昨日は「ダークパターン」という、ウエブサイトやアプリで「広告」「表記」「デザイン」などにより、消費者にとって不利な決定に誘導する手法のことについて記してみたが、このような手法は、多かれ少なかれ、テレビコマーシャルなどを含め、通販業者の多くが使っている可能性がある手法でもあり、それだからこそ、行政が、それをダークパターンだと一般化して規制をかけることが難しいとも言える。せいぜい、消費者に対して、このような手法があるので騙されないようにと注意喚起し、結果として消費者の自己責任に転嫁しがちだとも考えられる。
それとは少し異なるが、政治家やキャリア官僚達が良く使う手法にご飯論法というものがあり、東大話法という手法もあるとされる。ちなみにウイキペディアwikpediaによると、
ご飯論法(ごはんろんぽう、ごはん論法)とは、提喩を用いることによって質問に正面から答えず、論点をずらす論法。「朝ご飯は食べたか」という質問を受けた際、「ご飯」の意味を故意に狭い意味として解釈し、例えばパンは食べたにもかかわらず、「ご飯(米飯、白米)は食べていない」と答えるように、質問側の意図をあえて曲解し、論点をずらし回答をはぐらかす手法である。
東大話法(とうだいわほう)とは、元東京大学東洋文化研究所教授であった安冨歩が著書『原発危機と「東大話法」』(2012年1月 明石書店)で提唱している用語であり、この用語について、安冨は『東京大学の学生、教員、卒業生たちが往々にして使う「欺瞞的で傍観者的」な話法』と定義している。
概説
安冨は、福島第一原子力発電所事故をめぐって、数多くの東大卒業生や関係者が登場し、その大半が同じパターンの欺瞞的な言葉遣いをしていると考えた。彼は原発がこの話法によって出現し、この話法によって暴走し、この話法によって爆発したと考察し、まず「名(言葉)を正す」ことが必要だと考えた。
東大話法の基本は、「常に自らを傍観者の立場に置き、自分の論理の欠点は巧みにごまかしつつ、論争相手の弱点を徹底的に攻撃することで、明らかに間違った主張や学説をあたかも正しいものであるかのようにして、その主張を通す論争の技法であり、それを支える思考方法」 というものである。
「東大話法」は言葉を使ったハラスメントのひとつである。この話法は東京大学の教授や卒業生だけが使う技術というわけではないが、使いこなせる能力を有する人物は東大に多く集まっていると安冨はいう。学者、官僚、財界人、言論人に、この話法の使い手や東大話法的思考をもつ人が多い。権力の集まる場所にいる人の多くが東大話法を操っており、その技術が高い人が組織の中心的役割を担う、これは国民にとって大変な不幸である、と安冨は述べている。
今の政治の混乱は、長年に渡る自民党を中心とした政治が、ご飯論法や東大話法を駆使し、自らの当選を第一にして、選挙民に、自らの有能さと、中央権力からの利益配分をアピールするかということで、政治家達は当選してきたものの、一方で、このような政治家が増えることで、我が国の政治・経済・防衛などに必要な対策がなおざりにされ、財務官僚を中心とした官僚達に対しても適切な政策目標や指示を与えてこなかったことから起こっているもので、工業生産力で我が国を抜いて一帯一路などを掲げて世界中に覇権を唱えつつある中国の急速な台頭の一方で、我が国では、少子高齢化と労働力不足、首都圏一極集中と地方の衰退、貧富の格差と正規・非正規労働者間の格差などから国力が低下しつつあって、そのような中で、我が国の政治家・キャリア官僚達の自分達のことしか考えないような自己中心的行動が、最早、国民に見透かされつつあることから政治的混乱が生じているとも言えるのではなかろうか。アメリカのトランプ大統領を生んだのは、米国経済の停滞と貧富の格差の増大の社会状況があり、それに対して主として学歴の高くない白人労働者などが支持したことが大きいとされているが、それと裏腹で、同じようなことが、資源の無い島国で工業製品を輸出することで経済を支えて来た我が国でも、形こそ違っていても、起こりつつあるように思えてならない。
消費者として、生活者として、我々の周りには、悪質商法や特殊詐欺などを展開するグループや、格差の拡大や国力の衰退を放置し、自己の当選を第一にしてきた世襲政治屋達、だらしない政治家を良いことに自らの出世と天下りを主たる目的に行動してきたキャリア官僚達の集団がいる。安倍政権の30年間、様々な評価があるが、人口の急速な減少、地方の衰退、中国と比較した工業生産力の縮小、実質賃金の減少と貧富の格差の増大という負の遺産が生じたことには間違いが無いだろう。
考えてみれば、テレビの一般家庭への普及や、アイドル文化の誕生、ゲーム世代や、スマホやネットによるコミュニケーション文化などは、我々の政治や社会に対する関心を薄めさせてきたとも言える。政治を国民に取り戻すことなど、今更不可能なのかもわからないが、様々な騙しのテクニックの存在を認識することで、せめて、何が身の回りで起ころうとしているかぐらいは知りたいものだと思っている。