陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「男たちの大和/YAMATO」

2011-11-25 | 映画──SF・アクション・戦争
2005年の日本映画「男たちの大和/YAMATO」は、太平洋戦争末期、戦艦大和に乗り込み決戦に向かった男たちを描く話題の戦争ドラマ。巨額の費用をかけて製作された原寸大の戦艦大和、迫力あります。邦画でも欧米の戦争映画に引けをとらないものが作られるんですね。ただしスケールとしてであって、ドラマとしてはどうかというと意見は分かれそう。

男たちの大和 / YAMATO [DVD]
男たちの大和 / YAMATO [DVD]佐藤純彌 東映 2006-08-04売り上げランキング : 2448Amazonで詳しく見る by G-Tools


1985年7月31日、20年ぶりに東シナ海海底に眠る戦艦大和が発見される。
日本海軍の象徴、当時世界最大級の戦艦だった大和。

大和沈没から40年経った2005年の4月の鹿児島の枕崎漁港。
内田二兵曹の娘と名乗るある女性が船を出してほしいと懇願する。そこから老漁師の神尾に忘れざる記憶がよみがえる。

昭和十九年、春。
南太平洋における戦況の悪化によって、十六、七歳の特別少年兵たちが戦艦大和へと送り込まれる。呉出身の十七歳、神尾克己もそのひとりだった。
乗組員たちは、絶対に沈まないと言われる憧れの戦艦内で厳しい訓練に耐えていく。

舷窓の締め忘れの連帯責任を追われた神尾は上官に目を付けられるも、機銃射手の内田二兵曹や烹炊所(炊事班)の森脇班長らに庇われます。気性が荒いながら、部下の安全を最優先に考えるヒューマニストの内田に、神尾たち少年たちは惹かれていきます。

しかし、レイテ沖海戦で米軍に大敗を喫し、日本連合艦隊は事情上解体したも同然。左目を失った内田はいったん艦を降り、戦艦大和は多くの犠牲者を出してしまいます。

やがて昭和二十年四月。
沖縄上陸戦を開始した米軍に対し、戦艦大和に沖縄特攻の命が下ります。乗組員たちはそれぞれ死の覚悟を抱き、最後の本土上陸になることを知りながら、残り少ない家族や恋人との時間を過ごします。
そして、四月六日、米軍戦闘機との決戦がはじまります。

戦艦ものなので「真夏のオリオン」「連合艦隊司令長官 山本五十六」のように軍事作戦のあれこれが描かれるのかと思いきやそうではなく、乗組員といっても下級兵からの立場なので、あまり大和の舵を握る上官、あるいは時の政府首脳がどういうふうに戦争に挑んだのかが描かれていないのが残念。戦争に英雄を求めないというスタンスなのでしょうが、ある意味、日本の軍部の戦争責任を問わないで民間人の犠牲ばかり誇張しているようにも思えます。

アナーキーな性格の内田の人柄については、実際に出兵して厳しい軍事訓練を受けた人間やその話を聞いた人間としてはいささか信じられないし、芸者とのエピソードやら、ヤクザとの賭け事やらもあってもなくてもいいようなもの。原作は辺見じゅんのノンフィクションなので取材に基づいているんでしょうが、そこたしの東映映画の断片を見せられているようで感動が台なし。せっかく前半では部下想いのいい上官として描かれていたのに、そこらのチンピラと同じ扱いにされています。こんなに軍法の規律無視する人間がいていいのかと。山本五十六から預かった短刀という特権的なキャラ付けにくわえ、内田は戦災孤児をひきとって育てていたという意外な側面もあったのに。

別れの演出は、少年兵たちに限っておけばよかったのにと思われます。
結果論として最後に散ることが分かっているのですから、惜しまれる人材を亡くしたと思わせていただきたかったんですよね。あと玉砕に疑問をいだく少年兵たちの暴動のシーンは、上陸の前にしておいたいほうが良かったような。

この映画の見どころはむしろ大和が玉砕してからのほう。
ひとり生き残った神尾と、親友の母親との反目、そして広島に落とされた原爆。二重三重に描かれる戦争の重みと苦しみ。

監督は「敦煌」の佐藤純彌。
出演は反町隆史、中村師堂、鈴木京香、松山ケンイチ、蒼井優、仲代達矢、渡哲也ほか。


(2011年8月10日)

男たちの大和/YAMATO - goo 映画

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ☆映画のなかのプロフェッショ... | TOP | 氷上の妖精・浅田真央、2011... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 映画──SF・アクション・戦争