昨日の夜は、北沢 秋の小説『哄う合戦屋』を読んでいました。
戦国時代の中信濃を舞台とした時代小説です。
北沢 秋の小説は初読みだなぁと思っていたら、新人なのか。上手いなぁ。吃驚でありますよ。
このお話は、有り余る軍事的才能を持ちながら人望が無い-それゆえ人の上に立てない、それでも自らの野心を諦めきれない男の業のお話。
長い放浪の果てに最良と見定めた主君が実は自分を扱うだけの度量が無いことがわかる。来るであろう危機的状況を見越して打つ手が主君に理解されない。主人公の男の野心を受け止めるだけの器量が主君に無く、同僚の家臣達も彼の考え方を理解しようとしない。ただ、主君の姫君のみが彼の大志を理解する。そんな中、武田晴信の軍が攻め込んでくるという局面で進言が退けられた主人公が取った行動とは?
まあね。この国では才能よりもコミュニケーション能力が問われるから、異能の人を使いこなせる人なんて滅多にいないっすよ。
明るく元気な馬鹿は出世できるけど、才能があっても根暗なら出世は諦めたほうがいいっすね。
多分、歴史上この主人公のような才のある人は沢山いたんだろうなぁ。でもって名を残すことなく消えていったんだろうなぁ。
そして今も多分才能のある人って沢山いるんだろうなぁ。その中にはコミュニケーション能力が低い為に世に出ることが出来ない人っているんだろうなぁ。
純愛のお話、ではない。
ラストシーンでの主人公の行動は愛の為というより、約束を守れなかった-或いは約束を守りたいという気持ちだったのではないか?
ま、これは私の感想です。違う意見は当然あることでしょう。
ラストシーンは、「おぉ。ここで終わらせちゃうのか!」とちょっと吃驚。
小説として格好良いラストです。
面白いですよ。
お勧めです。