今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

白櫻忌,晶子忌

2005-05-29 | 人物
今日(5月29日)は「白櫻忌,晶子忌」
歌人・詩人の與謝野晶子の1942(昭和17)年の忌日。歿後に出された最後の歌集『白櫻集』(昭和17年9月)に因み、「白櫻忌」とも呼ばれる。
。(与謝野 晶子(よさの あきこ)は、明治時代から昭和時代にかけて活躍した作家、歌人。旧姓は鳳(ほう)。戸籍名は志よう。ペンネームの「晶」は「志よう(しょう)」から取った。夫は同じく詩人.歌人の与謝野鉄幹(与謝野寛)。残した歌は5万首にも及ぶ。情熱的な作品が多い歌集『みだれ髪』や日露戦争の時に歌った『君死にたまふことなかれ』が特に有名。『源氏物語』の現代語訳でも知られる。エネルギッシュな人生を送り、女性解放思想家としても巨大な足跡を残した。
1901(明治34)年、晶子24歳の時、処女歌集『みだれ髪』を夫与謝野寛の編集で刊行。このときは、まだ鳳晶子の名によって上刊。藤島武二によるアールヌーヴォー調の表紙画と挿画をあしらった瀟洒た造本だった。(1906年3版刊行のときは著者名与謝野晶子と改める)
「くろ髪の千すじの髪のみだれ髪かつおもひみだれおもひみだるる」
「その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな」
「血汐みななさけに燃ゆるわかき子に狂ひ死ねよとたまう御歌か」
「道を云はず後をおもはず名を問はずここに恋ひ恋ふ君と我れと見る」
「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」
「乳ぶさおさへ神秘のとばりそとけりぬここなる花の紅ぞ濃き」
「ゆるしたまへ二人を恋ふと君泣くや聖母にあらぬおのれのまへに」
「くろ髪の・・・」の歌は、一人孤閨にあつて思ひ乱れる麗人の心緒を髪の乱れに具象した作で、歌集の乱れ髪の題となったものか。明治34年のまだ、女性が自我や性愛を表現するなど考えられもしなかった時代に、このように女性の官能をおおらかに謳いあげるのだから、伝統的歌壇からは大反発を受けたものの、世間の耳目を集めて熱狂的な支持を受け、歌壇に多大な影響を及ぼすこととなった。
又1904(明治37)年9月、弟の日露戦争出征にあたり、「明星」に厭戦詩『君死にたもふこと勿れ』を発表。
ああおとうとよ 君を泣く
君死にたもうことなかれ
末に生まれし君なれば
親のなさけはまさりしも
親は刃(やいば)をにぎらせて
人を殺せとおしえしや
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや
”旅順口包囲軍の中に在る弟を歎きて”と副題のつけられた長文の詩「君死にたもうことなかれ」は有名だよね。私達も子供の頃、反戦の詩として学校で教えられた。
忠君愛国の日露戦争時代、この詩の中で、とくにその三連目では「すめらみことは戦いに おおみずからは出でまさね 」と詠い、国家主義者で文芸評論家の大町桂月(けいげつ)は、晶子の詩を激しく非難したが、晶子は「明星」紙上で「ひらきぶみ」と題してこれに反論、毅然として退くことはなかったという。確かに戦時下とは言え、天皇を絶対としていたこの時代に「すめらみこ」への直訴の形をとったのは不敬で、大胆不敵な発言ではあったが、このとき既に社会主義、キリスト教、キリスト教的社会主義などの見地からの非戦論もあり、「明星」では戦争に対して批判的な記事も色々掲載されていたことから、この歌も、こうした明星の土壌から生まれたもので、晶子の独創ともいえないようだ。既に、夫、鉄幹は「明星」において、「大君の御民を死にやる世なり、他人(ひと)のひきいるいくさの中に・・・」などと詠んでいたといい、これらが念頭にあったのであろうと言う。与謝野晶子作詩・吉田隆子作曲の唱歌「君死にたもうことなかれ」はすごくいい。いい歌詞つきMIDI 「君死にたもうことなかれ』があるので、与謝野晶子の詩を読みながら聞いてみるのも・・・。
妻子ある師・与謝野鉄幹のもとに走った晶子。世間では略奪結婚との非難も・・・。ただひたすらにその恋愛を完うした。女性の自立を歌い、女性の地位向上にも積極的な評論活動を行い、女性解放思想家としても巨大な足跡を残した彼女であるが、ただ、自分のことだけしか見えない女ではなかった。「奔放で情熱的」な女性ではあるが、又、「静かでひたむきな女性」でもある。情熱的な恋心を持って鉄幹と結婚した後、11人もの子沢山だったが、夫の収入はまったくあてにならないなか、子供達の為に教育こそが財産という思いで、きちっと私学の学校に行かせ、夫の鉄幹を支え、師と仰ぎ、母とし妻として、家の中のことを精一杯やっている、非常に奥ゆかしい女性であり続けた。本人は「女性らしい女性」などと言うものを嫌い「人間らしい人間」として生きたのであるが、我々男性から見ると、こんなかわいい女性はいない。出来ることなら、近年のウーマンリブといわれる人たちのお手本にして欲しい女性である。
(画像は1901年上刊された「乱れ髪」36変形半紙装の斬新な歌集。発行元は東京新詩社。装丁は藤島武二。巻頭でその意匠について「表紙画みだれ髪の輪郭は恋愛の矢のハートを射たるにて矢の根より吹き出たる花は詩を意味せり」と解説。朝日クロニカル・週間20世紀より)
参考:
與謝野晶子歌集(里実文庫)
http://www.asahi-net.or.jp/~aq3a-imi/syoko/kindai/yosano/yosano_top.htm
与謝野家の人々
http://www.yosano.gr.jp/yosanoke/index.html
與謝野晶子の紹介
正字正かな專門サイト「言葉 言葉 言葉」の文學者紹介コーナ。與謝野晶子紹介.
http://members.jcom.home.ne.jp/w3c/YOSANO/
作家別作品リスト:No.885與謝野晶子
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person885.html