるだろうか。それは昨年ピークに達し今年に入ってからは除々に減少している。原因は輸出の伸びが高まり、輸入の伸びを上廻るようになったからだ。この改善がどの程度ドル安という価格効果によるのか、どの程度米国の内需の伸びの鈍化と欧州・アジアの好況という所得効果によるのかはまだはっきりしない。いずれにせよ、貿易赤字の縮少はドル安にブレーキをかける力になる。しかし、米国の輸入が減少すればそれは欧州・アジアの景気に水をさし、米国の輸出増大も難しくなる。

サブ・プライム危機対策で各中央銀行は一層流動性供給を増やした。世界的流動性はますます氾濫状態である。ところが、その流動性はもう伝統的な株や抵当証券には流れない。行く先は、安全を求める米国債、途上国の株式、原油や金をはじめとする一次産品である。ドルはますます中国のような通貨安の国と一次産品輸出国に集まる。これらの国は除々にドルからの分散を増やす。

こういう動きを総括すると、ドルの実質実効相場は今後も下落を続けるということだろう。