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鎌倉を歩く9.極楽寺から稲村ケ崎

2010-10-29 08:39:39 | Weblog
鎌倉を歩く 9
         極楽寺から稲村ケ崎

                    (写真はクリックして見てください)


「鎌倉の海を眺めながら、歩こう」「ただ、海を見て歩くだけではつまらんよ」「極楽寺から稲村ケ崎へ出て海を見ながら帰ってくるコースはいかが」「よさそうだね」

歩く:JR鎌倉駅 江ノ島電鉄 極楽寺駅下車

「長谷駅を出てトンネルをくぐると、急に山の中に入った感じがする」「鎌倉に入る七路の一つの極楽寺坂路だ。江ノ島からはここを通って由比ケ浜に出た」「海岸を通れなかったの?」「だろうね、あとで案内するよ。この駅の辺りに関所があったのだろう」「まずは、極楽寺にお参りしよう」

 「案内書をみると、ずいぶん大きなお寺だったんだね」「施薬院や薬湯院、療病院などとあるので、今の病院のような施設が立ち並んでいたんだ」「病院なら街なかにあるより、ここがいい」「もと地獄谷といわれ、葬送の地、処刑の地だった、とある」「地獄谷を極楽谷にしようと名づけた」「そうかも。由比ケ浜からは近い」「ということは?」「鎌倉が都会になり、多くの流民が入ってきて由比が浜に居ついた」「なるほど」

 「案内書によると、鎌倉時代中ごろ忍性という真言律宗の僧が建立したとある」「蒙古襲来のころか?」「そう。撃退の祈祷が認められ、幕府に重用された」「日蓮さんとの仲は、どうだった?」「互いの信者間でトラブルがあったようだ」

「今、病院の経営がたいへんだという。カネはどうしたの?」「由比ケ浜から和賀江までの管理が極楽寺にまかされた。和賀江港を利用する船から着船料を徴収した」「そうか、そのカネで貧しい病人を治療をしたんだ」「利権があれば、長い年月の間におかしなことも起こる」「そうだろう」「日蓮さんはそれを批難された」「そうか」

 歩く:極楽寺の坂道を降りる 稲村ケ崎駅の横から海岸に出る 

 「海を見ると、気持ちがいいね」「江ノ島が目前だ」「風光明媚という文字がぴったりだ」「結核菌を発見したドイツのコッホ博士も来ている。碑がある」「稲村ケ崎といえば新田義貞だ」「俺もお前も国民学校に入り軍国少年だった。文部省教科書に、義貞が海神に祈る挿絵があったのを思いだす」「稲村が崎名勝の つるぎ投せし古戦場、と歌った」「ぜんぶ歌える?」「歌えるよ」

「どの辺りで義貞は黄金造りの太刀を投げ入れたのかな?海をのぞいてみよう」「危ないから気をつけて」「海神に祈って、ほんとうに潮が退いて通れたのかな」「昔、大潮の日に通れたという人がいる」「ほんと?深そうだよ」「詮索はよそう。太平記はわが民族の叙事詩だ」「いいことを言うね」「極楽寺坂路の戦いで多くの負傷者が出て、寺に手当てを頼んで金太刀こと砂金を置いていったいわれる」「そういうことか」

 「ここから鎌倉駅まで海岸沿いに歩いて帰ろう」「え?けっこうあるよ」「うまいビールを飲みたいのだろう?」「歩く、あるく」「この車道は切り通しで、義貞のころは無かっただろう」「山が海に落ち込んでいる」「鎌倉側から見ればよくわかる」「由比が浜が一望だ。あのころ習った文部省唱歌を歌いながら帰ろう」「ここなら、大声で歌える」「日本海海戦の、敵艦見えたり 近づきたり、は歌えるか?」「もちろん。歌おう」「次に、見よ落下傘 空をゆく、だ」「いいなあ、少年時代に戻ったようだ」「歌いながら歩いているうち、若宮通りが見えてきた」「うまくのせられた」