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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「オールドルーキー」

2013-01-19 | 映画──社会派・青春・恋愛
いまとは比べ物にならないほど大相撲ブームをつくりあげた若貴兄弟の全盛期といいますのは、じつに多様な力士が生まれた時代でもありました。体格のいい外国人力士を敏捷な動きで倒す小兵力士が人気となっていましたが、その代表格とされるのが舞の海関と智乃花関。この智乃花関が、二十七歳にして初土俵を踏んだもと高校の体育教師であることはよく知られていますね。三役までスピード昇進し、最高位は小結、三十七歳まで現役をつづけました。大相撲の力士の引退年齢が二十代後半であることを考えると、すさまじい体力そして精神力といえましょう。

この智乃花関が現役時代(1992年から2001年)であったまさにその同時期に、アメリカの野球界でも史上最年長の新人が誕生したというのです。その年、三十五歳、しかも妻子持ち、もと高校教師のジム・モリス。彼の活躍は話題を呼び、引退後に出版された本が、2002年に映画化されました。きょうご紹介するアメリカ映画「オールドルーキー」がそれです。

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ジム・モリスことジミーは、テキサス州のしがない高校教師。子どもの頃から投手としての手腕を発揮したが、軍人であった父の転勤のために大好きだった野球に集中できず、若かりし頃、マイナーリーグに所属するも肩を痛めて引退。現在は妻と三人の子どもを養いながら、高校の野球チームの監督をつとめている。ある日、毎年連敗つづきのチームメイトを叱咤激励したところ、逆に部員たちからある約束をとりつけられてしまう。それはチームが地域で優勝したら、ジミー監督がリーグの入団テストに応募してほしいというものだった。

はたして部員たちは一念発起してはなばなしく優勝をかざり、ジミーはとまどいながらも入団テストに合格。三十五歳ながらも156キロという豪速球を投げるリリーフ投手として話題となります。しかしながら、スタートは二軍扱い。高給の転職先のお誘いを蹴ってまで野球界に飛び込んだジミーには、けっして晴れがましい再スタートではありませんでした。家族とは離ればなれ、しかも家具を抵当に入れるほどの厳しい生活を強いてしまい、チームでは教え子ほどの若手選手に野次を浴びせられることもある。しかし、そんな苦難をのりこえて、ついに1999年にジミーはメジャーリーグに昇格、故郷テキサスで錦をかざったデビュー戦で三振におさえるという活躍を見せます。

映画ではあまりふれられてはいませんが、ジム・モリスはけっきょく2シーズンで引退し、その後は家族と共に暮らしているようです。本作はいくつになっても夢を諦めない男のロマンを描いたスポ根ドラマといいますよりも、それを陰で支えた妻子たちの愛、才能ある師匠を夢のフィールドへと背中を押した教え子たちとの友情、そして反目し合った父と子の和解をえがいた、すぐれたヒューマンドラマ,ファミリードラマといえるでしょうね。これが実話であるというからこそ、なおさら、感動が深まるのです。自分の夢や趣味を理解してくれるパートナーは、最高の相手ですよね。そして、なぜ、彼がそんな周囲に恵まれたかというと、自身の父との関係から、生徒たちの夢を後押ししよう、子育てに献身しサポート役に徹しようとする健気さ、一途さがあったからこそなのです。単なる敗者復活のサクセスストーリーではなく、果たせぬ夢を追いかけるために必要なものはなにかを教えてくれる映画ですね。

主演は「デイ・アフター・トゥモロー」 「エデンより彼方に」のデニス・クエイド。キャッチボールと父子の絆をしめす名作として思い浮かぶ「オーロラの彼方へ」の主演もつとめています。奥さん役はレイチェル・グリフィス、父親役はブライアン・コックス。
監督は「しあわせの隠れ場所」のジョン・リー・ハンコック。ジム・モリス本人がメジャーリーグ戦で審判としてカメオ出演しています。

(2012年10月28日)

オールド・ルーキー - goo 映画

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