15日にトンガで発生した大規模な海底火山噴火は、周辺に津波をもたらしただけではなく、当初は大して関係ないとされていた、我が国でも津波警報や注意報が発表されるなどの影響が及ぶことになり、実際に1mを超える津波が来ている地域もある。気象庁が言うには、何の影響で遠く離れた日本でこの津波が発生しているのか判らないとのことであるが、このことを聞いて、私は直ぐに「カオス理論、バタフライ効果、テレコネクション」という言葉を思い出した。
カオス理論では、予測困難な非周期変動で初期値に対して最初の値を少しずらすだけで未来像が大きく変わるとされており、気象におけるバタフライ効果(蝶のはばたきが遠くの気象に影響を及ぼすという意味)もカオス理論で説明される。トンガの海底で発生した巨大な火山噴火(日本に例えると、阿蘇山がカルデラ噴火したほどの規模とのこと)が、日本で一時的な気圧変化を起こし、津波を起こしているが、現在の気象理論ではそのことの説明は出来ないとされる。地球規模で大気の流れ等が変わることが「テレコネクション」と呼ばれることもあるが、トンガと日本とは距離的に離れており、また、短期間でこのような影響が発生するということの説明は出来ない。
考えて見れば、産業革命以来、人類が化石燃料を利用することによって二酸化炭素などの温室効果ガスが排出され、既に、二酸化炭素濃度は産業革命以前と比べて40%増加し、気温は1.09℃増加しているとのこと。これは人間が行った特定の行為の結果であって何も予測困難なことではなかったし、更に、大航海時代以降の交通・通信手段の発達により、地球上の国と国、人と人の距離は近くなり、相互の与える影響は遙かに大きくなっている。(現在のコロナ禍のように、伝染病が伝播するスピードでその影響が強くなったと実感できる。)
元々、自然界においては、この海底噴火の影響が我が国まで及んでくるように、地球上の一地域で発生した超大きな自然事象が地球全体に影響を及ぼすということは珍しくないことなのだろう。ところが、近年に至り、その上に、人間が自然に与える影響も大きくなっていると言える。
カオスということを考えると、我々が、将来はこうあるだろうとか、こうなるだろうというように予測することは当てはまらないことも多いと思われる。21世紀、令和の時代は、当にそのような時代となることだろう。人生もカオスであり、予め期待しているようには人生はならない可能性が強い。しかし、そうだからとしても、悲観することもないし、絶望することも無い。元々、我々の見ているこの世界というものは、何らかの波動の歪みによって無から発生したものである。諸行無常、無法無我、色即是空、空即是色とは、仏教用語だが、期待するように進まないのは人生であり、何処かの高校生が東大前で共通一次試験の受験生に切りつけたように、何も上手く行かないからとしても人生に悲観することもない。諸行無常なのであり、この世はカオスなのであるから。